西野亮廣さん「ストーカーに婚姻届を出されました」 被害にあったら、どうすればいい?
西野亮廣さん(写真:Pasya/アフロ)

西野亮廣さん「ストーカーに婚姻届を出されました」 被害にあったら、どうすればいい?

お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣さんが5月15日、「ストーカーに婚姻届を出されました」と題したYouTubeを更新。勝手に婚姻届が出されていたことを報告した。

西野さんは動画で「どうやらガチガチのストーカーが勝手に婚姻届を出した。びっくりしてます」と切り出し、経緯を説明。

品川区の戸籍住民課戸籍届出係から「本年5月2日に届出がありました婚姻届について、内容に不備がございましたので受理ができない状況にあります。つきましては不備の内容のご説明をさせていただきたく、下記までご連絡願います」と書かれた文書が速達で届いていたという。

「そもそもそんなことできるの?」と驚きながら、「被害に遭われた方の話を聞くと、籍入れる時に気づいたりするんです。みなさん気をつけてください」と注意を呼びかけた。

ファンからは「内容に不備があってほんとによかった」「犯罪なのできちんと届け出を出してください」などのコメントが寄せられている。今回は不備があったことで受理を防ぐことができたようだが、勝手に婚姻届を出す行為にはどのような法的問題があるのだろうか。高橋麻理弁護士に聞いた。

●「知らない間に婚姻届受理」はありえる

——そもそも、自分が役所に提出に行っていないのに、婚姻届が受理されるということがありえるのですか?

自分が役所に提出に行っていないのに、全く知らないところで婚姻届が受理されるということはありえます。

婚姻届に署名のあるどちらか一方が提出に行った場合も、そもそも、婚姻届に署名のない第三者が提出に行った場合も、その婚姻届に、形式面の不備がない限りは、受理されます。

受理の際になされる本人確認手続きは、婚姻届を持参した人に関するもののみです。

その上で、役所は、後日、婚姻届の夫婦署名欄に記載のあるかたのうち、役所に来なかったかたに対し、書面を送ります。書面は、「〇月〇日付で婚姻届を受理しています」という内容のものです。

提出に心当たりがないかたは、この書面を受け取ることで、自分の知らぬ間に婚姻届が提出されていたことを知るということもあるようです。

●受理されてしまったら戸籍を元に戻すのは大変

——受理された場合の法的な問題はありますか?

自分が全く知らないところで婚姻届が受理されているということを知った上で、どうしたらいいか?というところが気になるところですよね。

受理された場合に生じ得る法的な問題としては、大きく2つ考えられます。

1つ目は、婚姻届が受理されたことで書き換わってしまった戸籍を元に戻すためにはどうすればいいかということです。

まず、前提として、婚姻は、夫婦双方に婚姻意思があって初めて成立します。この点、自分が知らないところで婚姻届が受理されたという場合は、そもそも、一方に婚姻意思がないわけですから、婚姻は無効です。

でも、役所に、「私は、婚姻意思なんてないから、婚姻は無効なのです。婚姻届が出されたことも全然知らなかったのですよ」と訴えても、それだけで戸籍を元通りに戻してもらえるわけではありません。

法的な手続きが必要になります。具体的には、まず、「婚姻無効確認調停」を申し立てることです。

調停で、その婚姻届が、相手方により、勝手に提出されたもので、申し立てた側には婚姻の意思がないことについて、相手方との間で話し合いがまとまれば、それをもとに、裁判所が「審判」という形で、婚姻が無効であることを確認します。

話し合いがまとまらないときには、婚姻の無効を確認する訴訟を提起し、無効であることを確認する判決を取得する必要があります。

その裁判の中では、たとえば、その婚姻届の署名欄にある署名捺印が自分のものではないことを示すために、自分の本来の筆跡や印鑑を証拠として提出することになるでしょう。

審判または判決を取得したら、その謄本を添付して、判決の確定から1カ月以内に、役所に、戸籍の訂正を申請することになります。

●私文書偽造などの犯罪にあたる

——勝手に出されたのに、調停を起こさないといけないのですね。2つ目はなんでしょうか?

2つ目は、勝手に婚姻届を提出した者に対する刑事責任追及の問題です。

他人になりすまして勝手に署名し、捺印して、その婚姻届を提出し、役所に受理させれば、その行為は、有印私文書偽造、同行使罪、電磁的公正証書原本不実記載罪に該当します。

私文書偽造、同行使罪の法定刑は、いずれも、3月以上5年以下の懲役、電磁的公正証書原本不実記載罪の法定刑は、5年以下の懲役または50万以下の罰金です。

このたび報道された件に関しては、報道の限りでしか把握していないため、事実関係はわかりません。

ただ、報道されているように、提出された婚姻届に不備があり、受理に至っていないということであれば、今お話しした1つ目の問題、つまり、書き換えられてしまった戸籍を元通りにするための手続きは不要になります。

——今回のように不備があって受理されなかった場合にも、法的な問題はありますか?

他人の署名を偽造して、これを役所に提出したという行為については、仮に提出された婚姻届に不備があったとしても、有印私文書偽造、同行使罪が成立する可能性はあります。

ただ、その不備が一見して明白で、文書として信頼される体裁を備えていない場合は別です。文書偽造罪により保護されるのは、文書のもつ社会的信用です。

ですから、そもそも、あまりに不備の程度が大きく、それ自体信頼を寄せられる体裁を備えていないとすれば犯罪の成立が否定されるケースもありえます。

もっとも、今回のケースで、いったん役所も婚姻届を受け取ったという事実があるのであれば、一見して不備がわかるような状態ではなかったとも考えられ、その場合は、やはり有印私文書偽造、同行使罪が成立し得るものと考えます。

このように、勝手に婚姻届を出されてしまうと、対処方法はあるものの、法的手続きを経なければならず、大きな負担になりますよね。

●予防する方法は?

——予防する方法はないのでしょうか?

あらかじめ予防する方法として、婚姻届の不受理届を提出しておく方法があります。ただ、そもそも、何の予兆もなかったら、だれかが自分との婚姻届を提出するかもしれないと予想もできないはずで、その場合、不受理届を提出する必要性を認識するきっかけすらないわけですから、実際は予防が難しいケースもあるでしょう。

結婚しようと、婚約者と婚姻届を提出に役所に行ったら、そのタイミングで、自分の知らないところで婚姻届が提出されていたことが発覚するなどというケースもあると思います。 そのような事態に直面したら、まずは、弁護士、警察に相談することをお勧めします。

プロフィール

高橋 麻理
高橋 麻理(たかはし まり)弁護士 弁護士法人Authense法律事務所
第二東京弁護士会所属。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。殺人事件、詐欺事件、薬物密輸事件などに加え、女性検事として、多くの性犯罪事件の主任検事を務めた。検察官退官後は、弁護士として、刑事事件(刑事弁護、被害者代理人、告訴・告発事件)、離婚等家事事件、一般民事事件を担当。2020年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。

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