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席残る 他人(ひと)のおもらし 尻寒し・・・電車内の悲劇、法的責任は?
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席残る 他人(ひと)のおもらし 尻寒し・・・電車内の悲劇、法的責任は?

電車内の「おもらし」に関する報告がインターネット上で多数あがっている。11月下旬には、「はてな匿名ダイアリー」に、「座席に座ってう●こを漏らすな!」というエピソードが投稿されて話題になった。

投稿者がある日、電車の座席(ふかふかタイプ)に座ったところ、臀部の衣服に冷たい液体が染み込む感触があった。その液体を触って、臭いをかいでみたところ、「液状のう●こ」だったという。

もちろん、電車内の「おもらし」は、電車の遅延や病気によって、どうしても我慢できなかったなど、さまざまな事情があるだろう。しかし、座席での「おもらし」は、ほかの乗客の迷惑にもつながる。法的に問題ないのだろうか。浅野英之弁護士に聞いた。

●わざと「おもらし」しないかぎり罪に問われない

「法的な問題となるかどうかについて、刑事、民事の両面から考える必要があります」

浅野弁護士はこう切り出した。まず、刑事上の罪にあたるのだろうか。

「『おもらし』によって座席を汚してしまった場合、電車の座席を使い物にならなくしてしまったとすれば、器物損壊罪にあたるかどうかを検討しなければなりません。

他人が『おもらし』をした座席には、心理的に『座りたくない』と考えるのが普通でしょうから、座席という『物』の効用を害する行為として、器物を損壊したといえます。

ただ、器物損壊罪は、故意犯しか処罰されません。わざと『おもらし』をしたというのでないかぎり、器物損壊罪として処罰されることはありません。

また、鉄道会社としては、電車内で『おもらし』をされると、その車両による営業が難しくなりえますから、鉄道会社の業務を妨害したとして、威力業務妨害罪にあたる可能性があります。

ただ、この威力業務妨害罪もまた、故意犯しか処罰されません。どうしても我慢できずにあやまって『おもらし』をしてしまったというのであれば、刑事罰を科されることはありません」

●民事上の「不法行為」は過失でも成立する

では、民事の面からすると、どんな問題があるのだろうか。

「『おもらし』によって電車を汚すことは、民事上の不法行為にあたる可能性があります。不法行為は、故意だけでなく、過失の場合にも成立します。

そのため、あやまって「おもらし」をしてしまって、電車を汚すなど、鉄道会社に迷惑をかけた場合、鉄道会社に対する不法行為となります。損害賠償を請求されるおそれがあります。

ただ、不注意で、すぐに清掃処理ができる状態だったり、反省の態度を示しているのであれば、鉄道会社からの損害賠償請求まではされないことが多いでしょう。

これに対して、誰かの服や持ち物を汚してしまった場合、過失であっても、不法行為による損害賠償請求をされる可能性が十分あります。

自分の『おもらし』によって、誰かの服や持ち物を汚してしまった場合、真摯に謝罪するとともに、クリーニング代の支払いを申し出るのがよいでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

浅野 英之
浅野 英之(あさの ひでゆき)弁護士 弁護士法人浅野総合法律事務所
離婚・交通事故・刑事事件・相続など個人のお客様のお悩み解決実績、相談件数を豊富に有するほか、労働問題を中心に多数の企業の顧問を務める。銀座駅(東京都中央区)にて、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立、代表弁護士として活躍中。

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