迷惑メールに関連した相談が、2014年度以降増加しているという。国民生活センターによると、相談者の年齢層は主に60代以上。相談の中には「多量の迷惑メールに困っている」という内容だけでなく、「騙されて金銭を支払ってしまった」という金銭的な被害が出ているものもある。
以下が国民生活センターに寄せられた実際の相談だ(抜粋)。
●電子マネーのギフト券番号を伝えてしまった
「申し込んだ覚えがないが、数億円が当選したとのメールがスマートフォンに何度も届くので、本当に当選したかもしれないと思いメールを返信した。
『当選金を受け取るには登録料として1万円がかかるが、後から当選金と一緒に返金される』と言われ、プリペイド型電子マネーのギフト券をコンビニで購入し、ギフト券の番号を写真に撮って返信した。
その後、『当選金を受け取るために手数料2万円を支払う必要がある』とのメールが来た。さらに3日後には『銀行の振込手数料として2万円が必要』と言われ、またギフト券を購入して番号をメールで伝えた」
(2017年3月受付、60代男性、給与生活者、埼玉県)
●「アドレス変更しました」から始まった高額請求
「携帯電話に『アドレス変更しました』とメールが届いた。『誰かと間違っていませんか』と親切心でメールをしたところ、『せっかくなのでアドレス交換しましょう』と若い男性の写真が送られてきた。
意味が分からなかったので返信せずにいると、URLが載ったメールが届き、何かのサイトに登録になった。相手とアドレス交換するにはポイントが必要と言われたが、そのポイントが意味するものが何なのか全く分からないまま、相手の指示通り1万円を振り込んだ。
その後『まだまだポイントが足りない』と言われ、3万円を振り込みした。メールのやり取りをしている最中に『詐欺ではないか』と送ったが、「そう思うなら90万円でも 100万円でも振り込め」と強く言われ、怖くなった。
その直後、さらに20万円の請求を受けたが、『そんなに高額な振り込みはできない』と話したところ、『20万円が無理なら10万円を振り込め』と言われた」
(2017年3月受付、60代女性、無職、秋田県)
上記のような場合、返金を求めることは可能なのだろうか。大村真司弁護士に聞いた。
●任意の返金はまずない
返金を求めることは可能なのか。
「詐欺は立証が難しいことも多いですが、今回の事例は立証するのに問題はないでしょう。このため、法律的には、返金を受ける権利があります。
ただ、加害者も、詐欺だと百も承知でやっているので、任意の返金はまずありません。あらに、不正に入手した他人名義の口座に振り込ませるなどしており、警察に逮捕されるケースも多くありません。強制的に回収をしようにも、その口座のお金を当てにするしかないのです」
●回収は難しいケースが多い
口座にお金が入っていれば、返金は望めるのか。
「ある程度の金額の被害があり我々が依頼を受ける場合、金融機関に対し犯罪収益移転防止法に基づき口座凍結を求めることになります。しかし、たいていの場合入金があるとすぐに払戻され口座残高がほとんどない状態です。
少し事例が異なりますが、雑誌で大々的に広告するギャンブル必勝法詐欺などでは、その口座を継続的に使いたいが故に返金をしてくる業者もあったようです。しかし、事例のような迷惑メールのケースでは、その口座を捨てて他の口座を入手するケースが多いでしょう。このため、たまたまお金があるタイミングで凍結されない限り、回収は難しいケースが多いのです」
法律的には権利があっても、実際に返金が期待できるかは難しそうだ。
「はい。また、1度引っかかった相手を狙った手口も多いですから、このような被害に遭った人は、再びだまされることのないよう注意しなければいけません」