神奈川県内を走る小田急線で12月1日、乗客同士のケンカが発生したため、最大で75分の遅れが発生するトラブルが起きた。
報道によると、1日午前7時ごろ、車内で座っていた30代男性の顔に、立っていた50代男性のコートが何度も当たり、口論になった。2人は海老名駅で下車して、その後、どちらかが非常停止ボタンを押したという。
その結果、大幅な遅延が発生して、ツイッターには、「既に30分以上車内で缶詰め状態なんすけど…(-_-;) お隣線路の各駅停車も止まっとる(*_*;」「このトラブル起こした人達、今後一切小田急線乗車拒否でお願いしますヽ(`Д´)ノ」など、利用者の嘆きの声が投稿されていた。
鉄道会社にとっても大迷惑であることが考えられるが、鉄道会社はケンカをした2人に対して、損害賠償を求めることはできるのだろうか。岡田一毅弁護士に聞いた。
●どのような損害が発生したのか
「乗客は、鉄道会社との間で運送契約を明示的または黙示的に締結して乗車しますが、乗客の義務として、鉄道の運行を不当に妨げない義務があると考えられます」
では、損害賠償を求めることは可能なのか。
「鉄道車内や構内で喧嘩や口論によって鉄道の運行に支障を来したとき、運行を不当に妨げない義務に違反しているといえますので、発生した損害を、その乗客に求めることができます。
非常停止ボタンは列車警報器と考えられ、それを濫用した場合には鉄道営業法上処罰される犯罪ですので、濫用したことによって損害を生じさせた場合、不当に妨げたということで、損害賠償の対象となります」
請求する金額はどう決まるのか。
「どのような損害が発生したかが問題となってきますが、たとえば特急列車が遅延して、特急料金の払い戻しが生じた場合、その払い戻し金額について損害賠償を求めることができます。また、遅延によって他の乗客があふれてしまい、それを誘導するために必要だった鉄道会社係員の超過勤務に対する手当や、振替輸送した場合の他の鉄道会社に対する振替輸送費も損害賠償の対象になってくると考えられます」
鉄道会社の評判が悪化した場合の損害についてはどうなのか。
「遅延による鉄道会社に対する信用毀損についての損害賠償は、遅延の理由が乗客同士の口論や喧嘩であると乗客一般に説明されているのであれば、実際に乗客一般の信頼を失ったとまではいえないと考えられますので、賠償請求は難しいかもしれません」