徳島県阿南市の少年野球チームの監督をつとめていた40代の男性が11月下旬、練習でミスをした小学生5人に罰として、小学校のグラウンドで「全裸ランニング」をさせていたと報じられている。
報道によると、男性は11月28日、市内の小学校のグラウンドで練習中、「キャッチボールでミスをしたら裸で走ることにしよう」と罰ゲームを提案。練習に参加していた11人の内、ボールを取り損ねた小学3~5年の5人を全裸でグラウンドを1~2周走らせた。しかも、その様子を自分のスマートフォンで撮影したという。
その後、保護者から苦情を受けて、説明を求める会合で、男性は謝罪したうえで監督を辞任した。その場のノリだったのかもしれないが、児童に「全裸ランニング」をさせたり、その様子をスマートフォンで撮影する行為は、法的に問題ないのだろうか。中西祐一弁護士に聞いた。
●「慰謝料の支払いを求められる可能性は極めて高い」
「男性の行為が犯罪にあたらないか検討してみます。考えられるのは『強制わいせつ罪』、『児童ポルノの製造罪』、『強要罪』です」
はじめに中西弁護士はこのように指摘した。
「強制わいせつ罪が成立するには『性欲を興奮させる意図』が必要ですが、今回の事例ではそのような意図があるとは考えられませんので、強制わいせつ罪は成立しません。
撮影をする行為が、児童ポルノの製造にあたらないかどうかも問題となりますが、児童ポルノとは『殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているもの』とされています。
スマートフォンで撮影した画像がどのようなものかわかりませんが、全裸でグランドを走っている姿を遠くから撮ったというだけでは、児童ポルノにも該当しないでしょう。
では、強要罪についてはどうでしょうか。強要罪は『脅迫または暴行』を用いて人に義務のないことを行わせる犯罪です。報じられている『ミスをしたら裸で走ることにしよう』程度であれば、強要罪にはあたりません。
しかし仮に、『全裸ランニングをしないとレギュラーになれない』などと声を掛けていたとすれば、『脅迫』にあたり、強要罪が成立する可能性が考えられます」
また問われるのは、刑事責任に限らない。
「犯罪にはならなくても、児童の人としての尊厳を傷つけたとして、民事上、慰謝料の支払いを求められる可能性は極めて高いと思われます。
野球の指導の一環として行われた行為であるとしても、『全裸ランニング』は、社会的に相当とされる指導の範囲を逸脱していると判断されると思われます」
中西弁護士はこのように指摘していた。