欠陥住宅問題のスペシャリストとして、消費者事件に注力
恩師の言葉がきっかけで弁護士を目指す
ーー弁護士を目指されたきっかけや理由を教えていただけますでしょうか?
大学の民法の先生の影響が大きいです。非常にわかりやすく、興味深い講義や話をしてくださり、とても感銘を受けて、法律に興味を持ちました。
先生に聞いた話の中で、特に印象深い言葉があります。「法律をどのように使うかは、その人の考え方や生き方に関わってくる問題です。法律を強い立場の人のためか、弱い立場の人のためか、どちらに使うかといえば、自分は弱い人のために使う」。先生の言葉に強く影響を受け、法律を扱う仕事をしたいと思いました。
裁判官でも弱い立場の人を救うことができると思います。でも、法廷を通じてでしか事件に関わることができない裁判官よりも、直接依頼者と会って事件に取り組める弁護士の方が自分には合っていると思い、弁護士を志すことにしました。
ーー注力分野とその分野に注力している理由を教えていただけますでしょうか?
長年ライフワークとして消費者事件に注力してきました。中でも欠陥住宅に関しては、ここ20年くらい特に注力している分野です。
欠陥住宅の典型的なケースは、施工会社の手抜き工事など、何らかの欠陥が後から明るみになることです。欠陥住宅の問題に対応するには、建築の専門知識が必要になるので、建築士の協力が不可欠です。建築士と一緒に建物を見て、問題点を把握して、どのように争っていくか、何を要求していくかを詰める作業をしています。
欠陥住宅被害の予防や回復を目的に、東海地方の弁護士や建築士、消費者によって結成された「欠陥住宅被害東海ネット」という団体にも参加しています。
ーーそもそも手抜き工事というのはどうして起こるのでしょうか?
一つには、建築業界の重層的な下請け構造に原因があります。二次、三次下請けとなると、下請け業者にまで回ってくるお金が少なくなるため、工事の質も低下する傾向があります。 また、管理責任が曖昧になり、現場を管理する建築士が不在であったり、現場もいい加減な作業をしたりします。安い労働力を求めるあまり、職人的な高い技術を持つ人も減ってきているということもあります。
個々の事件を解決することはできますが、欠陥住宅問題を根本的に解消することは困難です。法整備をはじめ、いろいろな対策がされていますが、残念ながら欠陥住宅問題がすべて解消する状況には至っていません。
ーー時代とともに消費者事件にも変化はありましたか?
インターネットを利用したものや決済代行など、次から次へと新しい手口が登場するので、理解して対応していかなければなりません。ですが、実は詐欺の仕組みそのものは今も昔も変わらず、同じようなことの繰り返しなんです。
インターネットショッピングで、「初回無料」など、お得だと思わせて実は違うというケースがあります。騙すことを目的としているものは、丹念に見ればたいていわかります。被害に遭わないためにも、安いからといってすぐに判断するのではなく、本当に信用できるのか確認してほしいです。
すぐに「無理」と判断しないで依頼者の話を丁寧に聞く
ーー仕事をするときに心がけていることは何でしょうか?
依頼者の話をよく聞くということですね。依頼者の望む解決が難しいケースであっても、すぐ「これは無理だ」と判断しないで、時間をかけて丁寧に話を聞いて、できる方法などを一緒に考えたいと思っています。
また、依頼者が安心して話しやすいように穏やかな雰囲気を作ること。それから、わかりにくい法律用語をわかりやすく説明するように常に心がけています。
ーー弁護士として印象的だったエピソードを教えてください。
成功したケースで依頼者に喜ばれることは、弁護士としてはもちろん一番ありがたいです。ですが、苦労しても、あるいは一生懸命やってもうまくいかないときがあります。
そのようなとき、依頼者は非常に残念だと思うのですが、それでも感謝の気持ちを示してくださることがありました。よい結果でなくて本当に申し訳ないと思いながらも、感謝していただけることに対して、ありがたいと強く思いました。その依頼者が後日、別件で相談にきてくださったときは非常にうれしかったです。弁護士をやっていてよかったなと思いました。
ーー先生の強みはどんなところでしょうか?
欠陥住宅の問題は、建築士が協力してくれるようになったので、以前と比べたらやりやすい環境になっています。それでも、この分野の事件を扱うことを躊躇する弁護士は少なくありません。そんな中で、欠陥住宅の問題を専門として取り組んでいるところは強みだと考えています。
担当事件をきっかけに生まれた韓国との交流
ーー休日の過ごし方や趣味について聞かせてください。
街に出てぶらぶらと買い物をしたり、最近はあまりできてないですけど、旅行や登山をしています。以前は3,000メートル級の山にも登っていました。司法修習のときに登山に誘われる機会があって山が好きになりました。
また、韓国の文化に興味があり、韓国語の勉強をしています。20年以上前になりますが、担当した事件で韓国に行ったことがきっかけでした。韓国は日本と共通点もあれば、まったく違う点もあって、すぐ近くにこんな国があるんだと興味を持ちました。
実は、韓国の弁護士会と愛知県の弁護士会は10年以上の交流があるんです。多重債務問題に取り組んでいる弁護士同士の意見交換やシンポジウムなどを行っています。また、貧困問題やホームレス支援に取り組んでいる市民団体と交流もしています。そのように、仕事でも韓国と交流する機会が増えました。
他には、陶磁器収集を趣味にしています。昔から陶磁器が好きで、旅行に行くとその地方の陶磁器を購入していました。随分集めてもう置き場がないので、最近は購入を控えています。
ーー最後に、今後の展望と、法律トラブルを抱えて悩んでいる方にメッセージをお願いします。
一つ一つ、丁寧に事件に対応して信頼を得られるように努力していくしかないと思っています。一人一人の相談者に寄り添っていきたいと思います。
費用の不安や「こんなことを相談してもいいのだろうか」と考えて、弁護士に相談することを躊躇する方がいるかと思います。法律の専門家に相談することで、簡単に解決できることもあります。簡単でない場合でも、より良い解決を図ることができますので、一人で悩みを抱えてその場に留まるのではなく、気軽に弁護士に相談してほしいと思います。