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2021年03月09日 09時54分

「私は毒親なの?」20代の娘に通報された母…こじれた親子関係は、修復できるのか

「私は毒親なの?」20代の娘に通報された母…こじれた親子関係は、修復できるのか
写真はイメージです(Ushico / PIXTA)

「親と関わりたくない」「早く離れたい」。親の過干渉に悩まされている人たちがネット上で声を上げている。親としては子どもを心配しているだけなのかもしれないが、その行動がときに、子どもに重くのしかかることもある。

逆に、親の立場から「子どものためにいろいろしてきたのに『毒親』と言われた」「子どもを助けられるのは私しかいないから、いろいろやってあげたのに」などの投稿もみられる。

弁護士ドットコムにも、「娘の居場所が知りたいだけなのに、娘の彼氏の両親などに『おかしい人』と言われた」という母親からの相談が寄せられている。

●第三者に「危険な人」「おかしい人」と言われた母親

相談者の娘(20代後半)は、2年前に逃げるように実家を出ていった。娘とは連絡は取れる状況だが、どこに住んでいるかは教えてもらえていないそうだ。娘によると、現在は彼氏(30代)と同棲中だという。

実家の娘の部屋で彼氏の名刺を発見した相談者は、彼氏の勤務先を把握。心配のあまり、娘の居場所を聞くため、名刺に書かれていた彼氏の勤務先に電話した。

画像タイトル 写真はイメージです(Ushico / PIXTA)

しかし、これに激怒した娘は、相談者に「警察に連絡した。警察の人は『あなたの母親は危ない、危険な人』などと言っていた」と連絡してきたという。

また、娘は「彼氏の両親も『(相談者は)おかしい人だから絶対住所を教えたらダメ』と言っていた」などと話したそうだ。相談者が娘に「おかしい人」とはどういう意味かと聞くと、「変な人か常識ない人」と言われたという。

散々な言われように相談者は怒りがおさまらない様子だ。こじれてしまった母娘関係を修復することはできるのだろうか。以下、親子問題に積極的に取り組んでいる吉田美希弁護士の解説をお届けする。

(なお、吉田美希弁護士より、解説にあたってのスタンスとして、次のようなコメントがあった。「解説の前提となりますが、私は親子問題については、相談者の年齢を問わず、子の側の立場にある方の相談や依頼のみを受けることとしておりますため、今回は、子である相談者の娘の立場に配慮しながら、コメントさせていただきます。そのため、親の側の立場にある今回の相談者にとっては耳の痛い内容もあるかと存じますが、その点についてはどうかご容赦ください」)

●「こじれた原因を真剣に考えるべき」

ご回答の前提となりますが、私は親子問題については、相談者の年齢を問わず、子の側の立場にある方の相談や依頼のみを受けることとしておりますため、今回は、子である相談者の娘の立場に配慮しながら、コメントいたします。そのため、相談者にとっては耳の痛い内容もあるかと存じますが、どうかご容赦ください。

まずは、こじれた原因を真剣に考えるべきです。相談者は、直近の出来事だけをもってこじれたと考えているかもしれませんが、親子関係という長い年月を重ねてきた関係において、一つの出来事で警察に通報するほどこじれることはないと考えられます。

そもそも、娘さんは2年前に逃げるように家を出ていったということですね。20代後半ともなれば、経済的にも完全に自立し、親から離れて自由に生活したいと思うのは当然です。

しかしながら、逃げるように家を出て行ったということは、娘さんは単に親と離れて自由な生活を謳歌したいというのにとどまらず、相談者との親子関係に限界を感じ、離れるのでなければ安心して生活を送ることができないような状態にあったのではないでしょうか。

画像タイトル 写真はイメージです(Graphs / PIXTA)

そもそも娘さんが相談者に住所を教えなかったということは、それ自体も一つの意思表示です。相談者のことを娘さんが信頼していないということです。

なぜ住所を教えられないほど、信頼できないかといえば、相談者が、これまで娘さんの気持ちや考えに寄り添い、娘さんのことを尊重するということを積み重ねてこなかったからなのではないでしょうか。

また娘さんとしては、住所を教えれば、そこに相談者が望んでもいない荷物や手紙を送ってきたり、節操なく訪問してきて、せっかく相談者と距離を置いたにもかかわらず、安心して生活できなくなると危惧しているのかもしれません。

具体的な事情は、投稿の内容だけではわかりかねますが、背景には、長年の積み重ねにより、相談者が娘さんの信頼を完全に喪失しているということがあると考えます。

そのため、こじれた関係を本当に修復にもっていきたいと思うのであれば、まずはきちんと自らのこれまでの娘さんへの接し方などを省みることが不可欠です。

●娘も1人の人間「プライベートな領域を侵してよいことにはなりません」

娘といっても、もう20代後半であり、社会に出ていて、十分な分別もあります。人生経験という意味ではまだまだ未熟な部分もあるかもしれませんが、未熟な部分を色々な経験を通して学んでいくのも人生です。

それに完璧な存在ではないのは、娘も相談者も含め、人はみな同じです。娘さんは、ひょっとしたら、これから彼氏との同棲生活で傷つくこともあるかもしれませんし、他のことでもこれから壁にぶつかることもあるかもしれません。

画像タイトル 写真はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

しかし、そういった経験を通して、娘さんは成長していくのです。相談者は、娘さんが成長していける可能性も含め、幸せに生きていくことを信じ、見守ってあげるべきではないでしょうか。

