福岡地検は4月26日、法律の上限を超える懲役を求刑し、そのことに裁判所も気付かず、上限より2か月長く服役させた例があったと発表した。
報道によると、検事総長が、有罪確定後に裁判などの法令違反が見つかった際、その是正を求める非常上告を最高裁に申し立てた。地検は元受刑者に謝罪し、「猛省し、今後はより厳密な確認作業を行って発生防止に努める」としている。元受刑者の性別、事件の内容は明らかにしていない。
この事件は、福岡地裁小倉支部が扱った事件で、上限は懲役1年なのに、検察官が誤って1年6か月を求刑。裁判所が2014年3月に、誤りに気付かないまま、懲役1年2か月の判決を言い渡し、確定していた。元受刑者が服役を終えた後、別の事件で起訴され、公判中に別の検察官がミスに気付いたという。
法律の上限を定める上限を超えた懲役に服させてしまったことは、法的にはどのような問題があるのか。元受刑者は、なんらかの補償を求めることなどはできるのか。刑事手続に詳しい大山滋郎弁護士に聞いた。
●刑事補償は難しいかもしれないが・・・
「刑法では、どのような行為が犯罪として処罰されるのか、処罰されるときの刑は、どのくらい重いのかが定められています。裁判官は、その範囲内で、現実の刑期など決めるわけです」
その範囲を超えて刑罰を科してしまったことをどう考えればいいのか。
「もちろん許されることではありません。法律のプロである検察官や裁判官でも、こういうミスをすることがあるのです(複数の犯罪を犯している場合などで、全体の刑の長さを計算する際に、うっかりミスをしてしまうことがあります)」
長く服役させられた2ヶ月について、何らかの補償は受けられるのか。
「罪を犯したとされる人が、実は無罪だと判明した場合は、身体拘束を受けていた日数に応じて、補償を受けることができます。これは、法律で定めがあります。
一方で、今回のように、有罪であることは間違いないが、刑期だけ法の規定より長く定めてしまった場合はについて、刑事補償を正面から認めることは難しいかもしれません。
なぜなら、刑事補償を受けるためには、無罪であることが要件ですが、今回のケースでは有罪であることは確定しているからです。
本件の場合、裁判官が過失によって、被告人に対して法の定めを超えた身体拘束を行い、その結果、損害を与えたと言えます。したがって、被告人は国家賠償を受けることは認められる可能性があります。
しかし、間違った裁判がなされた場合の国家賠償は、現在の判例ではかなり厳しい要件が必要とされています。極端なことを言えば、裁判官がわざと間違った判決を出さないと、国家賠償は認められないとも考えられます。
そうすると、被告人が何らかの補償を受けるのはかなり難しいかもしれません。現在の補償の制度がこのままで良いのか、見直すきっかけになるかもしれませんね」
大山弁護士はこのように述べていた。