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キックボードをこぎながら「すき家」にダイナミック入店、SNSで撮影動画が話題…法的問題は?
キックボードで入店

キックボードをこぎながら「すき家」にダイナミック入店、SNSで撮影動画が話題…法的問題は?

若い男性が「すき家」のロゴが入った店舗にキックボードに乗って入店する様子の映った動画がツイッターなどSNSで話題となっている。

動画では、黒いダウンジャケットの若者がキックボードを左足でこぎながらスピードに乗って入口の自動ドアから店内に進入。減速する様子もなく、店内の壁側にある座席にぶつけてキックボードを止めた。

停止位置のそばには白いダウンジャケットを着た男性客が座っていたが、動画を見る限り、この客は男性の知人とみられる。その後、男性が撮影者と親しげに会話するシーンも映っていることから、一連の「キックボード入店」は友人らと動画撮影するためにおこなわれたものとみられる。

キックボードに乗ったまま勢いよく入店する人がいるなど、第三者にしてみれば通常は想定できず、仮に撮影のことなど何も知らない他の客とぶつかれば大事故にもなりかねない危険な行為だ。このような行動は何かしらの罪に問われることはあるのだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。

●建造物侵入罪や威力業務妨害罪が成立する可能性ある

——今回のような行為は何か犯罪になるのでしょうか。

建造物侵入罪、威力業務妨害罪ないし軽犯罪法違反の罪に問われる可能性があると考えます。

建造物侵入罪(刑法130条前段)は、正当な理由がないのに人の建造物に侵入した場合に成立する犯罪です。建造物侵入罪が成立する場合、「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」となる可能性があります。

建造物の事実上の平穏や建造物の管理権を保護するためのものですので、正当な理由がない侵入とは、平穏を害する建造物への立ち入りや建造物の管理権者の意思に反する態様での建造物への立ち入りを意味します。

キックボードでの入店は危険な行為ですので、平穏を害する建造物への立ち入りに当たりますし、建造物の管理権者の意思に反する態様での立ち入りにも当たります。したがって、建造物侵入罪に問われてもおかしくはないと考えます。

——威力業務妨害罪ないし軽犯罪法違反の罪についてはどうでしょうか。

威力業務妨害罪(刑法234条)は、威力を用いて人の業務を妨害した場合に成立する犯罪で、人の業務活動を保護しています。威力業務妨害罪が成立する場合、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」となる可能性があります。

「威力」とは人の意思を制圧するに足りる勢力を用いることですが、要は、人に業務活動の続行を躊躇させるような行為です。

今回の動画に映っていた男性は、キックボードに乗ったまま飲食店に入店しているわけですが、そうした行為によって、飲食店側が退店を求める等の余計な対応を余儀なくされ、それでも客が飲食店の指導に従わず飲食店の業務に支障を生じさせたような場合、威力業務妨害罪が成立する余地があるのではないかと考えます。

軽犯罪法は、飲食店において、入場者に対して著しく粗野または乱暴な言動で迷惑をかけた者を処罰すると定めています(同法1条5号)。軽犯罪法違反が成立する場合、「拘留(1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘置)または科料(1000円以上1万円未満の金額を国庫に納付)」となる可能性があります。

プロフィール

冨本 和男
冨本 和男(とみもと かずお)弁護士 法律事務所あすか
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。

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