草葉 隆義 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
大学二年生の時に交通事故に遭ったのがきっかけです。叔父の運転する車で広島へ向かっている途中、叔父が居眠り運転をしてしまい、大型のトラックにぶつかってしまったのです。私は病院に運ばれ、なんとか助かったのですが、叔父は亡くなりました。その後、事故に遭ったことで交通事故の悲惨さを思い知ると共にこのような事故や事件を巡る法律上の問題点を意識するようになり、弁護士を志しました。大学卒業後は大学院に進み、行政法を中心に学びました。一度自分が被害者の立場に立ったという経験をしたからこそ、社会の問題解決の為に弁護士が果たす役割の大きさに気付けたと思います。
今までの仕事経験と現在の仕事状況
在籍していた事務所から独立して、30年近く経ちます。九段下や池袋など何度か事務所の場所は移っているのですが、ずっと地域のホームローイヤーとして主に市民の方のご相談をお受けしてきました。債務問題、刑事問題、一般民事をそれぞれ同じくらいのバランスで扱っています。
印象に残っている案件(事件)
ある大学病院の遺体解剖を巡る事件が印象に残っています。依頼者のお母様が珍しい病気で亡くなられ、病院側は今後の研究のために、遺族に遺体の解剖を求めました。遺族もそれに承諾し、遺体の解剖が行われたのですが、後に病院側が解剖で採取した臓器の一部を遺族に無断で保管・研究材料として提供していることがわかり、遺族が臓器の返還を求めた問題でした。依頼者は、遺体が研究に使われたことを怒っていらっしゃったのではありません。病院が「勝手に」遺体の一部を持ち出しことに怒っておられたのであり、ご自分のお母様のことだけでなく、遺体の所有権、解剖された遺体の管理・処分権限の所在の不明瞭さという医療の問題に警鐘を鳴らしたいというお気持ちが強かったのです。
この事件からしばらく経った今では、ドナーなどの浸透で人間の臓器の需要や所有権、さらには経済的価値までもが改めて見直されています。このような現状に至ったということもあって、とても印象に残っている事件です。
仕事をする上で意識していること(信条・ポリシーなど)
よく言われるように、弁護士はお医者さんやお坊さん、牧師さんなどと似ているところがあります。自分がいくつも事件を担当していたとしても、ご相談に来られる方にとってはその事件が、一生に一度あるかないかという辛い問題です。その重さを真摯にうけとめ、ひとつひとつの事件においてベストを尽くし、できるだけ解決に努力するということを心がけています。
また、市民の方のご相談を受けることが多いので、感情的な問題が加わってくることも多くあります。例えば遺産相続においては、親兄弟にも拘らず骨肉の争いになってしまう場合があります。お互いが第三者ではないだけに、少しのもつれが、お金だけでは割り切れないような問題にまで発展してしまうのです。そのような場合には、事件に至るまでの前提問題をお聞きしたり、少し考え方の方向を整えて差し上げるたりすることが事件の解決に繋がります。絡まった糸をほどくように、すこしずつ関係をほぐして差し上げることが大切なのです。
関心のある分野
裁判員裁判に関心があります。私は外国人、主に中国人関係の刑事事件を担当することがしばしばあるのですが、外国人関係の刑事事件における裁判員裁判制度の改善、また、現在重大な刑事事件にのみ採用されている裁判員裁判がもっと広い分野の事件において用いられればいいと思っています。裁判員裁判が行われるまでは、書面審理が重用視されていました。それのせいでえん罪になってしまった人や、脅迫的な取り調べが行われたこともあり、「人質司法」と呼ばれるほどでした。その「人質司法」が裁判員裁判の採用によって、法廷で見聞きしたことや当事者たちの生の声が、判決を左右するように変わったのです。是非、重要な刑事事件だけでなく、もっと広い分野で裁判員裁判が採用されて欲しいと願っています。
現代の法曹界に対する考え
裁判員裁判が様々な事件に行き渡らない理由のひとつとして、日本の司法の拘束・保釈制度が挙げられると思います。日本の司法では、罪の疑いがかけられるとすぐに身柄が拘束されてしまう上、保釈制度が健全に機能していません。この点がアメリカの司法との違いでもあります。
例えば、一度痴漢の容疑で捕まってしまうと、取り調べなどが終わるまでそのまま数十日拘束されてしまう場合があります。その間家族や会社と関われないわけですから、長期間仕事から離れたことで会社をクビにされてしまう危険がありますし、家族への負担も大きいでしょう。そのようなことを恐れて、早く帰りたいが為に無実の罪を認めてしまう人がいるのも事実です。このような問題を解決する為にも、保釈の制度を見直すべきだと思います。例えば、GPS機能のような近代的な方法を使えば、安全な管理下での保釈も可能なはずです。