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「住人が夜逃げした」悩める大家がSOS…10カ月も家賃滞納、連絡つかず 契約解除はできるのか?
画像はイメージです(Graphs / PIXTA)

「住人が夜逃げした」悩める大家がSOS…10カ月も家賃滞納、連絡つかず 契約解除はできるのか?

夜逃げした住人の部屋を原状回復したい、という大家からの相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

入居者は約10カ月家賃滞納をしていますが連絡がつかず、部屋にいる様子もないようです。

相談者によると、不動産屋や保証会社を通さず個人間で貸しているため、契約書がなく保証人もいないといいます。

家賃の回収ができないとしても、せめて家財をすべて出してもらい、次の人に貸せるよう原状回復をしたいようですが、どのように対処すれば良いのでしょうか。関戸淳平弁護士に聞きました。

●まずは夜逃げした人の状況を確認

ーーこのケースで最初にすべきことは何ですか?

まずは可能な範囲で状況確認を行います。本件では難しそうですが、緊急連絡先を把握している場合や保証人がいる場合には、まずはそこへ連絡することが考えられます。

また本人の住民票を調査して、異動がないかどうかを確認します。郵便ポストや電気・ガスメーターの状況も念のため確認をします。

住民票から転居先が確認できれば、そちらへと連絡を取ることになりますが、異動していない場合には「行方不明」であることを前提に次の手段を考えます。

●今回の夜逃げで契約解除は認められる

ーー賃貸借契約を解除したり、建物の明渡しを求めたりするにはどんな条件が必要ですか?

契約を解除するには賃借人の債務不履行が要件となります。また、債務不履行があってもそれがお互いの信頼関係を破壊するとまではいえないような場合には解除は否定されることがあります。

しかし、本件では滞納額は既に10カ月以上に及んでいますし、「夜逃げ」によって帰来する見込みもない状態ですから、解除は認められるでしょう。

解除の意思表示(及びそれに先立つ催告)は、訴状によって行うことが可能です。

訴状は賃借人に直接交付する方法が原則ですが、行方不明の場合には、いつでも受送達者に書類を交付する旨を裁判所に掲示する「公示送達」の方法で行うことが可能です。

明渡請求を認める判決が出たら、それをもとに強制執行を実施します。

以上の手続きには費用がかかるため、ためらわれる方も多いのですが、放置をしておいても事態が改善することはありませんので、損害を最小限に抑えるためにも早期の着手をお勧めします。

●トラブル防止には連帯保証人と緊急連絡先の確保を

ーー再発防止には何に注意すればいいですか?

万一の際に備え、契約締結時に連帯保証人をつけ、緊急連絡先も把握しておくと良いでしょう。

また、賃料滞納が生じた場合には早期に督促や状況確認を行うなどして、事態の悪化を防ぐようにします。

なお、本来、連帯保証人は、賃借人の金銭債務を保証するにとどまり、契約の解除や明渡し自体を行うことはできません。

しかし、賃料滞納への対策として、(1)連帯保証人に契約を無催告解除できる権限を与えたり、(2)賃借人の帰来が見込めない場合に物件の明渡しがあったものとみなすことができる旨の特約を設けたりする例が見受けられます。

もっとも、このような特約は効力が争われるリスクがあり、動産の処分などを独断で進めると民事上・刑事上の責任が問われる可能性もあります。

このような特約が消費者契約法に違反するとした最高裁の判例もあります。

ですので、特約を設けるとしても実際の運用については極めて慎重に行うべきです。安全・確実に処理をするには、前述のような法的手続きによるのが原則となります。

プロフィール

関戸 淳平
関戸 淳平(せきど じゅんぺい)弁護士 横浜ユーリス法律事務所
中央大学法学部卒。2004年弁護士登録(横浜弁護士会)。2009年より横浜ユーリス法律事務所パートナー。不動産売買、賃貸、マンション問題、相隣問題等、不動産に関連する事件を数多く手がけている。

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