多彩な顔ぶれが揃った「東京都知事選」(2月9日投開票)。全国的にも関心が高い東京で、ネット選挙解禁後初の知事選ということで、各候補者や支援者がどのように「ネット」を活用していくのかにも注目が集まっている。
しかし、ネット選挙の解禁は、ネットでならどんな選挙活動をしてもよいという意味ではない。誰でも手軽に情報発信ができてしまうがゆえに、一般人の不用意な発言が「選挙違反」とみなされかねないという指摘もある。
首都圏を中心に大きな話題となっている「都知事選」だが、ひとりの有権者として気をつけるべきポイントは、どんな点なのだろうか。元衆院議員で、選挙に造詣の深い早川忠孝弁護士に話を聞いた。
●今回の都知事選は「大将同士の一騎打ち」
「今回の都知事選挙は、昨年の参議院選挙とは様相が一変して、候補者同士が有権者の面前で直接対決する熾烈な言論戦になると思われます。
今回は初めから大将同士の一騎打ちみたいなもので、それぞれの陣営の細かい選挙運動はあまり関係がない、珍しい選挙になるでしょう」
早川弁護士はこのように切り出した。大将同士の一騎打ちということであれば、ネット上で相手陣営への批判が過熱する可能性もあるのだろうか?
「前回の参院選では、総体的に見て、ネット選挙の効果はあまりなかったと評価されていますが、例外的に一部選挙区でのネガティブキャンペーンは、多少影響があったのではないかと言われています。
ただし、今回の都知事選挙では、それぞれの候補者についての情報がいいにつけ悪いにつけ、すでに十分出回っています。
もし選挙結果を左右できるような誰も知らないネガティブな情報があるのでしたら、それに賭ける陣営が出てくる可能性もあるでしょうが、みなが知っている情報でネガティブキャンペーンを仕掛けても、何の意味もないと思われます」
選挙に関係して、われわれ一般有権者がネットに投稿した内容が、問題とされるケースはあるのだろうか?
「公職選挙法の改正によりネット選挙運動が解禁されたことで、候補者だけでなく、一般有権者も、インターネット上で政治や選挙に関する意見を発信できるようになったことは、すでに周知の事実だと思います。
ただ今回の選挙では、候補者本人が選挙の前哨戦および選挙期間を通じて、有権者に対してどんなメッセージを発信するかが重要で、一般の有権者が散発的に行った発言が選挙結果に与える影響は比較的少ないでしょう。したがって、一般人のそうした発言内容が問題にされることは事実上ない、と思われます。
現に、選挙の告示前にも関わらず、有権者に対する投票依頼的な書き込みを堂々と書いている人たちがいましたが、これを事前運動だなどと咎(とが)めるような空気は、今のところまったくありません。今回の選挙に関して言えば、ネットを通じての発信について、一般の方がそこまで神経質に考える必要はないと思います」
●「電子メール」での発信には注意が必要
それでは、ひとりの有権者として、注意すべき点は何かあるのだろうか?
「まず、ネット上での候補者へのなりすましや、虚偽事項の公表などは禁止されております。こうした常識で考えて犯罪的だと思うことをしないのは、当然のことです。
また、一般の有権者が電子メールを通じて選挙運動をすることは、ネット選挙解禁後もまだ禁止されております。一般の有権者が電子メールで、特定の候補者への投票依頼などの選挙運動をすることはできません。
もっとも、選挙運動に当たらない行為はそもそも公選法で禁止の対象とはなっておりません。選挙運動に当たらないように注意しながら、電子メールを利用して自分の意見を発信することは差し支えありません。
最後に、未成年者の選挙運動は禁止されていますので、未成年者の方は特定の候補者への投票依頼的な書き込みをしてはいけません」
早川弁護士はこのように注意点を述べていた。
よりフェアで、お金のかからない選挙を実現していくためには、今後、インターネットをどのように活用するかがキーとなってくるだろう。未来の選挙、ひいては民主主義を占ううえで、日本はいま重要な転換点を迎えつつあるのかもしれない。