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退職代行サービス利用も「引き継ぎのために出社して」 辞めるためには行かなきゃダメ?
画像はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

退職代行サービス利用も「引き継ぎのために出社して」 辞めるためには行かなきゃダメ?

近年利用が広がっている「退職代行」サービス。辞めようとする本人が退職の意思を直接伝えずに済むことなどが特徴だが、会社側から「辞めるにしても一度は出社して」と言われるケースがあるようだ。

弁護士ドットコムに相談を寄せた女性も「もう会社と関わりたくないから退職代行を利用したのに、会社に来てほしいと言われる」という。

相談者は、弁護士による退職代行を利用し、当初は退職手続きを進めてくれないなど一悶着あったが、最終的には会社側から「退職を認める」旨の書面をもらえた。

しかし、書面には「私物の引き取りや書類確認などの事務手続き、および不十分な引き継ぎを完了させるために来てほしい」という会社側の要望も書かれていたという。会社に行ってイヤな目に遭うことを心配する相談者としては、行かずに済ませたいと考えているようだ。

退職代行サービスを利用した場合でも、会社側から退職にともなう手続きが必要と言われた以上行かなくてはいけないのだろうか。退職代行サービスに詳しい小澤亜季子弁護士に聞いた。

●弁護士との契約次第で、退職に伴う諸手続きについても代行可能

――相談者は弁護士による退職代行サービスを利用していますが、一切の退職手続きを弁護士による代行で完結させることができるのでしょうか。

それぞれの弁護士との契約内容によると思います。

私が退職代行を行う場合は、退職の意思表示はもちろん、退職に伴う諸手続きについても、弁護士が行うこととしていますが、中には退職の意思表示のみを受任する弁護士もいるのかもしれません。弁護士と契約する際に、契約内容を確認するとよいでしょう。

ただし、契約上、退職に伴う諸手続きは弁護士が行うこととしている場合であっても、何らかの事情により、従業員ご本人が出社することもあります。

●会社側の出社要請にも柔軟に対応可能

――今回のケースでは、「私物の引き取り」「書類確認などの事務手続き」などを理由に会社に来てほしいと言われているようです。

「私物の引き取り」については、私が受任した場合、会社に廃棄してもらうか、会社から郵送してもらうことが多いです。

ただ、従業員の私物と会社の備品が混同しており、どうしても従業員本人が会社に行って選別しないといけないといったような場合には、弁護士と従業員本人が一緒に会社へ私物の引き取りに行くようなこともあります。

「書類確認などの事務手続き」についても、私が受任した場合、会社から書類を郵送してもらい、疑問点などあれば弁護士を介して会社に質問することが多いです。

もっとも、直属の上司に会うのは避けたいけれども、人事総務の方であれば会っても問題ないとか、むしろ退職手続上の疑問点について、自ら人事総務の方に面前で教えてほしいというような場合には、従業員本人に出社してもらうこともあります。

――「仕事の引き継ぎ」という理由についてはどうでしょうか。

たしかに就業規則等で退職時の引き継ぎ義務が定められている場合、従業員は引き継ぎを行わなければなりません。ただし、引き継ぎの方法については、出社して行う方法に限られないと私は考えています。

出社以外による引き継ぎが一定程度評価された一例として、弁護士を通じて退職願を提出し、対面の引き継ぎを行わなかった等の理由により、退職金を支払われなかったことが争われた裁判が挙げられます(東京地裁令和元年9月27日判決、インタアクト事件)。

この裁判では、「(原告が)対面による引継行為を敬遠したことには一定の理由がある」とした上で、代理人弁護士を通じた“書面による引き継ぎ”をするなどしており、「勤労の功を抹消してしまうほどの著しい背信行為があったとは評価できない」と判断されました。

弁護士による退職代行サービスを利用する際には、引き継ぎの方法についても事前に相談してみるとよいでしょう。

プロフィール

小澤 亜季子
小澤 亜季子(おざわ あきこ)弁護士 センチュリー法律事務所
事業再生・倒産を主力業務とする法律事務所に入所。実弟の突然死や自身の出産・育児などを経て、2018年退職代行サービスを開始。労使双方の立場から、労働トラブルを取り扱っている。育休プチMBA認定ファシリテーターとして、育休取得者の支援も行う。

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