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瀬戸大也さん性的デマ画像が拡散、どんな罪? 声明で「捏造」と強く否定
瀬戸大也さん(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

瀬戸大也さん性的デマ画像が拡散、どんな罪? 声明で「捏造」と強く否定

競泳の瀬戸大也さんが8月13日にX(旧Twitter)に声明を投稿し、SNS上に広がった情報を事実無根だとし、法的措置に向けて動いていることを明かした。

瀬戸さんとされる人物がSNSのDMで女性と卑猥なやりとりをするスクリーンショットや、性的な部位をうつした画像が拡散していた。瀬戸さん側はこれらの情報を「捏造」と断言。画像を投稿したり、拡散したりすれば、どのような罪に問われる可能性があるのだろうか。

●瀬戸さんになりすまして卑猥なやりとりを投稿

瀬戸さんのチーム「TEAM DAIYA」がXに投稿したのは、以下の内容だ。

「只今SNS上で、瀬戸大也に関する猥褻な画像、DMのやり取り等が拡散されております。また、この画像を使い有料のアダルトサイトへと勧誘する悪質なアカウントが多数発見されております。こちらの画像、及びやりとりは本人とは全く関係のない事実無根のデマであり、悪意を持って捏造された画像です」

そして、「現在警察への被害届の提出、法的措置の準備を行っております」と注意を呼びかけた。

インターネットの問題に詳しい清水陽平弁護士によれば、瀬戸さんになりすまして女性と卑猥なやりとりをするDMのスクリーンショットをSNSに投稿したり、瀬戸さんのものとされる性的画像を投稿したりすることは、法的問題があるという。

⚫️名誉毀損罪に該当しえる

——こうした画像を捏造し、SNSに投稿することはどのような罪に問われる可能性がありますか

画像の捏造が直ちに違法になるわけではありませんが、捏造された画像が人の名誉を毀損するようなものであれば、名誉毀損罪に該当する可能性があります。

今回は「DMという形での事実摘示」がなされているため、侮辱罪より罰則の重い名誉毀損罪が問題とされます。法定刑は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」です。

名誉毀損罪は、人の社会的評価を低下させるものについて成立し得ることになります。今回拡散された内容は、卑猥なDMのやり取りをしているかのように加工されたものですが、卑猥なDMのやり取りをしているということ自体で評判を落とすという側面があります。

そのため、今回の内容は名誉毀損罪に当たり得るといえます。

また今回の内容は、民事上でも名誉毀損(名誉権侵害)ということができますし、私生活上の事実らしく受け取られる点において、プライバシー権侵害の問題ともいえます。

投稿した者の特定ができれば、これらの権利侵害を理由に、当該人物に対して慰謝料等の支払いを求めていくことが可能です。

——リポスト(旧リツイート)などで、投稿を拡散した者にも、刑事・民事上の法的責任があるのでしょうか

拡散した者が民事上責任を負うかどうか判断をした裁判例があります(大阪高裁令和2年6月23日判決)。

その判決に基づけば、たとえば「これはデマだ」といったコメントを添えて拡散するような場合は、「表現の意味内容が変容したと解釈される特段の事情」があり、責任はないとみられそうですが、ただリツイートしただけの場合には責任を負うと判断される可能性は高そうです。

また、刑事責任を負うかについては、自分が認識している限り、明確に判断している例はありません。ですが、基本的には民事のものと同じように解釈することが可能です。そのため、安易な拡散は避けるべきでしょう。

【大阪高裁令和2年6月23日判決】
「単純リツイートに係る投稿行為は、一般閲読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、元ツイートに係る投稿内容に上記の元ツイート主のアカウント等の表示及びリツイート主がリツイートしたことを表す表示が加わることによって、当該投稿に係る表現の意味内容が変容したと解釈される特段の事情がある場合を除いて、元ツイートに係る投稿の表現内容をそのままの形でリツイート主のフォロワーのツイッター画面のタイムラインに表示させて閲読可能な状態に置く行為に他ならないというべきである。そうであるとすれば、元ツイートの表現の意味内容が一般閲読者の普通の注意と読み方を基準として解釈すれば他人の社会的評価を低下させるものであると判断される場合、リツイート主がその投稿によって元ツイートの表現内容を自身のアカウントのフォロワーの閲読可能な状態に置くということを認識している限り、違法性阻却事由又は責任阻却事由が認められる場合を除き、当該投稿を行った経緯、意図、目的、動機等のいかんを問わず、当該投稿について不法行為責任を負う」

プロフィール

清水 陽平
清水 陽平(しみず ようへい)弁護士 法律事務所アルシエン
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となっている。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。

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