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地獄の忘年会「俺の酒は飲めないのか?」 アルハラ上司に怯える日々
画像はイメージです(プラナ / PIXTA)

地獄の忘年会「俺の酒は飲めないのか?」 アルハラ上司に怯える日々

忘年会シーズンは「アルハラ三昧」でストレスを感じるーー。ネット上には、このような声が上がっている。

弁護士ドットコムにも上司による「アルハラ」に悩む社会人が相談を寄せている。相談者は常用している薬があり、医師にアルコールを控えるように指示されているという。しかし、そのことを上司に話すと「俺の酒が飲めないのか? 薬は関係ない」と怒鳴られたようだ。

ほかにも、大学のゼミ親睦会で教員によるアルハラを目撃したという相談が寄せられている。相談者によると、教員は飲んでいたハイボールを女子学生のスカートにかけ、彼女に「かけられて嬉しいのか」「かけられるか、それともそこにあるお酒一気飲み、どちらかにしろ」と言ったという。

このような「アルハラ」は、法的に許されるのだろうか。加藤寛崇弁護士に聞いた。

●「アルハラ」は「犯罪」にあたる可能性も

ーー「アルハラ」とは、どのような行為をいうのだろうか

「いわゆる『パワハラ』『セクハラ』『アカハラ』もそうですが、これらの用語には法律・判例上の定義はありません。法的側面からいえば、『●●ハラスメントになるかどうか』ではなく、端的に『違法かどうか』を検討することになります。

一般に『アルハラ』と呼称される行為としては、『飲酒強要』『一気飲みをさせること』などがあるようです」

ーーこのような行為は「違法」となるのだろうか

「パワハラもそうですが、上下関係など断れない状況にあったかどうか、嫌がっているのを認識していたか、どれだけ執拗に勧めたか、といった事情で違法になるか否かが判断されることになるでしょう。

裁判例としても、『飲めないんです。飲むと吐きます』などと言って断る従業員に対して、『俺の酒は飲めないのか』などと語気を荒げて、グラスに酒を注いで飲酒をさせた(強要した)行為について、単なる迷惑行為にとどまらず不法行為であると判断した事例があります」

ーー「アルハラ」は犯罪になりうるのだろうか

「セクハラ行為が強制わいせつ罪等に該当することもあるように、アルハラも立派に犯罪になり得ます。断っているのに無理に飲酒させれば、強要罪に当たります。

無理に飲酒させたことで、相手が死亡すれば、過失致死罪または重過失致死罪も成立する余地があります。酒を飲ませておいて、酔いつぶれた人を放置すれば、保護責任者遺棄罪にも当たり得ます」

●「会社の責任を問える可能性もある」

会社や大学ゼミの忘年会でアルハラが起こった場合には、会社、大学側にも責任を問えるのでしょうか。

「アルハラをした従業員の使用者責任によって、会社の責任が問われる可能性はあります。そのアルハラ行為が会社の業務として行われた(民法715条1項)と判断されれば、不法行為に当たり、会社が責任を負うことになります。

そのためには、業務遂行中、あるいは業務と密接な関連を有する場合と認められる必要があります。

もっとも、忘年会は会社の業務そのものではなくても、業務の延長上にあります。裁判例でも、会社の飲み会等におけるパワハラ・セクハラについても会社の使用者責任が認められている例が多いです。

したがって、会社の使用者責任は認められる見込みが高いといえます。 また、大学のゼミ親睦会で、大学教員がアルハラをした場合も同様に考えていいでしょう」

プロフィール

加藤 寛崇
加藤 寛崇(かとう ひろたか)弁護士 みえ市民法律事務所
東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。労働事件は、労働事件専門の判例雑誌に掲載された裁判例も複数扱っている。

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