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時速10キロ「ゴーカート」で男児怪我 「乗せてしまったのは間違い」施設の責任は?
画像はイメージです (AOI / PIXTA)

時速10キロ「ゴーカート」で男児怪我 「乗せてしまったのは間違い」施設の責任は?

1月3日午前10時45分ころ、栃木県宇都宮市にある宇都宮動物園内のゴーカート乗り場で事故が起きた。怪我をしたのは、家族で園を訪れていた千葉県の男児(6歳)。ゴーカートに乗車した際に運転操作を誤り、コース端の鉄柵に衝突した。男児は上の前歯2本を折ったほか、唇や口内を怪我するケガを負った。

栃木県警宇都宮中央署によると、事故は次のような状況だった。

「ゴーカートは運転席(右ハンドル)と助手席のある2人乗りで最高時速は約10キロ。コースは1周350メートルだった。男児はヘルメットをかぶっておらず、ゴーカートにはシートベルトが備え付けられていなかった」(同署副署長)

警察は業務上過失傷害の疑いで園を捜査している。

●「乗せてしまったことは間違いだった」

ゴーカートの乗車において、園では「身長制限140センチ以上」とする安全規定を設けていた。しかし、男児の実際の身長は130センチ台だったという。一方、ゴーカートの係員は男児1人での乗車について父親から事前に許諾を得ていたという報道もあったが、園側と警察は捜査中として詳細を明らかにしなかった。

園側の代理人弁護士は「乗せてしまったことは間違いだった。被害者には誠心誠意対応したい」とコメントする。

結果的に怪我をさせたことに謝罪の意向を示す一方、責任の所在が園側にあるのか、男児・家族側にあるのかについての問いに対する回答は控えた。

●刑事、民事ともに責任を問われる可能性

遊園地や公園の遊具に年齢や身長の安全規定がある場合、それを知りながら遊ばせた親は子どもの怪我に法的責任を負うべきなのか。濵門俊也弁護士に聞いた。

――今回のような事故で、施設側はどのような責任を問われる可能性があるか

刑事責任として、業務上過失致傷罪(刑法211条前段)に問われる可能性があります。「身長制限140センチ以上」とする安全規定を設けていたにもかかわらず、男児は130センチ台であったといいますし、ヘルメットも被っておらず、シートベルトもなかったということであれば、園は業務上必要な注意義務を怠っていると言わざるを得ません。

次に、民事責任として不法行為(民法709条、同法710条)や、安全配慮義務違反を問われ債務不履行(民法415条)として損害賠償請求も考えられます。

――では、遊園地や公園の遊具に年齢や身長の安全規定があることを知りながら親が遊ばせていた場合には、親自身の責任も問われるのか

親の刑事責任が問われる可能性は低いでしょう。ただし、親が事前の許諾をしていた点は、被害者側の過失として過失相殺(民法722条2項、418条)の際に考慮されることはありえるでしょう。

プロフィール

濵門 俊也
濵門 俊也(はまかど としや)弁護士 東京新生法律事務所
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えております。依頼者の「義」にお応えします。

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