慶應義塾大学のアメリカンフットボール部は10月14日、無期限で活動を自粛することを発表した。「部内における複数の部員による著しく不適切な行為」があったことが理由だという。
同部はその理由を明らかにしていないが、文春オンラインなどによると、今年8月の静岡県内での合宿中、複数の部員が女性の露天風呂を携帯電話で盗撮し、その動画を部内の仲間たちに送って、共有していた。主犯格の2人は退部させられたという。
今回、被害届は出されていないということだが、ネット上では「逮捕すべきだ」という声も多い。女性の入浴を盗撮し、他人と共有することはどんな犯罪になる可能性があるのか。奥村徹弁護士 に聞いた。
●盗撮行為自体は迷惑防止条例違反に
「浴場を盗撮する行為は、国法上は軽犯罪法1条23号の窃視罪(拘留又は科料)が疑われます。ただ、『認識不可能な遠方からの盗撮はわいせつ行為に当たらない』という高裁判例(名古屋高裁h31.3.4)もあり、法律は慎重な姿勢です。
一方で、今回のように静岡県内で行われた場合には、静岡県迷惑行為等防止条例3条2項により、浴場等においてカメラを設置する行為が処罰されます(6月以下の懲役又は 50万円以下の罰金)。さらに、撮影した場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に加重されます」
法律と条例の関係はどうなっているのか。
「軽犯罪法という国法での処罰規定が存在する場合に、地方条例で重く処罰することができるかについては疑問があります。ちなみに、静岡県警は軽犯罪法第1条第23号(窃視の罪)との関係は、法条競合(複数の罪にあたるように見えても、刑罰法規上1つだけしか適用されないこと)となり、条例違反罪のみが成立すると解釈しているようです。
また、これとは別に、風呂を携帯電話で盗撮する際に、身体の一部が女湯か脱衣場に侵入していれば、建造物侵入もありえます」
●盗撮動画の共有は、リベンジポルノ法違反の可能性
では、盗撮画像や動画を共有することについては、どんな犯罪になる可能性があるのか。
「浴場盗撮画像を数人で共有する行為については、『私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律』(リベンジポルノ法)3条1項の『公表罪』(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)に問われることがあります。俗に『リベンジポルノ公表罪』というものの、復讐等の目的があるかどうかは関係ないことに注意してください。
また、温泉盗撮画像の公開については『入浴場面を公表する人物だという事実を摘示した』として名誉毀損罪(3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金)が疑われることもあります。
今回逮捕されなかった理由はわかりませんが 軽犯罪法違反以外の罪については、逮捕されることがよくあります」