台所の床下貯蔵庫の段ボールから、現金約4800万円の入った金庫が見つかった。寝室のベッドのマットレスをめくると、約9600万円の現金が入った紙袋が隠されていた——。国税庁は6月下旬、2013年度の脱税調査をまとめた「査察の概要」を発表した。
報道によると、全国の国税局が2013年度に摘発した脱税事件は185件で、前年度よりも6件減った。このうち、悪質と判断して検察庁に告発したのが118件だった。脱税の総額は前年度より60億円少ない145億円で、1974年度以来、最も少ない額となった。ここ数年景気が低迷していたことが影響しているという。
脱税の手法としては、例年通り、売り上げを除外することや、架空の経費を計上するケースが多かった。大阪国税局が調べた脱税事件では、本棚にあった本の形をした木箱から現金約160万円の札束が見つかった事例があったという。
●景気が良い業種では脱税が増える?
脱税が多かった業種は、「クラブ・バー」の12件で最多。「不動産業」の9件、「建設業」の5件、「情報提供サービス(出会い系サイト)」の5件と続く。
「クラブ・バー」ではまた、ホステスの報酬にかかる源泉所得税について、徴収していたにも関わらず、納付していなかったケースがあった。「不動産業」では、売り上げと仕入れの両方を除外して取引そのものを隠していたケースがあった。
脱税で得られた不正資金については、現金や海外預金の形でどこかに隠す事例や、高級外車を購入したり、海外のカジノに費やしたりした事例があった。
調査結果を税理士はどう見ているのだろうか。
久乗哲税理士は「脱税額が多い業種は年度により変わります。脱税額が多かった業種は、その年度に景気がよかったということになるでしょう。
2013年度は景気回復に伴って『クラブ・バー』に行く人が多かったということですね。
同様に消費増税の駆け込み需要で『不動産業』や『建設業』もよかったでしょうから、脱税が多かったと考えられます」と分析している。
【取材協力税理士】
久乗哲(くのり・さとし)税理士
税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。
事務所名:税理士法人りたっくす
事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/