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わいせつ動画「出演女性」を逮捕――弁護士が異論「女性の行為は処罰対象でない」
小学校の女性講師(非常勤)が「わいせつ動画」に出演していたとして逮捕され、騒ぎになっている

わいせつ動画「出演女性」を逮捕――弁護士が異論「女性の行為は処罰対象でない」

小学校の女性講師(非常勤)が「わいせつ動画」に出演していたとして逮捕され、騒ぎになっている。報道によると、この女性は海外サイトを通してインターネットに有料配信されることを知りながら、無修正のアダルトビデオに出演し、動画を撮影させたという疑いで、11月下旬、静岡県警に逮捕された。

女性の容疑は、「わいせつ電磁的記録媒体頒布ほう助」と報じられている。しかし、わいせつ事件にくわしい奥村徹弁護士は、「刑法の趣旨からすると、わいせつビデオに出演する行為は、処罰対象にならないのではないか」と、疑問を投げかけている。なぜ、そのように言えるのだろうか。

●なぜ、女性は逮捕されたのか?

まず、「わいせつ電磁的記録媒体頒布罪」とは、どんな罪なのだろう?

「『わいせつ電磁的記録媒体頒布』というのは、平たくいえば、わいせつ動画を頒布する(=配る)ということです」

女性の逮捕容疑は、その「ほう助」ということだが、これはどういうことなのか?

「一般に『ほう助』というのは、正犯の実行行為を容易にさせる、その実行行為以外の行為ことです(刑法62条1項)」

●わいせつ物関連の処罰対象は「かなり絞り込まれている」

では、わいせつなビデオに出演することは、わいせつ動画の頒布の「ほう助」ということになるのだろうか。

「わいせつなビデオに出演するということは、わいせつ動画の製造に加担することです。また、出演行為がなければ、その動画を販売することはできません。

ですから、一見すると、ビデオ出演は、わいせつ動画を頒布するという行為を容易にするので、その『ほう助』として処罰されるとも言えそうです」

しかし奥村弁護士は、次のように述べ、今回の逮捕に疑問を呈している。

「刑法は、表現の自由(憲法21条)に配慮し、わいせつ物に関与する行為のうち、処罰対象をかなり絞り込んでいます」

●刑法の明文で処罰されるのは、「有償頒布目的の所持」のみ

具体的には、どういうことだろうか。

「1974年に刑法改正が議論されたとき、わいせつ動画の製造(撮影・編集を含む)・目的所持・運搬・輸出・輸入という、一連の『準備行為』を処罰する案も検討されました(法制審議会「改正刑法草案の解説」参照)。

しかし、現行刑法の規定はそうはなっていません。すなわち、わいせつ物の頒布・公然陳列に関する刑法175条が処罰するのは、こうした準備行為のうち『有償頒布目的の所持』(2項)のみです。

また、頒布行為や公然陳列行為には、相手方として『購入者』や『閲覧者』が不可欠です。しかし、過去の判例で、購入者や閲覧者が共犯として処罰されることはない、とされています(福岡高裁那覇支判H17.3.1)」

つまり、現行の刑法は、準備的な行為のうち、「有償頒布目的の所持」のみを罰することとしていて、わいせつ物の「製造」自体を犯罪と明記しているわけではない、ということだ。その背景には、「憲法21条で保障された表現の自由への配慮がある」という。

●「刑法の趣旨からすれば、女性の行為は処罰対象にはならない」

こうした前提に立つと、動画に出演した女性の行為が処罰の対象になるかどうかは、微妙なラインに思える。また、今回のような「ほう助犯」としての検挙は、処罰の範囲が容易に広がってしまう恐れがある、という指摘もある。

奥村弁護士は次のように述べ、女性は「無罪」といえるのではないか、と主張している。

「たしかに、出演者というのは、わいせつ動画には不可欠な存在で、間接的に頒布行為を容易にする行為とは言えます。

しかし、処罰対象を絞っている刑法の趣旨からすれば、今回の女性の行為は、処罰対象にはならないのではないかと考えます」

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

奥村 徹
奥村 徹(おくむら とおる)弁護士 奥村&田中法律事務所
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。

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