熱烈なファンが多いプロ野球・阪神タイガース。優勝したときの「道頓堀ダイブ」は名物として知られている。日本シリーズは福岡ソフトバンクホークスに敗れ日本一は逃したが、日本シリーズ進出が決まった夜には、喜びに沸く多くのファンが、道頓堀に飛び込んだ。
しかし、いくら嬉しくても、ハメを外しすぎるといけないようだ。大阪府警は下半身を露出させ、靴下だけのほぼ全裸でダイブした30代の男性を、公然わいせつ容疑で書類送検した。
スポーツニッポンによると、男性は取り調べに対し、「裸で飛び込んだのは間違いない」としながらも、「パンツは誰かに脱がされたかもしれない。酔っていてよく覚えていない」と容疑を一部否認しているという。
お祭り騒ぎのなか、酔っ払いが脱いだり、脱がせたりするのは決して珍しいことではない。もし男性の言う通り、泥酔するほど酒を飲んだ状態で、誰かに「下着を脱がされた」としたらどうだろう。そんな事情があったとしても、犯罪者になってしまうのか。刑事事件にくわしい伊藤諭弁護士に聞いた。
●酔っていたらどうなる?
「公然わいせつ罪とは、文字通り『公然とわいせつな行為をする犯罪』です。不特定または多数の人が見ることのできる状況で、陰部を露出する行為はこの罪にあたります」
伊藤弁護士はこう指摘する。酔っぱらってよく覚えていない場合でも、罪になるのだろうか。
「公然わいせつ罪が成立するためには、犯人自身が公然とわいせつな行為をすることを認識して、『それでも構わない』と考えていることが必要です」
具体的には、どんな認識ならアウトなのだろうか?
「自分で脱いだとしても、他人に脱がされたとしても、自分が衣服を着けていないことを分かっていて、かつ『それでも構わない』と思っていた場合はアウトです。
こうした場合なら、公然わいせつ罪の故意が認められ、犯罪は成立します」
自分が裸だと分かったうえで、「それでもいいや」と思っていたなら、ダメということだ。逆に、犯罪が成立しないのは、どんな場合だろう。
「たとえば、泥酔などにより意識を失った状態で何者かに衣類を脱がされ、自分が裸でいることが分かっていないまま寝ていた、といった場合ですね。
こうした場合、公然わいせつ罪の故意は認められず、犯罪は成立しません」
今回のケースはどう考えられるだろうか。
「報道によると、この男性は『衣類を脱がされたこと自体は酔っ払っていてよく覚えていない』というものの、その後に自分がほとんど裸であることは分かったうえで、川に飛び込んでいるようです。
それを前提とすれば、公然わいせつ罪は成立すると考えられます」
伊藤弁護士はこのように指摘していた。