首都圏が大雪に見舞われた2013年1月中旬、東京スカイツリー(高さ634メートル)からの「落雪」によるとみられる被害が近くの住宅であった。ツリーの南100メートルの住宅でベランダの屋根が割れたという。運営会社は「ツリーからの落雪による被害の可能性が高い」と判断し、修繕の費用を支払うことを決めた。
今回はスカイツリー側が自ら進んで物損の補償をした形だが、もしツリーからの落雪で死傷者が出た場合、被害者はスカイツリーに対して損害賠償を請求できるのだろうか?
雪の被害は天災か、落とした建物の持ち主や管理者の責任か? 雪国・北海道を拠点に活動する難波徹基弁護士に聞いた。
●もし落雪で被害があれば、スカイツリー側に損害賠償責任がある
難波弁護士は「もし落雪で死傷者が出ていたとすれば、スカイツリー側は被害者に損害を賠償しなければならないでしょう」とズバリ指摘する。
なぜなら、「建物の所有者には、建物の安全性を確保する義務がある」からなのだ。だから、落雪による被害は、天災ではなく、建物の所有者、管理者の責任となる。
では、雪国など落雪が普通に起こる地域では、どうか?
難波弁護士は、「当然、雪が落ちないような設備をつける、あるいは落ちた雪が物を壊したり、通行人を傷つけないよう立ち入りを制限するなどの対策を取らなければなりません。これを怠ったとして所有者に賠償責任が認められた裁判例も珍しくありません」という。
●たまにしか雪が降らない地域でも、建物の所有者は責任を負うか?
たまにしか雪が降らない地域ではどうだろう?
「その場合でも、雪が溶け切らず寒さで凍り、固くなるなど落ちれば危険な状態になることは、一般に知られています。つまり、予測できる事態ですし、対策も可能です。予想も対策も可能なのですから、天災だと言って責任を免れることはできないのです」
まだ冬半ば、今後、大雪が降ることもあるだろう。建物の所有者、管理者の方は、これを機会に落雪対策を考えておくことをお勧めしたい。