「人を支えたい」強い思いを胸に弁護士の道へ〜人生を立て直し、笑顔を取り戻すための力に
自分の夢を支えてくれた人のように、自分も誰かを支えたい
ーー弁護士になった経緯を教えてください。
もともと弁護士になるつもりは全くなく、お笑い芸人を目指していました。高校卒業後すぐに養成所に通い始めたのですが、そこで痛感したのは芸人の世界の厳しさでした。
強い志を持った同期との熱量の差。とても面白いのに全く売れず、コンビを解散して芸人の道を諦める先輩の姿。厳しい現実を目の当たりにして不安に押しつぶされ、1年間の養成期間を満了することなく、養成所を中退しました。
芸人になる夢を諦めた後、ある出来事がきっかけで、ごく身近な人が、私の知らないところで、私が抱いた夢の実現を支えようとしてくれていたことを知りました。「自分がやりたいと思ったから始めて、嫌になったから辞めただけ」。私がそんなふうに考えていた夢を叶えるために、自分よりも真剣になってくれる人がいたーー。そのことに全く気づかなかった自分に愕然とし、深く落ち込みました。
何日も塞ぎ込んだ後、ふと思ったんです。自分のためだけにやろうと思ったことは、きっと続かない。ならば、自分の夢を支えてくれた人のように、人のために、人を支えられる仕事をしよう。そして、「人のためになる仕事」をしている人を考えたところ、真っ先に思い浮かんだのが、弁護士である父の姿でした。
ーー弁護士を目指し始めて、大変だったことはなんでしょうか?
そもそも勉強が苦手で、椅子にじっと座っていることもできない性分だったので、苦労したことは色々あります。
大学受験のために予備校に通っていたのですが、「入試に必要だから勉強しなさい」と言われても全然興味が湧かなくて。それでも、どうにか成績を上げようと試行錯誤する中で、意外にも芸人を目指していた頃の経験が役に立ちました。
例えば、ネタ作りでストーリーを考えるときは、見る人に伝わるよう、話の筋を論理立てて分かりやすく構成する必要があります。これを応用して、見る人を自分に置き換え、「なぜこの科目を勉強するのか」という疑問に対して論理的な理由を組み立てて自分を説得することにしました。
そういった工夫を続けるうちに勉強の習慣が身につき、しだいに成績も上がっていきました。
大学に入学してからの法律の勉強はとても楽しかったですね。弁護士になるという明確な目標があったので、法律の勉強は学問というよりも、仕事をするための技術を学んでいる感覚でした。
「今学んでいることは必ず将来に活かせて、自分の知識によって誰かを助けることができる」。弁護士になった後の展望を描きながら、司法試験合格を目指して日々机に向かっていました。
その人の人生の本が書けるくらい、話を聞く
ーー現在の注力分野とその分野に注力している理由についてお聞かせください。
いわゆる「町弁」として様々な相談を承っていますが、特に注力しているのは離婚事件と刑事事件、遺産相続です。
いずれの事件も、当事者が送ってきた人生やバックグラウンドが現在の問題につながっているケースが多いです。法律で単純に割り切れない問題もあり、一筋縄ではいきませんが、複雑な問題を紐解いて解決につなげることにやりがいを感じます。今起きているトラブルと当事者の人生がどのように関係しているのか考え、本人の希望を踏まえて、最も良い解決方法を探っていきます。
ーー仕事をするときに心がけていることを教えてください。
とにかく、依頼者の話を聞くことです。悩みの内容はもちろん、今までどんな人生を歩んできたのか、問題を解決した後はどのように生きたいのかーー。その方の人生について本を書くくらいの気持ちで、とにかく時間をかけて聞き取ります。依頼者の事情や希望を踏まえて「こういう計画で進めていくのはどうでしょう」と解決までの道筋を提案し、お互いの認識をすり合わせた上で対応を進めていきます。
弁護士にとっては数ある事件の1つだとしても、依頼者にとっては人生の一大事です。その方の人生の分岐点に立ち会い、不安な気持ちを支え、人生を立て直すサポートができるよう、1つ1つの案件に真摯に向き合っています。
不安な顔で相談に来た方が、相談後には笑顔で帰っていく姿を見たときに、弁護士の仕事ができて本当に幸せだと感じます。
ーー弁護士として活動してきた中で印象的だったエピソードを教えてください。
ある男性から、離婚事件の依頼を受けたときのことです。妻から離婚を求められているけれど、自分は離婚したくない、ということで相談にいらっしゃいました。
妻とはかなり長い間別居していて、他の弁護士に相談したときには「これだけ別居期間が長いと、離婚を回避することは難しい」と言われたようです。しかし依頼者は、「妻を愛しているし、子どもたちに、自分たちが夫婦ではなくなる選択をする姿を見せたくない」と話し、復縁を強く希望していました。
この事件は最終的に裁判で争うことになりました。裁判では、依頼者の妻や子どもに対するご本人の思いについて丁寧に主張しました。また、別居後も、妻との交流があったことや妻の要望で子育てに参加していたことなども説明し、結果的に、離婚を認めないという判決を獲得できました。判決の中では、妻や子どもに対する依頼者の愛情の注ぎ方や、子どものために取った行動が取り上げられ、非常に喜んでいただけました。
依頼者から「子どもたちが大きくなった時に、自分がどんなに愛情を持って接していたかわかってもらえると思う。本当に意義のある判決になりました」と言われたときのことは忘れられません。
ーープライベートについても伺います。ご趣味はありますか。
絵を描くことです。小学生のときから好きで、色々な物をデッサンをしていました。高校の美術の先生から「美大に行った方がいいんじゃないか」と言われたこともあり、割と得意な方だと思います。
実は漫画家になろうと思っていた時期もありました。今考えると、漫画家もお笑い芸人も弁護士も、表現の仕方は違えど自分の考えを分かりやすく人に伝える部分で共通しています。自分は「伝える」ということが本当に好きなんだな、と思いますね。
初心を忘れず、いつまでも人に寄り添える弁護士であり続ける
ーー今後の展望についてお聞かせください。
弁護士として経験を重ねても、常に初心を忘れずにいたいです。弁護士になった当初から大切にしている、人に寄り添うことや、法律と人を切り離さないという気持ちをずっと持ち続けたいですね。それが、自分のオリジナリティになると思います。
今後扱っていきたい分野は、ペットに関する案件です。これまでも手がけたことはありますが、より一層、知識と経験を積みたいと考えています。
ペットは飼い主にとって家族同然の存在ですが、法律的には「物」として扱われます。たとえば、ペットが交通事故で死んでしまった場合、飼い主は精神的なダメージを受けるでしょう。しかし原則として、飼い主に対する慰謝料は低い金額でしか認められません。
飼い主が感じるペットに対する重みと、法律上での重みとは、激しく乖離しています。できることは限られるかもしれませんが、飼い主が納得できる解決につなげるためにサポートできればと考えています。
ーー最後に、法律トラブルを抱えて悩んでいる人へメッセージをお願いします。
トラブルを抱えている今が、一番苦しい時だと思います。初めての経験で、誰に相談すればいいのか、どう対処したらいいのか、見当がつかない状況かもしれません。
まずは、その苦しさを吐き出すために相談に来ていただきたいと思っています。心のつかえを取り除いて、絡まった問題を1つ1つ解きほぐしていきましょう。