ユダヤ人の少女アンネ・フランクが第二次世界大戦中、ナチスドイツの迫害から逃れているときに書いた「アンネの日記」の著作権をめぐり、論争が起きている。世界的に有名な作品の著作権が消滅した状態(パブリックドメイン)になっているか否かが、争われているのだ。
AFP通信によると、フランス人の研究者と国会議員が1月1日、アンネの日記をネット上に公開した。この2人は、欧州の法律で著作権は著者の死後70年で失われるため、アンネがドイツの強制収容所で亡くなった1945年から70年がすぎた今では、アンネの日記は「公共財」になったと主張している。
ただ、アンネの日記は1947年、アンネの父親が一部を削除したものをオランダで出版したものだ。そのことから、アンネ・フランク財団は、日記はアンネの死後に出版されたものであり、著作権は公表時から50年で失われると主張。オランダ戦争資料研究所による1986年版の場合、少なくとも2037年まで保護されるとしている。
今回の論争をどうみればいいのだろうか。著作権問題にくわしい桑野雄一郎弁護士に聞いた。
●国によって保護期間が異なる
「まず、著作権の保護期間は国によって異なりますので、世界中で一斉に著作権の保護期間が終わるわけではありません。ただ、著作者の死亡した年の翌年から起算をし、70年を保護期間とする国が多いです(ただし日本は50年)。ですから、1945年に亡くなったアンネ・フランクの著作権が『70年後』の2015年で切れたという考えには、一理あるでしょう」
では、アンネ・フランク財団の主張はどうなのか。
「アンネ・フランク財団の主張は、遺著(死後に出版された作品)の著作権を出版から50年間保護するというオランダの著作権法の特例に基づくものです。アムステルダムの裁判所がこの主張を支持する判決を出しているようなので、オランダ、そして同様の特例を定めている国では、財団の主張に分がありそうです。
このように、国によって保護期間が違うため、どちらの主張が正しいとも言えません。
なお、アンネの日記には複数のバージョンがあり、父のオットー・フランクによって編集されたものについては、彼も著作権者である可能性があります。また、ここで問題となっている保護期間は原語についてです。翻訳したものについては、翻訳者にも著作権があります。このように、皆さんが手にしている『アンネの日記』の著作権者は、アンネ・フランクだけではありませんので、気をつけてください」
桑野弁護士はこのように話していた。