未成年ならともかく、成人した子どもの問題行為に対して、親はどう対応するべきなのだろうか。「26歳の息子が、私の無断で(自宅に)入って、車のキーや通帳、クレジットカードを盗みました。被害届を出した方がいいのか考えています」。そんな母親の悩みが、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
息子の問題行為は、窃盗だけではない。「気に入らないと、キレて暴れたりします。何度も壁に穴をあけたり、家具をひっくり返して下の子供が下敷きになった事もあります」。
母親が部屋に鍵をつけても、鍵をこじあけ、侵入して窃盗をはたらくようだ。「もう我慢が出来ません」という家族は、何ができるのだろうか? 長瀬佑志弁護士に聞いた。
●窃盗の刑事責任は追及できないが・・・
「警察に被害届を提出することは可能です。もっとも、親子間や同居の親族間での窃盗の場合、親族間の犯罪に関する特例(刑法244条)が適用され、犯罪ではあるものの、刑罰は科さないということになります。
したがって、被害届を警察に提出することは可能ですが、家族間で解決するよう促され、被害届が受理されないことが予想されます」
強制的に弁償させる方法はないのだろうか?
「刑事責任を追及することは難しいですが、息子に対する民事責任の追及は別の問題です。
家族であっても結局は他人ですから、息子の窃盗等に対し、不法行為責任に基づく損害賠償請求を行うことは可能です」
相談者は、息子の暴力にも悩まされているようだ。実の息子であっても、立ち入り禁止にすることはできるのだろうか?
「その場合には、民事手続と刑事手続の2つが考えられます。
民事手続として、穏当な方法としては、裁判所に対し、親族間の紛争に関する調停を申し立てる方法があります。もっとも、調停はあくまでも、話し合いによる合意ができなければ成立しません。
また、緊急性が高い場合には、裁判所に対し、息子の接近禁止等の仮処分命令を申し立てる方法があります。
一方、刑事手続として、息子から脅かされたり、暴力を振るわれたりした場合には、脅迫、傷害事件等として告訴することが考えられます。
この場合、警察に対応してもらいやすくするよう、被害状況を写真でとるほか、病院を受診し診断書を作成してもらい、証拠を残しておくようにしておくとよいでしょう」
長瀬弁護士はこのように指摘した。