それにもかかわらず、相談者は、娘さんを未熟だと決めつけ、娘さんのことはすべて把握していないと気が済まないような態度で接しているように見受けられます。

娘さんのことを見守る姿勢があれば、娘さんの荷物から勝手に交際相手の名刺をチェックし、交際相手の勤務先にまで連絡を入れようなどとは思わないはずですし、そのようなことをしたら娘さんが怒ることも容易に想像できたはずです。

娘といっても、一人の人間であり、すでに成人した大人です。一人の大人が、たとえ親であっても知られたくないプライベートな領域をもつことは当然のことであり、親であるという立場をいいことにプライベートな領域を侵してよいことにはなりません。

このような態度では、娘さんとしては、さらに相談者から追い込まれているようにしか感じられず、関係修復に向けてはまったくの逆効果でしょう。

相談者にとって、自らの娘さんへの接し方を省みることは、長年の育児や自分自身の在り方について振り返ることでもありますから、大きな痛みを伴うものです。

しかしながら、ひょっとすると、娘さんは、それ以上の痛みを、家庭内で長年感じてきたかもしれません。大好きな親から、自分の気持ちや考えをないがしろにされることほど、子どもにとってつらいことはありません。

画像タイトル 写真はイメージです(AK / PIXTA)

自分の気持ちや考えをないがしろにされた子どもは、親から愛されているという実感をもつことができず、自己肯定感が養えず、他者との関係でも自信をもつことができずに人間関係をうまく築くことができなくなるなど、幾多の困難を背負うことになります。

もし、心から娘さんの幸せを願うのであれば、それがどんなに大きな痛みを伴うものであっても、自らの娘さんへの接し方をきちんと省みて、悪いと思うところがあれば、素直に謝罪する気持ちをもつべきです。

それがもしできない、あるいは子どもに謝罪等したくないという気持ちなのであれば、関係修復は諦めるべきでしょう。少なくとも、娘さんによく事情も聞かずに、勝手に交際相手の名刺を見て、交際相手の勤務先にまで連絡したことについては、相談者が謝罪すべきことです。

●「完璧な親にならないといけない」のではない

では、仮に十分に相談者が自らの態度を省みることができたとして、娘さんが相談者との話し合いを拒否している場合、相談者の側がとれる手段があるでしょうか。

考えられるものとしては、家庭裁判所の親族関係調整調停という手続きがあります。

こちらの調停は、円満な親族関係を回復するための話し合いをする場として想定された手続きです。もし十分に相談者が自らの態度を省みることができて、娘さんへ心から謝罪する気持ちがあれば、利用してみる価値があるかとは思います。

画像タイトル 東京家庭裁判所(Caito / PIXTA)

ただし、あくまでも調停は話し合いの場ですので、娘さんが相談者との話し合いを希望しない場合には、出席しない可能性も十分あります。また、仮に出席したとしても、娘さんの側も相談者との関係を修復したいと願っているのでなければ、関係修復が実現することは困難でしょう。

もし調停の場をもつことができて、そこに娘さんが出席してくれたのであれば、それはまたとないチャンスですから、きちんと自分の誠意を伝えましょう。

ただ、謝罪するとき、相手が許すことを期待はしてもいいですが、強要してはいけません。相手には相手の事情があります。関係を修復したいと願うのであれば、許してもらえないとしても謝るという誠意がまずは必要でしょう。

人と人との関係は、双方が同じ方向を向いていなければ修復することはできません。それは、男女関係であっても、親子関係であっても、友人関係であっても同じです。修復を望むのであればなおさら、相手の気持ちや考えを尊重する姿勢が大切です。

そのため、まったく話し合いや修復を望んでいない相手に対して、自分の気持ちを押し付けることも、関係修復のためには逆効果です。

どのような関係であっても、真に相手の方のことを想うのであれば、自らの希望をとおすことばかりに固執せずに、潔く相手の幸せを願い、静かに見守る姿勢も重要ではないでしょうか。

親子は絶縁できないということをもって、いつまでも子どもに自らの要求を押し通そうとする親がたくさんいます。確かに、親子関係は、法律上は絶縁できる制度はありません。しかし、それはあくまでも法律上のことです。

画像タイトル 写真はイメージです(プラナ / PIXTA)

相手の気持ちが自分の方に向いていないのであれば、人間関係の実態は希薄になっていきます。それは、縁を切ることができない親子関係であっても、変わりありません。親の立場にある者は、子が成人して自立してからも円満な親子関係を築いていきたいのであれば、その絶対的な立場に甘んじずに、日々の子どもとの関係を大切に積み重ねていくべきです。

何も完璧な親にならないといけないのではありません。子どものことを一人の人間として尊重し、子どもの気持ちや考えを尊重する、子どもに対して自分が悪いことをしたら謝罪できる、そういった当たり前のことを積み重ねていけばよいのです。

そうすれば、おのずと子どもとの間の信頼関係が構築され、ちょっとしたことで壊れることのないような愛着あふれる親子関係を築いていけることでしょう。

今回の相談者は、娘さんとの修復を希望しているようですが、まずは自分の要望をいったんおいておいて、娘さんの幸せを心から願い、見守っていけるようにご自身を見つめ直す必要があるでしょう。その上ではじめて、娘さんと関係修復ができるのかどうか、模索していくべきです。

取材協力弁護士

吉田 美希弁護士
離婚事件を150件以上取り扱った経験及び幼少時からの虐待を含む自身の家庭での経験を踏まえ、離婚男女問題及び親子問題に積極的に取り組む。特に親子問題の子の立場に立脚した弁護活動に力をいれており、2015年の開設以来、相談に乗ってきた子の立場の相談者はのべ500名を超える。相談者の話をじっくり聞き、事件処理のプロセスをも重視するスタイルで弁護にあたる。

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