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2020年06月26日 12時00分

受刑者エイズ発症、検査結果知らせず1年以上放ったらかし 刑務所に「人権侵害」を警告

受刑者エイズ発症、検査結果知らせず1年以上放ったらかし 刑務所に「人権侵害」を警告
横浜刑務所の塀(RewSite / PIXTA)

服役中にHIV(エイズウイルス)検査を受けた50代男性受刑者に陽性の1次検査結果を伝えず、2次検査を受けさせなかったことが人権侵害にあたるとして、神奈川県弁護士会は先ごろ、横浜刑務所と八王子医療刑務所(現・東日本成人矯正医療センター)に対して警告した(6月11日付)。

男性はエイズを発症して治療中だ。適切な治療が受けられずに、発症したことが人権侵害にあたるとする。

●最初の採血から約1年2カ月後にようやく告知

弁護士会によれば、男性は2011年4月に入所(同年2月に懲役13年の判決確定)した直後から体調が優れず、2012年12月にHIV検査の実施を横浜刑務所に申し出た。

横浜刑務所でHIV検査の採血がされたのは2013年4月16日。医療刑務所で同月22日に1次検査され、結果は陽性だった。しかし、横浜刑務所から男性に結果は知らされず、二次検査も実施されなかった。

男性は2014年6月10日に別の病院で検査を受け、投薬治療を受けるようになったものの、同月23日、悪性脳リンパ腫の可能性が指摘され、4日後にエイズを発症した。

調査報告書によれば、一時は右上下肢がほとんど動かず、転倒したほか、ろれつが回らずに食事も摂取できない状況だったという。この病状は放射線治療によって腫瘍が縮小した後で改善が見られた。

男性は最初の採血の後も、複数回にわたって、検査結果の告知を横浜刑務所に求めていたという。

弁護士会は、検査結果が早期に伝えられ、適切な治療を受けることができていれば、エイズの発症を抑えられたとして、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第56条に違反し、申立人の個人の尊厳(憲法第13条)及び生存権(憲法第25条)を侵害するものであることを両刑務所に警告した。

●なぜ、結果が知らされなかったのか

本来であれば、医療刑務所が東京都保健局に2次検査を依頼するはずだ。しかし、保健局に依頼するために必要なジュラルミンケースの購入を医療刑務所が失念し、さらに横浜刑務所から2次検査の問い合わせを受けてもなお、購入に動くことはなかったという。

検体の保存期間が長期にわたることから、最初の採血から約1年後の2014年4月1日、横浜刑務所で再度の採血があった。

弁護士会の人権擁護委員会副委員長を務める高木小太郎弁護士は次のように語った。

「受刑者にも、社会一般の保健衛生及び医療水準に照らして適切な保健衛生上及び医療上の措置を受ける権利が認められています。横浜刑務所及び東日本成人矯正医療センターにおいては、本件警告を重く受け止め、受刑者に対して、適切な医療の提供をされることを強く求めます」

●刑務所側は「適正な被収容者処遇に努める」

横浜刑務所は「民事訴訟としても係属中でありますので、詳細については回答を差し控えさせていただきますが、引き続き、適正な被収容者処遇に努めてまいります」とする所長コメントを取材に寄せた。

また、東日本成人矯正医療センターは「民事訴訟で係争中のためコメントを控えさせていただきます」とした。

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