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2021年03月09日 09時57分

「家を出て行った娘の居場所が知りたい」母の執念、こじれた親子関係「修復には逆効果」

「家を出て行った娘の居場所が知りたい」母の執念、こじれた親子関係「修復には逆効果」
写真はイメージです(Ushico / PIXTA)

成人するまでの歪んだ親子関係は、大人になった子どもからの反撃や拒否に至ることもある。

弁護士ドットコムに「こじれてしまった母娘関係を修復したい」と相談を寄せた相談者。親子問題に積極的に取り組んでいる吉田美希弁護士は「まずはこじれた原因を真剣に考えるべき」と指摘した。

相談者によると、娘(20代後半)は2年前に逃げるように実家を出ていったそうだ。娘とは連絡は取れるものの、彼氏と同棲していること以外は教えてもらえず、居場所が分からずに心配しているという。

相談者は、娘の居場所を把握したいと考えているが、はたして可能なのだろうか。吉田弁護士の解説をお届けする。

●住所の調査「関係修復には逆効果」

娘さんの居場所を把握する目的は何でしょうか。【前編:「私は毒親なの?」20代の娘に通報された母…こじれた親子関係は、修復できるのか】でも触れたとおり、娘さんは、相談者のことを信頼していないからこそ、住所を教えなかったわけです。

娘さんは、相談者に住所を知られると、安心できない状態に置かれてしまうのかもしれません。娘さんは、相談者が手紙や荷物を送ってくることや、許可なく訪問してくることなどを危惧している可能性もあります。娘さんの側に住所を知られたくない事情があるということは、きちんと認識すべきです。

画像タイトル 写真はイメージです(Ushico / PIXTA)

そもそも現在娘さんと連絡はとれているということであれば、元気に生活していることは間違いないわけですし、本当に緊急事態が生じた場合は、現在連絡がとれている手段でコンタクトを取ればよいわけです。

それにもかかわらず、居場所を把握したいということは、娘さんのことを何でも把握しておかないと気が済まないといった姿勢や、住所がわかったら訪問しようなどと考えているのではないでしょうか。

そうだとしたら、住所を調査すること自体が、娘さんとの関係を決定的に破たんに追い込むきっかけになりますから、控えた方が賢明でしょう。娘さんをこれ以上追い込むことは、関係修復には逆効果です。

しかも、本人以外が住民票を取得するには、住民基本台帳法12条の3に基づき、法律上正当な理由が必要です。正当な理由とは、権利の行使や義務の履行のために必要な場合をいいます。現状娘さんと連絡がとれていて、かつ、特段娘さんの住所がわからなければ、ご自身が権利の行使や義務の履行ができないというわけでもない状況において、単に娘さんの居場所を知りたいというだけでは、正当な理由といえるのかどうか疑問です。

今回のケースで相談者が住民票を調査した場合に、即座に処罰されるとまではいえませんが、仮に、正当な理由がないにもかかわらずそれがあるかのように偽って住民票を取得した場合、住民基本台帳法46条2号により、30万円以下の罰金に処せられます。

●調査の態様によっては、法的な責任を負うことになる

しかし、このようなことに配慮できずに、住民票等を調査して、住所を調べる親もたくさんいるのが現状です。そのため、親から住民票等を介して住所を知られることを防ぐため、一定の要件のもと、住民票等の閲覧制限をかける方もたくさんいらっしゃいます。

住民票等の閲覧制限は、ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための住民基本台帳事務における支援措置として認められるものです。住民票等の閲覧制限がかけられているケースでは、当然ながら、弁護士に依頼したとしても、住民票等で住所を調査することはできません。

しかしながら、住民票等の調査で不発に終わった場合に、さらに探偵や興信所を入れて住所を調査しようとする親もいます。実態としては、残念ながらそういったところから住所を調査したとしか思えないケースもあります。

画像タイトル 写真はイメージです(EKAKI / PIXTA)

住民票等の閲覧制限は、ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための制度です。

よって、単に親から逃げたいという理由だけでかけることができるものではなく、従前親から虐待を受けていた等の事情があり、大人になった今も親から居所を知られることで、生命身体に危害を受けるおそれや、反復して付きまといをされるおそれ、再び虐待を受けるおそれがあるといったケースである場合にはじめて受けられるものです。

そのため、住民票等の閲覧制限がかけられているケースについて、探偵が調査をおこなうことは、違法不当な目的の調査であり、探偵業法9条1項に基づき、探偵がその事実を把握していれば調査をおこなうことはできません。

また、探偵は、探偵業法7条に基づき、通常、調査をおこなう際に契約書等の書面において、調査対象者が閲覧制限をかけられた対象者ではないことを確認します。したがって、この段階で探偵が、違法不当な目的の調査であることがわかれば、調査には至りません。

しかし、実際には、探偵に調査を頼む際に、虚偽を伝えて調査を依頼する人も後を絶たず、探偵もこの問題には頭を悩ませているのが実情です。探偵もプロですから、明らかに怪しい場合等は騙されることはありませんが、親子の場合、親は子に関する情報はたくさんもっていることが通常であるため、巧妙な嘘をつくことも容易です。

そうすると、探偵も調査開始の段階で、違法不当な調査であることを見抜けず、結果的に調査してしまうこともあります。

画像タイトル 写真はイメージです(buritora / PIXTA)

当然、探偵に調査を依頼する際に、虚偽を伝えて調査をさせたとなれば、探偵に対する業務妨害罪となりえますし、それによって探偵に損害を与えたとなれば民事上の損害賠償責任も問われることとなります。

また、違法不当な調査で得た情報を利用して、調査対象者に対して、付きまとい等をした場合は、迷惑防止条例違反や強要罪となりえますし、こちらも当然民事上の損害賠償責任が問われる事態となります。

●「信頼していれば、自ら住所を教えてくれるはず」

こういったケースでは、親なのだから子の情報を調査したり把握することは当然という考え方があるように見受けられますが、その考え方は間違っています。子は、親の所有物ではありません。何より、そのようなことをしてまで子の住所を調査したとしても、子との関係が円満になることはなく、むしろ逆効果でしょう。

本件において、相談者がどこまで娘さんの居場所を調査するつもりであるかはわかりませんが、その目的があくまでも娘さんとの関係を円満にすることにあるのであれば、やりすぎはあくまでも逆効果であり、その態様によっては自分が法的な責任を負うべき事態となることも念頭においた方がよいでしょう。

娘さんは相談者を信頼していれば、自ら住所を教えてくれるはずです。相談者にとってまずやるべきことは、娘さんの意思に反して住所を調査しようとすることではなく、娘さんの信頼を得ることなのではないでしょうか。

取材協力弁護士

吉田 美希弁護士
離婚事件を150件以上取り扱った経験及び幼少時からの虐待を含む自身の家庭での経験を踏まえ、離婚男女問題及び親子問題に積極的に取り組む。特に親子問題の子の立場に立脚した弁護活動に力をいれており、2015年の開設以来、相談に乗ってきた子の立場の相談者はのべ500名を超える。相談者の話をじっくり聞き、事件処理のプロセスをも重視するスタイルで弁護にあたる。

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