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昭和天皇モデルの「不敬映画と書かれた」 ピンク映画の監督らが新潮社を提訴
荒木太郎さん(左)と今岡信治さん(2020年11月11日/弁護士ドットコム撮影)

昭和天皇モデルの「不敬映画と書かれた」 ピンク映画の監督らが新潮社を提訴

公開中止にされたピンク映画について、事実と異なる記事を掲載されたことで、名誉を傷つけられたなどとして、映画を制作した監督と脚本家が、配給の大蔵映画と、記事を掲載した新潮社を相手取り、計990万円の損害賠償と謝罪広告の掲載をもとめて提訴した。その第1回口頭弁論が11月11日、東京地裁であり、被告側はともに請求棄却をもとめた。

●ピンク映画『ハレンチ君主いんびな休日』を制作した

原告は、映画監督・脚本家の荒木太郎さんと脚本家の今岡信治さん。

訴状によると、荒木さんは2017年9月ごろ、大蔵映画側から委託を受けて、ピンク映画『ハレンチ君主いんびな休日』の制作をはじめた。ストーリーは、ある国の王様が旅に出る中で女性記者と出会い、君主としての自覚に目覚めるというものだったという。

大蔵映画側の担当者も同席した二度の試写を終えて、さらに映画倫理委員会の審査も通過したが、劇場公開予定の2018年2月16日の前日夜、十分な相談・協議もないままに、上映権限をもつ大蔵映画側が突然、公開延期にしたという(その後、公開中止となった)。

その経過について、同年2月28日発売の『週刊新潮』が「不敬描写で2月公開が突如延期!『昭和天皇』のピンク映画」と題する記事を掲載した。

●原告側は慰謝料をもとめている

こうした状況を受けて、原告側は今年9月、大蔵映画と新潮社を相手取り、東京地裁に提訴した。

原告側は、新潮社に対して、(1)『週刊新潮』の記事内容は事実と異なり、名誉毀損にあたる、(2)同意なく公開前の映画の脚本の一部が掲載されたことは、著作者人格権の侵害にあたるとして、慰謝料と謝罪広告の掲載をもとめている。

また、大蔵映画に対しては、(3)『週刊新潮』に対する事実と異なる回答が、記事に掲載されたことで名誉が毀損された、(4)公開が翌日に迫る中で相談・協議なく中止となり、映画が公開されるという「期待権」が侵害されたとして、慰謝料などをもとめている。

●原告側「非常に誠実に物語を作った」

この日の口頭弁論後、原告と代理人が東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。

荒木さんは「今までこの業界で長くやって来た。『やってはいけないことは、やってはいけない』という思いと、今私がここで黙っていたら、第二、第三の被害者がでてくるのではないか、そのことで自由な映画作りが脅かされるんじゃないか、これが通ったら何でもありじゃないか、という危機感をすごく抱いた」と語った。

今岡さんは「ピンク映画ではあるが、非常に誠実に物語を作った。誰も何も見ていないのに、そのことについて論じている、存在しないものについてものを言っていることは、変だなと思う。結局、上映がされていないというのは、なかったことにされてしまうことだ。本当に作品としては不幸だと思う」と話した。

代理人の長尾宣行弁護士によると、作品の中では、昭和天皇を明示・特定して描いているわけではないという。長尾弁護士は会見で「昭和天皇を彷彿とさせる設定は、見た人の中であるかもしれないが、昭和天皇を貶めたり、意図的に侮辱する内容にはまったくなっていない」と述べていた。

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