
中嶋 靖史 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
もともと普通に企業や役所に就職するのではなく、何か人と変わった仕事をしたいと思っていました。大学の法学部に進学しせっかく法律を学ぶのだから、司法試験を目指そうと思ったのがきっかけです。
実際、学生のころは弁護士という言葉は知ってたものの、具体的にどのような仕事をしているのかは、ほとんど理解していませんでした。具体的に知ったのは修習生になってからです。このように、なろうと思った時はほとんど何も知らない状態でしたが、実際なってみてとてもいい仕事だと思いました。
印象に残っている案件(事件)
保護観察中の子が再び事件を起こしてしまい、少年院送致はほぼ免れないだろうと思われた少年事件を取り扱ったことがあります。
本人の努力はもちろんですが、家族の協力等もあり、在宅試験観察(すぐには処分を決めず、一定期間家庭に戻すなどして家庭裁判所調査官の観察に付すこと)となり、その結果、保護観察(既に前件で保護観察中だったので、審判としては不処分)となったという事件でした。
何度も面会に行きましたが、会うたびに変わっていく(もちろんいい方向に)少年と接していると、なんとかこの子を助けてあげたいという気持ちが日に日に強くなっていきました。
審判の結果家に帰れることが決まった時、裁判所から私の事務所まで御両親と一緒にタクシーに乗ったのですが、あの時の思いは今でも忘れません。その少年とは、今でも時々連絡をとっています。
仕事の中で嬉しかったこと
先生のおかげで無事解決がつきましたといってもらえた時が一番嬉しいですね。
修習生の指導で法律相談に修習生を同席させたことがあったのですが、その修習生に、相談に来る前の相談者の顔と、終わった時の顔がまるで違いました、すごくほっとされた表情で帰られました、といわれたことがあるんですが、相談に来られる方は、何らかのトラブルを抱えて困っているわけですから、その解決の手助けに少しでもなれた時は、やはり嬉しいですし、やりがいも感じます。
弁護士になって大変だと感じること
法的なトラブルには相手方にも主張があり、それも踏まえた上での法律による解決という側面があります。したがって、自分の依頼者の主張なり希望がすべて通るとは限りません。
そのため、時には自分の依頼者を説得しなければならない場合もあります。その時説明が不足したり、やり方を間違えたりすると依頼者とトラブルになってしまう危険がありますので、どう説明すればいいか、どうすれば納得してくれるかということを常に考えながらやっているつもりですが、それがうまく伝わらない時は、ちょっと大変です。
休日の過ごし方
基本的に家でのんびりすることが多いです。遠出はあまりしませんね。出張や事務所合同の研修旅行などで、地方に行くことはありますが、家族とプライベートで旅行したのは、10年近く前になるかもしれません。
最近は燻製作りにはまっていて、ハムやベーコンなどを作っています。変わったところでは、たくあんの燻製がなかなかおつでお勧めです。また、ダッチオーブンを購入しました。これがあれば、電気やガスが止まっても、米と水さえあれば、御飯を炊くことができます。それ以外にもたいがいの料理はこれがあればできます。地震を予知して購入したわけではありませんが、心強い限りです。
弁護士としての信条・ポリシー
相談者の話を聞いてあげる、ということが大切だと思っています。法的トラブルの性質上100%の満足をえられることは、難しいと思いますが、それでもまあこの内容なら満足といってもらえるように仕事をしたいと思っております。
依頼者に対して気をつけていること
上の答えと重なってしまうのですが、やはり初めに依頼者の話をしっかりと聞くことです。
相談者の中には自分に不利となることをいわないということもありますし、そうでなくてもこんなことはいわなくてもいいと思った、ということもままあります。逆に遠慮してこんなくだらないこといっちゃいけないと思ってました、ということもあります。
そのようなことに中に実は大事なことが含まれていることもよくあります。そのため、まずは話しをよく聞くということを心がけています。
関心のある分野
倒産処理事件に関心があります。倒産は法律問題のるつぼであるという言葉がありますが、まさにそのとおりだと思います。企業にはいろんな立場からたくさんの人がかかわっています。
通常事件は基本的に1対1の関係ですが、倒産事件はそうではなく、企業に関わる多くの人をいっぺんに救うことができる仕事です。弁護士でなければできない分野ですし、まさに弁護士冥利に尽きる仕事だと思います。
また、法教育にも力をいれていて、小中高生を対象に模擬裁判を行ったり、刑事裁判の傍聴を引率したりしています。弁護士や法律、裁判などを身近なものとしてとらえてもらおうという趣旨です。
裁判員裁判が導入されたこともあり、以前に比べれば関心は高くなったと思いますが、まだまだ縁遠い存在であることは間違いないと思います。学校の授業の一環としてのものが多いですが、夏休みなどには個人単位での申込ができる企画もありますので、東京弁護士会のHPを見て頂ければと思います。
今後の弁護士業界の動向
司法試験制度が大きく変わり、それに伴ういろいろな弊害が指摘され今は騒がれていますが、いずれ落ち着いてくるだろうとは思います。弁護士の数が増えるのはいいと思いますが、急激すぎるとは感じています。
我が国の国民性からいって弁護士の数が増えたからといって、すぐに裁判の件数が増えるとは思えません。増えた弁護士を社会の中でどのように活用していくかということを考えずして、ただ弁護士の数だけ増やしてもひずみや弊害が出てくるだけだと思います。
弁護士業界だけでなく社会全体で考えていくべきことだと思います。そのようなところに弁護士がどんどん出て行けば、決して弁護士業界の未来は悲観的なものではないと思います。
今後のビジョン
私の事務所は弁護士一人の事務所ですが、これからもこのような形態でやっていきたいと思っています。共同でやるとしても少人数でと思っています。町医者のような存在でありたいと思っています。
ページを見ている方へのメッセージ
何かあったら弁護士に相談してほしい、ということを一番言いたいですね。弁護士は決して敷居が高いものではないですし、弁護士の方としてもそうあってはいけないと思います。自分もかつてそうでしたが、弁護士が具体的にどんな仕事をしているのか以外と知られていないように思います。
よく言われる刑事事件の弁護とか、離婚や相続の相談などは、弁護士の仕事のごくごく一部にすぎません。法律とは社会の隅々まで、ありとあらゆるところに張り巡らされており、それを扱うのが法律家である弁護士ですから、ありとあらゆる場所で活動できる存在のはずです。
相談に来た人からは、「弁護士さんってこんなこともやるんだ」というような声をよく聞きます。とにかく何かあったらすぐに弁護士のところへ相談に行って欲しいです。弁護士に相談することは最後に行きつくところではなく、初めに来てほしいところだと思います。
その他特記事項や伝えたいこと
法律や弁護士、法曹界は本来身近なものであり、みなさんにそう感じてほしいと思います。
法律は、空気みたいなものであって、まわりに囲まれていますが、正しく機能していれば意識することはないものです。それを意識する場面とは何か紛争に巻き込まれたときです。非日常的なことであり、かつ、望まないことであるため、つい自分とは関係のない世界のものであると考えがちなだけです。
弁護士に関わらずに生きていけるのは幸せなことですが、法律とはそういうものであるということを分かってもらいたいと思います。