横井 祐子 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
小学生の頃に、身近な親族で生じたトラブルで女性の弁護士の先生が出てきた途端に解決してくれた、さらに母親からも弁護士になることを勧められた、というエピソードが初めのきっかけとしてありました。
小さいころの思い込みと言うのは強烈で、その時点では絶対的な決心ではなかったのですが、弁護士への漠然とした意識がなぜか自分が弁護士になる方向へと促してきました。弁護士にはハードルの高い試験がありますから勉強に向かっていくようになりましたし、大学に入ってからも弁護士志望の友達に恵まれ、そのまま受験指導校に通うことになりしました。
他方、自分は女性と言うこともあって、「仕事と家庭の両立は重要なテーマ」という意識を高校時代から持っていたので、単なる会社員になるよりも組織の後ろ盾を失っても仕事ができる強力な資格を持ちたいという気持ちもありました。
その後のキャリア
合格したのち、まず小さい規模の渉外事務所で2年間、その後50~60人規模の特定共同事業を行っている法律事務所で4年間働きました。
グローバルに展開する海外の法律事務所と日本の法律事務所が提携することを特定共同といい、特定共同を行っている法律事務所は、海外のネットワークを強みとして、外資系や海外の企業に法律サービスを提供しておりますが、そのような仕事に特に関わっていました。
ヘッドハンターからの誘いは常時あるものですが、そのような中でこのマイクロソフト社に入ることを決めました。
企業の中で働こうと思った理由
法律事務所の仕事については、会社にとっては「案件を外に出す」というイメージで、外に出すのに相応しくない情報をカットするなど会社側で体裁を整えますから、弁護士がその一切合財を扱うわけではありません。
そのため、自分が提供したアドバイスが依頼者にとって本当に欲しいものだったのか、根本的なところが結局分からないままになってしまいます。
さらに、大きい事務所の特徴ですが、当時の私には最終的な判断権はなく、統括するパートナー弁護士が仕事を切り分けて細分化した上で全体像を把握するという状態でした。そうなるとますます、自分の仕事が何のためにやっているのか分からなくなってしまいます。
しかし、会社の中に入ってしまえば、法律事務所とは異なり案件の一部始終を見ることが出来ると考えました。
マイクロソフトに入社した理由
それまでに外資系の事務所で働いていたこともあって外資系企業に対する抵抗はあまりありませんでした。他の企業も見ましたが、階層が固まっていて意思決定に時間がかかる、息がつまる、というような印象を受けるところも多かったです。そのような中で、マイクロソフト社は階層が少なく風通しがよかったので入社を決めました。
印象に残っている案件(事件)
前の事務所の案件では、一つ大きなM&Aの案件が印象に残っています。時間を間に合わせるために年末年始も仕事をして体力的に辛い中で結果を出したこともありますが、会計士チーム・アドバイザーチーム・買う側買われる側など役割の違うチームが一緒になってまとめ上げたのが印象に残っていま す。
マイクロソフトでの案件では、社内のコンプライアンスのためのプロジェクトを立ち上げたことが印象に残っています。コンプライアンスを高めるために組織をダイナミックに変えることが望まれたので、そのために他の事業部と協力して制度を変えて定着させたというのは会社ならではの経験として印象に残っています。
弁護士になって大変だと感じること
会社においては、法律の話だけで考えれば最も正しい選択肢があっても、「この組織の中で実行しなくてはならない」ということを加味すると別の選択肢に軍配が上がることもあります。そのような法律以外のところを踏まえてアドバイスをしなくてはなりません。もちろん、それを大変と感じるかは人それぞれでしょう。
その他では、会社内の政治的な駆け引きを見られることも興味深いです。
休日の過ごし方
休日は土日で取っていますが、子どもがまだ小さいですから家事育児を含めて家族と過ごしています。
弁護士としての信条・ポリシー
抽象的ですが、弁護士はやはり公平とか正義だとかを標榜した職業です。会社に入るとビジネス寄りにはなりますが、それでも守らなくてはならないラインがあるということです。
今後の弁護士業界の動向
将来の予測は難しいでしょうが、伝統的な弁護士像に拘っていてはいけないと思います。アメリカのマイクロソフト本社では法務部の弁護士が営業部門に移ったりするなど、そのくらい流動的です。
企業法務については拡大するでしょう。例えば、合格したばかりの弁護士を、法学部卒の学生に大学院の分のキャリアをプラスされたというくらいの感覚で採用の門戸を開いています。もちろん、実際の採用の現場では報酬との兼ね合いがあります。
今後のビジョン
弁護士としての究極のやりがいは人の役に立つことであると思います。しかし、あらゆる職業、あらゆる人々すべてにとって役に立つことは不可能です。自分はどういう人の役に立ちたいのか、ということを考えています。そう考えた上で、子どもを持って働く人たちの役に立ちたいという気持ちを持っていま す。少子化の煽りを受けて、働くことと子育てのジレンマが深まっているのが現状です。
弁護士資格は肩書きとして大きなアドバンテージになりますから、他の分野に乗り込んでいくに当たっていくのは面白いです。社会の動向を見て今の仕事にただ 拘るのでなく法律を離れるというのもいいかもしれませんし、企業法務としてアプローチすることも含めて、いろんな方向に向かっていきたいです。