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「時計の針を戻さずに審理を」性犯罪の刑法改正、被害当事者らが訴え
登壇した(左上から時計回りに)石田郁子さん、伊藤詩織さん、後藤稚菜さん、島岡まな・大阪大教授(2021年9月16日、オンライン開催)

「時計の針を戻さずに審理を」性犯罪の刑法改正、被害当事者らが訴え

性犯罪に関する刑法の改正について、上川陽子法務大臣は9月16日、法務大臣の諮問機関である「法制審議会」に諮問した。

これを受け、国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」(HRN)がオンラインで会見を開き、「不同意性交等罪や地位・関係性を利用した類型の規定、性交同意年齢など、被害者の意見が取り入れられた形で明確な前進があるよう今後も働きかけしたい」と話した。

●法制審議会に10項目を諮問

法務省の有識者会議「性犯罪に関する刑事法検討会」は2021年5月、取りまとめ報告書を発表。「暴行・脅迫」や「心神喪失・抗拒不能」の要件、性交同意年齢、法定刑のありかたなどについて、「さらに検討がなされるべき」などとしていた。

法制審議会への諮問内容は、以下の10項目。

(1)「暴行・脅迫」や「心神喪失・抗拒不能」の要件
(2)性交同意年齢
(3)地位・関係性を利用した犯罪類型
(4)強制性交等の罪の対象となる行為の範囲
(5)配偶者間等の性的行為に対する処罰規定
(6)グルーミング行為(性交等またはわいせつな行為などをする目的で若年者を懐柔する行為)を処罰する規定
(7)公訴時効の見直し
(8)被害者などの聴取結果を記録した録音・録画に関する証拠能力の特則新設
(9)性的姿態の撮影行為に対する処罰規定
(10)性的姿態の画像などを没収・消去できる仕組みの導入

これについてHRN副理事の後藤弘⼦さん(千葉大学大学院社会科学研究院教授)は「検討会の取りまとめ報告書がほとんど反映された形になっていて、これ以外でも必要があれば検討するという形」と評価した。

●「被害救済できるための法律を」

会見では性暴力の被害当事者や支援団体のメンバーなどが登壇し、刑法改正への期待を語った。

ジャーナリストの伊藤詩織さんは、自身の性被害について「もし日本の刑法に『同意がなかった』といった言葉が入っていたら、どのような結果になっていたのかと思った」と振り返った上で、「やっと問題が見える化されて、メディアで正面から取り上げられるようになったと思う。みなさんの力で動いた時計の針を戻さずに審理を進めてほしい」と話した。

中学教師に性暴力を受けていた経験から、学校における性犯罪防止を訴えている都内在住のフォトグラファー、石田郁子さんは「15歳から19歳まで被害にあっていたが、恋愛と思わされ、まして先生が悪いことをするとは思っていなかった。37歳でやっと気づくことができた」と話し、公訴時効の撤廃や地位・関係性を利用した類型の罰則を求めた。

リベンジポルノなどの相談を受け付けているNPO法人「ぱっぷす」の後藤稚菜さんは、被害相談が累計で1300件にのぼり、中には12歳からの相談もあると報告した。

SNSで知り合った人から自撮り画像を要求され、エスカレートしてきたため断ると、「今までのものを拡散する」と言われるケースが相次いでおり、「被害者は弱みを握られているのでお願いベースで加害者に交渉をしなければならない。自分の被害はずっと未来まで続くという人がいる。被害救済できるための法律を作ってもらいたい」と訴えた。

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