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2018年08月17日 09時52分

「死ぬまで毎年、訴えてやる!」 いやがらせ訴訟にひそむ「リスク」とは

「死ぬまで毎年、訴えてやる!」 いやがらせ訴訟にひそむ「リスク」とは
写真はイメージです(aijiro / PIXTA)

近隣トラブルで訴訟を検討している人が、トラブルは「(自分が)死ぬまで続く」と考えていることから、「死ぬまで毎年提訴し続ける」と、弁護士ドットコムに相談を寄せた。トラブルは隣家の排煙をめぐるもので、1年ごとにその間のトラブルを理由に裁判を起こすと明かしている。

傍目にはただの腹いせによる嫌がらせのための訴訟にも見えるが、毎年、同じ件で訴訟を起こすことは可能なのか。このような相手が「嫌がらせ訴訟」は罪に当たらないのか。池田誠弁護士に聞いた。

●「理屈上これを制限する理由はない」が・・・

ーー毎年、裁判を起こすと考えています。そのようなことは可能なのでしょうか。

「理屈上は可能です。なぜそう言えるのか、『既判力』という法律の概念について説明したいと思います。『既判力』とは、確定した判決から生じる効果の1つで、以後に提起される訴訟で、裁判所に同じ判断をさせ、確定した権利関係に反する当事者の主張を制限する効果を生じさせるものです。

しかし、そもそも判決とは、『口頭弁論』という手続が終わる時までの事実をもとに下されるものです。口頭弁論終結以降の新しい事情から生じる新しい権利関係には確定判決の効力は及びません。これを、既判力の『時的限界』などと言います。

この点、ご質問の例では、あくまで口頭弁論終結後の事情をもとに訴訟を起こすのですから、既判力には抵触しないと考えられ、理屈上これを制限する理由はないことになります」

●「以前の判断が尊重され、同じ判決が下される可能性が高い」

理屈上、ということは、実務においては違うのでしょうか。

「たとえば、今回トラブルの原因となっている隣家の排煙について損害賠償請求をする場合を検討します。以前の判決で、『具体的な健康被害は出ていない』と判断されて請求が棄却されたとすると、その後の新たな排煙で健康被害が発生したと主張しても、新たな証拠に基づいて健康被害の発生を主張しない限り、事実上、以前の判断が尊重され、同じ判決が下される可能性が高いと言えます」

それなら、負けることは覚悟の上で嫌がらせで訴訟提起すること自体は許されるのでしょうか。

「そうとは言えません。そのような訴えを提起する場合、提訴者には、敗訴する以外にも様々なリスクが考えられます。

過去の裁判例では『提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合』に、訴訟提起自体が不法行為にあたるとして提訴者に対する損害賠償請求を認める余地を示しています(昭和63年1月26日最高裁判所第三小法廷判決)。

その上、相手方に『死ぬまで訴えてやる!』などと通告することは、刑法の脅迫罪にもあたり得ます。

以上のとおり、ご質問の例は、既判力の観点から訴訟提起が制限されることにはなりませんが、事実上前訴(前に提起された訴訟)が尊重されて意味がない上、民事・刑事両面で相談者の法的責任が追及される余地がありますから、お勧めできません」

(弁護士ドットコムニュース)

池田 誠弁護士
証券会社、商品先物業者、銀行などが扱う先進的な投資商品による被害救済を含む消費者被害救済に注力している下町の弁護士です。

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