民事介入暴力や交通事故を中心に、マチ弁としてさまざまな依頼に対応
弁護士と僧侶の二足のわらじ
ーー弁護士を目指したきっかけを教えてください。
実家がお寺で、私は長男坊。親からは「あなたはお寺をやるんだよ」という感じで育てられてきたので、サラリーマンになることは考えていませんでした。高校生の頃に読んだ小説がきっかけで弁護士に興味を持ち、弁護士であれば寺をやりながらでもできると思い、弁護士を目指すことにしたんです。
弁護士になってみると、想像してた以上に忙しく、寺は弟が継いでくれることになりました。私は弁護士をしながら、ときどき寺の手伝いをしています。
ーーどんな学生生活でしたか?
大学ではテニスサークルに入り、テニスやスキーなどして遊んでばかりいましたね。親から「勉強しないのか」と言われて、「大学卒業したら勉強するから、大学4年間は好きにさせてくれ」と答えていました(笑)。
卒業後は、予備校に入って司法試験の勉強に取り組みました。当時はまだ司法試験の受験も牧歌的な空気もあり、午前中は寺の手伝いをして、午後は予備校に通う。そんな生活を送っていました。
交通事故と「ミンボー」に注力、警察と連携して特殊詐欺の予防活動も
ーー現在の注力分野を教えてください。
いわゆるマチ弁として、一般民事のご相談を多くいただきます。そのなかで特に力を入れているのは、交通事故や民事介入暴力、特殊詐欺の分野です。
交通事故関連のご相談は、縁あって交通事故紛争処理センターの斡旋弁護士をしていたことから、交通事故の慰謝料請求など多数対応してきました。
民事介入暴力は、かれこれ20年続けている分野です。ミンボーとは、暴力団や反社会的勢力が民事上のトラブルに介入し、違法行為などして不当な利益を得ることを言います。
弁護士として専門分野を作りたいと思っていたときに、親しい先輩がミンボーを担当していて誘ってくれたんです。ミンボーの世界に行ってみたら、どっぷりハマったという経緯です。民事介入暴力対策委員会に所属し、日本弁護士連合会や中部弁護士会連合会とのネットワークを活かして全国の情報を入手しながら活動をしています。
ーーミンボーは具体的にどのような仕事なのでしょうか?
ミンボーというと、テレビや映画の影響から、「切った張った」の世界をイメージされる方が多いかもしれません。時代や法律の変化によって、依頼や対応の仕方も変わってきています。
1992年に暴力団対策法が施行され、最近の改正で、末端の構成員が損害を与えた場合や特殊詐欺をした場合に、暴力団のトップである組長に責任を求めることができるようになりました。
以前は、街宣車での嫌がらせなど、相手側の攻撃を抑える仕事がメインでした。しかし最近は、みかじめ料の返還を請求する訴訟や、特殊詐欺の被害にあった方の被害回復や損害賠償請求などが中心になっています。
ーー最近増えている「特殊詐欺」にはどのように携わっていますか?
愛知県警と情報交換を行いながら、予防や啓蒙に力を入れています。例えば、高齢者が1日に振り込める限度額を引き下げることを金融機関に提案したり、地域のコミュニティセンターで寸劇をしたりして、詐欺の周知活動をしています。
弁護士は事後救済が多くなってしまいますが、事件を起こらないようにする「予防」にどのように関わっていくかが課題だと思っています。警察と連携しながら今後さらに取り組んでいく必要がある分野です。
また、被害者の被害回復にも携わっています。愛知県警が振り込め詐欺グループを検挙した際には、警察から被害回復の話を聞かされた被害者が依頼に来ます。他には、被害にあったことを誰にも話せず悩んでいる方が相談に来ることもあります。
特殊詐欺は反社会的勢力が絡んでいることが多く、ミンボー対策で培った経験やノウハウも活かして対応しています。
ーーお仕事をされるうえで、心がけていらっしゃることは何ですか?
対応や報告を迅速に行うことですね。依頼者さんを不安にさせないように、「もうちょっと時間をくださいね」などの報告もこまめにするように気をつけています。
ーー僧侶としての経験が、弁護士活動に役立っていると感じることはありますか?
僧侶も話を聞くことが仕事なので、弁護士と通じるところがあるかもしれませんね。よく、「話がしやすい」「声が聞き取りやすい」と言っていただくことがあります。お経を読んでいたことが声の聞き取りやすさに繋がっているのであれば、両親に感謝しなくてはいけませんね(笑)。
ーー弁護士をされていて印象的だったエピソードを教えてください。
弁護士になって独立したころ、最高裁の判決によってグレーゾーン金利が認められなくなったことにより、いわゆる「過払いバブル」がありました。引き直し計算を行ったり、先輩の専門弁護士とともにさまざまな論点を見出したりして過払い金返還請求を行いました。過払い金返還をめぐる初期に事件を担当できたことは、非常に印象に残っています。
また、ミンボーの分野でも、反社会勢力のトップの責任を問う初期の裁判に関わることができました。それまでの制度が変わるタイミングで、初期の裁判に関われたことは、非常にやりがいがありましたね。
コロナがきっかけで料理を始める
ーー趣味や休日の過ごし方を教えてください。
最近の趣味は料理です。コロナで飲食店の営業が20時までとなり、夕食に困っていたことがあります。デリバリーも毎日は大変ですし、何より太ってしまって。「これはいかん」ということで、料理を始めました。
昨日はツナとキノコのパスタを作りました。ニンニクや唐辛子をオリーブオイルで炒めて、結構ちゃんと作っているんですよ。最初は2時間ぐらいかかっていたんですが、今は同じものでも、半分以下の時間で作れるようになりました。慣れは大事ですね。今度はビーフシチューを作ろうと思っています。
あとは、本を読むのが好きで、特に歴史小説を好んで読んでいます。司馬遼太郎は司法試験のときから読んでいて、彼の文章が気に入っています。山岡荘八の徳川家康も読みました。読むのが止まらなくなるほど引き込まれます。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
仕事は今の路線で続けていきます。ご相談を広く受けながら、ミンボーなどの反社会的勢力対応を行っていきます。
弁護士になって20年を超えました。体も頭も元気で仕事ができるのは、この先10年から15年ぐらいでしょうか。弁護士を取り巻く環境はここ10年で大きく変わっているように感じます。目の前の事件に取り組みつつ、今後のことを考えてみたいと思っています。
ーー最後に、法律トラブル抱えて悩んでいる方へ、先生からメッセージをお願いできればと思います。
「こんなことは弁護士に相談してはいけないと思っていました」。そんな言葉をいまだに耳にします。でも心配はいりません。私は、弁護士とお坊さんの両方の要素がありますので、悩まれていることをぜひお話ください。何らかの解決の道はあるんじゃないかなと思います。どうぞお気軽にご相談ください。