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車内に一晩放置した「鮭」を夫に食べさせ、激しい食中毒に・・・もし死んだら犯罪?
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車内に一晩放置した「鮭」を夫に食べさせ、激しい食中毒に・・・もし死んだら犯罪?

妻が作った「鮭のムニエル」を食べたら食中毒になったという男性が、ネット上の掲示板に妻への怒りの気持ちを投稿した。その鮭は、車内に一晩放置されていたという。

男性によると、ムニエルを食べた後から猛烈な吐き気と腹痛、下痢に襲われ、救急救命外来へ。食中毒のため、病院で一泊するはめになったそうだ。

病院からの帰り道、驚きの事実が判明する。妻によると、その鮭は買った後にバッグから落ちて、車の中で一晩放置されていたというのだ。「加熱したら大丈夫かなって思ったんだけどダメだったみたいね」と爆笑しながら明かされたという。男性の書き込みから推測するに、この出来事があったのは今年の5月。暖かい日が続いていた。

「死んだらどうしてくれるんだ」と怒る男性に対して、コメント欄には「これ死んだら殺人罪に問われる?」という声もあった。今回は幸いにして一命を取りとめたが、もし男性が死亡していた場合、車内に一晩放置した鮭を食べさせた妻は、罪に問われるのだろうか。永芳明弁護士に聞いた。

●故意があったといえるのか

「もしも、夫が死ぬという結果が発生した場合、妻に故意があれば、殺人ないし傷害致死が成立することが考えられます。故意が無い場合は、過失致死の成立が考えられます」

永芳弁護士はこのように述べる。

「妻に故意があるかないかを判断するにあたって、まず、『加熱したら大丈夫かなって思ったんだけど』という発言の意味を考えることになります。

この発言の意味が、『もしかしたら大丈夫じゃないかもしれない、死ぬかもしれない、でも死んでも構わない』と考えていたなら、未必の故意(殺意)があり、殺人罪が成立すると考えられます。また、死の結果まで考えなくても『具合が悪くなるかもしれないけども、構わない』と考えていたなら傷害の未必の故意があり、傷害致死罪の成立が考えられます。

しかし、具体的な鮭の状態にもよりますが、今回の事例では『加熱したら大丈夫かな』と思える程度だったということですから、妻が『死んでも構わない』『具合が悪くなっても構わない』というまでの認識を持っていたとは考えにくいでしょう」

妻に故意がなかったとすると、どうなるのか。

「故意ではなければ、次に可能性として考えられるのは、過失致死罪の成立です。過失とは、注意義務の違反、すなわち結果を予見し回避することができたのに、予見や回避をせずに結果を発生させることです。

今回の場合、食中毒や死亡という結果が予見できたかどうかがポイントです。一晩放置された鮭の状態がどうだったのかにもよりますが、『加熱したら大丈夫かな』という状態が、腐った臭いもしておらず、色や形も特におかしな点が無かったとすると、妻に過失があったとは言いにくいでしょう。


他方、腐敗して臭気を放つなどの異状があれば、結果の予見ができたと考えられ、過失致死が成立する場合もあると思われます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

永芳 明
永芳 明(ながよし あきら)弁護士 滋賀第一法律事務所
弁護士滋賀弁護士会・刑事弁護委員会委員長、日本弁護士連合会・刑事弁護センター委員

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