眠気を感じたときは昼寝で仕事の効率アップ――。このところ、就業時間の合間に「昼寝」を取り入れる企業が注目を浴びている。IT企業「GMOインターネットグループ」は、昼休みの午後0時半から1時間、大会議室にリクライニング椅子を並べて、昼寝用に開放しているという。
一方で、昼寝が理解されないケースもある。インターネットのQ&Aサイトには、「昼休憩中に寝るのはやめなさい。常識的に考えておかしい」と、休憩室での昼寝を上司から注意されたケースが書き込まれていた。別のサイトでは「来客の可能性もあるので、昼休みにオフィスで寝ている部下を注意したい」という意見も掲載されていた。
休憩中にオフィスや休憩室で昼寝することに、法的な問題はあるのだろうか。いびきなどの迷惑をかけなければ、労働者の自由ではないだろうか。近藤麻紀弁護士に聞いた。
●「休憩時間中の仮眠」について裁判所の判断は?
「休憩中に昼寝することは、原則として問題ないと考えます。労働基準法34条によれば、使用者は、労働時間の長さに対応して、その途中で休憩時間を与えなければなりません。6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間が必要です。この休憩時間は、労働者が、労働から離れることを権利として保障されている時間であり、使用者が労働者に自由に利用させなければならない時間です」
たしかにそういうルールなら、自由に昼寝をさせてもらえそうだ。
「ただ、いくら労働者が自由に利用できる時間とはいえ、職場の規律を守る必要や、施設管理上の制約を受ける必要はあるでしょう。また、他の労働者の休憩を妨げないといった制約もありますね」
では、休憩時間に、静かに昼寝するのは、どうだろうか。
「職場内での休憩時間中の仮眠は、『休憩時間の自由な利用の限界を超えず、いかなる懲戒処分にも値しない』と判断した裁判例(大阪地裁判決昭和32年1月25日)があります。
オフィスや休憩室で、他の労働者の休息を妨害しないように昼寝をする程度で、なおかつ、休憩後の業務にも支障がないのであれば、制約が必要だとは考えにくいでしょう」
来客があるオフィスでの昼寝は、制約を受けるだろうか。
「お客様が出入りする場所ですと、社員が昼寝をする姿が見えないよう配慮する必要性は考えられますね。ただ、オフィスで一律に休憩時間中の昼寝を禁止するよりは、まず会社側が、お客様から見えにくい休憩場所を確保するといった、環境整備を検討する必要があるのではないかと考えます」
20分程度の昼寝は、いいリフレッシュになる。職場の「昼寝環境」を整えることは、労働者にとっても、会社側にとっても良いことではないだろうか。