交際を断られた女性(21)の自宅敷地内に針の刺さった「わら人形」のようなものを置いたなどとして、私立高校非常勤講師の男性(37)がストーカー規制法違反の容疑で逮捕された。
報道によると、男性は2016年8月から11月にかけて、女性の携帯電話にメールを送るなどして、警察から警告を受けていたのにもかかわらず、女性宅に人形を置いた疑いがもたれている。人形は長さ約7センチで、胸に針を1本刺し、顔には女性の写真が貼ってあった。一方で、男性は「わら人形のようなものは置いていない」と容疑を一部否認している。
わら人形を置くという行為は、なぜストーカー規制法違反にあたると判断されたのか。宇田幸生弁護士に聞いた。
●どんなケースが「つきまとい」にあたるのか?
「わら人形を自宅に置くという行為は、ストーカー規制法で禁止されている『つきまとい行為』の一つに該当する可能性があります」
宇田弁護士はこのように述べる。どんなケースがあたるのか。
「まず、(1)特定の相手に対する恋愛感情や、その恋愛感情が満たされなかったことに対する怨恨の感情を満たす目的で、(2)同法2条1項各号に定められた行為をすることが『つきまとい行為』にあたります。
そして、この行為を繰り返すと『ストーカー行為』にあたります(同法2条3項)。『ストーカー行為』を行った者には、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科されます(同法18条)。
一方、実際に『つきまとい行為』を繰り返すまでには至っておらず、『ストーカー行為』とまでは言えない場合であっても処罰される可能性はあります。
例えば、都道府県公安委員会から『つきまとい行為』をしないように禁止命令が出ているにもかかわらず(同法5条)、これに違反したような場合です(同法19条、20条)」
今回のケースはどう考えればいいのか。
「今回のケースでは、加害者の行為が『ストーカー行為』に該当して逮捕されたのか、あるいは、『ストーカー行為』には至らないものの、禁止命令に違反したために逮捕されたのか等、詳細は不明です。
しかし、少なくとも、わら人形を女性宅の敷地内に置く行為が『つきまとい行為』に該当しうることは争いがないと思われます。
同法では『汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知りうる状態に置くこと』も『つきまとい行為』の一つに挙げられています(同法2条1項6号)。
被害者宅にわら人形を置くことは、まさにこの条項に該当すると考えられるでしょう
また、今回、仮に同法が成立しない場合であっても場合によっては、刑法の脅迫罪が成立する可能性もあるでしょう。
ストーカー規制法は、多くの被害実情を受けて、規制を強化すべく改正が繰り返されてきた経緯があります。
2017年1月3日より改正法の一部が施行され、SNSを利用した場合も『つきまとい行為』に加えられると共に罰則が強化されたのは記憶に新しいところです。本件もストーカー行為を決して許さないという捜査機関の強い意思が表れているのではと思われます」