客に胸をわしづかみされた−−。そんな内容のブログがこのほど話題になった。
ブログによると、ブログ主はスポーツバーで店員として働いている女性で、彼女の胸を触ったのは、常連客が連れてきたその友だちの男性客(30代後半)だ。来店後しばらくして、このグループが帰ることになり、ブログ主が見送ろうとしたところ、その男性客は右手で彼女の胸をわしづかみにしたという。
ブログ主が「ありえんでしょう」と注意すると、この客は「いやいやノリやん」と嘲笑。さらに、外まで見送ったら、再度、彼女の胸をわしづかみにしてきたそうだ。女性が本気で注意すると、この男性客はとても不機嫌になったという。
ネット上を見渡してみると、飲食店の女性店員が、客からセクハラされたというケースは少なくない。はたして、このような客からのセクハラには、どのような法的問題があるのか。また、客からセクハラを受けた場合、どう対応すべきだろうか。上将倫弁護士に聞いた。
●今回のケースは「強制わいせつ罪」に該当する可能性が高い
「店員への身体への接触を伴うセクハラ行為は、その態様によっては、刑法の『強制わいせつ罪』や、地方自治体が定める『迷惑防止条例違反』などの犯罪に該当する可能性があります。
強制わいせつ罪が成立するためには、被害者に対して、暴行または脅迫をおこなっている必要があります。ただし、暴行といっても必ずしも殴る、蹴るなどの行為を行っている必要はなく、被害者の意思に反する一定の実力行使がおこなわれていれば足りると考えられています」
今回のケースのように胸を服の上から「わしづかみ」するような行為はどうだろうか。
「肩や腰に手を回すといった程度を超えて、胸をわしづかみにしているということになると、その行為自体が暴行であると評価されて、強制わいせつ罪に該当する可能性が高いといえます。強制わいせつ罪の法定刑は、6か月以上10年以下の懲役とされています。
今回のケースでは、注意されても繰り返しおこなっていることから、悪質だと判断されて、厳しい処分がなされることも考えられます」
●場合によっては「被害届」提出の検討も
もし暴行や脅迫行為がなかったら、どうなるのだろうか。
「そのような場合でも、正当な理由なく、人を羞恥させたり、または不安を覚えさせるような態様で、公共の場所において衣服の上から身体を触れる行為は、自治体が定める迷惑防止条例違反に該当します。
東京都や大阪府においては、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金との法定刑が定められています。
そこまでいかなくても、店員に対して、執拗に卑猥な話を繰り返すなどのセクハラ行為は、民法上の不法行為となり、損害賠償義務が発生することもあります」
今回のような被害に遭った場合、店員はどうすればいいのだろうか。
「場合によっては、警察へ告訴や被害届の提出をすることを検討したらいいと思います。そこまでしない場合でも、店の責任者に相談して、出入り禁止にしてもらうなど、再発防止のための対応をとることが必要です」