2017年01月23日 10時14分

子どもへの性犯罪、出所後の「所在不明」大幅減…元受刑者の追跡は許されるのか?

子どもへの性犯罪、出所後の「所在不明」大幅減…元受刑者の追跡は許されるのか?
写真はイメージ

子どもへの性犯罪で服役した人物が、出所後に所在不明になるケースが大幅に減っていることが朝日新聞で報じられた。2010年には、対象者740人中200人(27%)の所在が確認できなかったが、2015年末では1521人中41人(2.7%)となり、大幅に減っているという。

法務省は2005年から、強姦など、13歳未満の子どもへの性犯罪で服役した人物の氏名や所在などの情報を、警察庁に提供している。この情報などに基づいて、各都道府県の警察本部と住居を管轄する警察署が、数か月に一度、対処者の居住状況を確認して情報を共有している。2011年からは、同意が得られた対象者に面談も実施しているという。

再犯防止のために、こうした措置が必要とされていると考えられるが、一方で、出所した人物を追跡することは、法的には問題がないのか。憲法問題に詳しい猪野亨弁護士に聞いた。

●元受刑者であっても「プライバシー侵害」の可能性

一般的に、性犯罪者については再犯率が高いとも言われています。出所した後の再犯を防ぐことが、被害発生の防止でもあり、課題のひとつでもあります。

もっとも、犯した犯罪に対しては既に服役したのですから、それ以上に犯罪者扱いされるいわれはありません。

法務省が警察庁に情報提供するということは、住所という個人情報についての登録を管理するだけでなく、積極的に開示していることになります。

警察による監視のための提供ですが、住所などの個人情報はプライバシー権として憲法13条によって保障されています。こうした権力からの監視は、住民票登録という目的を超えており、プライバシー権を侵害するものです。

一番の問題は、元受刑者の更生の妨げにならないのかということですが、それ以上に、まだ犯罪を犯してもいない者に対して、犯罪を事前に予防するという名目で人権を制約することです。

このような警察の活動は捜査ともいえず、これを根拠づける規定もなく適正手続(憲法31条)からも問題です。権力による監視そのものであり、「犯罪を犯したが故に処罰(人権制限)する」という、これまでの国家の在り方を規制する憲法の観点とは全く異なる観点からの人権の制約になります。

●「再犯防止の目的、正しかったとしても権力濫用の可能性」

確かに、元受刑者の承諾を得た上で面会を行うことは、再犯防止という観点からも有効性があるでしょう(背景として、保護観察制度が機能していないということもあります)。そして、「再び性犯罪を犯さないようにしよう」という、本人の真摯な同意があるのであれば、定期的な面談は問題ないと思います。

しかし、同意もなしに行うのであれば、そこにあるのは警察による監視だけです。性犯罪を犯した元受刑者について、明確に再犯を犯す予兆があるかどうか、適確に判断できるものではないでしょう。

これでは警察が常につきまとうことと同じであり、再犯防止という目的が正しかったとしても、権力の濫用の可能性(犯罪捜査や再犯防止に名を借りた国民監視)が常に存在しており、人権侵害行為と言わざるを得ません。このようなことが許されるということになれば対象犯罪が拡大していく可能性や、そもそも犯罪を犯す可能性というだけで特定の者の監視を認めることに通じかねません。

警察が居場所を把握するという対応は、性犯罪が発生した場合、被疑者検挙のために前に同種前科がある者を耐えず所在確認をしているだけともいえ、再犯防止に役立っているとはいえないでしょう。

GPSの装着を義務づけや居住制限をすることを求める声もあるようですが、刑期を終えた者に対し、どこにいるのかを常時、国家が監視するものであり、一般的な再犯率の高さだけを理由に合理化することは困難だと考えられます。

(弁護士ドットコムニュース)

取材協力弁護士

猪野 亨弁護士
今時の司法「改革」、弁護士人口激増、法科大学院制度、裁判員制度のすべてに反対する活動をしている。日々、ブログで政治的な意見を発信している。
事務所名:いの法律事務所

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