「バイトの内容がブラックすぎて逃げました」。都内の大学に通うMさんが、過去の体験を振り返る。手軽に始められると思い、イベント設営の日雇い派遣の登録に出向いたところ、説明を聞いて唖然としたそうだ。
仕事で着るユニフォームを2000円払って購入しないといけない上に、時給を950円から1000円にアップさせるための条件が、ヘルメットや靴など、工具の購入だった。さらに、給料の振込手数料も負担することを求められた。
Mさんは「これでは1回分のバイト代が全て飛んでしまうと思いました」と語る。この会社のように、業務に必要な物品の購入や必要経費の負担をバイトに義務付けることは問題ないのだろうか。黒栁武史弁護士に聞いた。
●自己負担には労働契約上の根拠が必要
業務に必要な作業用品などは、会社が費用を負担することが一般的であると思いますが、従業員に自己負担させることが当然に違法となるわけではありません。
ただし、従業員に自己負担させるためには、労働契約上の根拠が必要となります。会社が就業規則の作成義務を負う場合(常時10人以上の労働者を使用する場合)であれば、会社はあらかじめ就業規則に作業用品などの負担額などを記載し、労働基準監督署長への届出や従業員への周知などの手続きを経る必要があります。労働契約上の根拠がなければ、従業員は自己負担を拒否することができます。
なお、自己負担の根拠があっても、会社が自己負担額をバイト代から控除して支払うことは、賃金全額払の原則(労働基準法24条1項)に反し、原則として許されません。振込手数料の控除についても同様です。
また、バイト代と比べて、相当高額な負担を義務付けるような場合は、たとえ就業規則に根拠があったとしても、「合理的な労働条件」(労働契約法7条)とは認められないとして、自己負担を拒否できる可能性もあると考えられます。