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性犯罪は「魂の殺人」だ――被害者支援の弁護士がみる「性犯罪厳罰化」の議論
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性犯罪は「魂の殺人」だ――被害者支援の弁護士がみる「性犯罪厳罰化」の議論

強姦罪や強制わいせつ罪を処罰しやすくし、強姦罪の法定刑を重くする「刑法」の改正案がこの10月、法制審議会に諮問された。

現行法では、強姦罪や強制わいせつ罪は、被害者の告訴がないと加害者を処罰できない「親告罪」となっている。また、強姦罪の対象となる行為は、男性器を女性器に挿入する場合に限られている。

今回の改正案では、被害者の告訴を不要にする。強姦罪について、肛門性交や口淫も含めた「性交等」を処罰対象とし、性別の縛りを無くす。

また従来は暴行・脅迫が必要とされていたが、「父母などが、その影響力を利用した場合」も、強姦・強制わいせつ罪の対象とする。

さらに、強姦罪の法定刑を「3年以上」の懲役から「5年以上」にひきあげるなど、刑罰を重くしている。

今回の改正案は、性犯罪の被害者支援に携わる弁護士の目には、どう映っているのだろうか。岩崎哲也弁護士に意見を聞いた。

●性犯罪とは「どんな犯罪」なのか?

「従来、強姦罪等の性犯罪は、『性的自由に対する罪だ』と考えられてきました。つまり、性犯罪は、個人の自由の侵害になるから犯罪とします、という考え方です。

しかし、強姦罪などの性犯罪は、単に『性的な自由を奪う』という側面だけではなく、より重大な人格や尊厳を著しく傷つけるという側面もあります。この側面を抜きにすることは、本来できないはずです。

諮問のもとをつくった、有識者による検討会でも、こうした認識がおおむね共有されました。こうした認識は、性犯罪被害者の実感にも沿うものでしょう」

●性犯罪は「魂の殺人」

「このような認識をふまえると、人間の尊厳を害する強姦罪の法定刑を、身体と財産を害する強盗罪と同等以上とすべきことをはじめ、議論が素直に理解できます。

もちろん、それだけで話が済むほど単純ではありません。

ただし、議論をするときには、性犯罪が人間の尊厳を害する『魂の殺人』であるということを、必ず念頭に置く必要があります。

しかし、このような議論以前に、性犯罪の加害者が、その点に思い至り、犯行を踏みとどまってほしいと思います。

今後の議論と、できあがる法律が、『加害者を踏みとどまらせる力』を持つことを期待しています」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

岩崎 哲也
岩崎 哲也(いわさき てつや)弁護士 中村国際刑事法律事務所
41期、平成元年検事任官。麻薬、暴力、外事、財政経済、特捜応援等様々な事件の捜査・公判を経験。平成14年に退官後は弁護士登録し、一般・重大刑事事件、交通事故、一般民事、家事、相続、債務整理等多彩な事案、第三者委員会の調査等の広範な経験も積む。

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