長尾 愛女 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
父親は大学教授、母親は医者と、両親ともに社会公益に関わる仕事をしており、幼い頃から両親が多くの人の役に立ち、感謝されていたりする姿を見て育ったため、自分も両親のように公益的な仕事(プロフェッションといわれる仕事)に就きたいという思いがありました。
また、日々両親が勉強している姿を目にしていましたし、私自身文章を書いたり読んだりすることが好きだったので、社会公益に関わりつつ学問が職に繋がる仕事がしたいと思い、法学部に入りました。そして検察官や裁判官といった大きな組織に属するよりも,より身近なところで自由な立場で人の役に立てる弁護士を目指しました。
印象に残っている案件(事件)
家事事件を扱うことが多いのですが、中でも相続案件と建築紛争に関して特に思い入れがあります。
相続の問題は財産的なものですが、親族関係が壊れることもあるし、何より今まで全く法律問題に関係なく生きてきた人が、いきなり紛争に巻き込まれることからメンタル面で非常に重圧のかかる案件です。解決も長期化することが多く、1年以上かかることもありますし、大きな相続案件だとそれだけ関係者も増えるため、1人1人に納得してもらいながらの解決は大変でした。
しかし、一歩一歩解決に近づくにつれ依頼者の心の重荷も一緒に解決できますし、故人の思いも酌んであげられる仕事だと思うので、関係者全員が満足できる結論に達することができた時はとても嬉しいです。
また、建築紛争の問題では何度も依頼者の方の家に行き、専門家に調査を依頼し家の欠陥を明確にして初めて、施工業者との争いが始まります。そのため解決までに数年かかることも多いのです。
依頼者の方にとって‘家を買う’ということは人生における大きなイベントですし、欠陥のある家に暮らすことは日常生活全般に関わる問題ですから、そのストレスは計り知れません。しかし、依頼者の家にかける思いを共有し解決へ向かって共に歩んだ分、解決できた時の喜びもまたひとしおでした。
それから、最近では多くの離婚事件を手がけていますが、離婚成立の感慨を依頼者の方と共有する度に、新しい人生のスタートをお手伝いしているのだと実感します。
仕事の中で嬉しかったこと
依頼者の方に「先生に出会えてよかった」「先生と話すことで一歩一歩解決に進んでいる気がする」といった感謝の言葉をいただけたことです。
相談にいらした依頼者のお気持ちを、相談の前後で劇的に変えてあげられるということが嬉しいです。
弁護士になって大変だと感じること
時間の管理です。一度に何件も案件を抱えながら裁判所に行き依頼者と会い、書面を作ることが仕事ですので、どの仕事にも漏れがないようにと心がけています。また、法科大学院で教育補助教師の仕事もしているため、どこにどれだけ時間を割くかというスケジュール管理が大変です。
しかし、この仕事で大事なのはタイミングです。時効や訴訟期限もそうですが、案件によってはアクションを起こすタイミングが変われば効果も変わります。その案件ごとに最適なタイミングを逃さないように気を付けています。
休日の過ごし方
仕事優先ですので、必要であれば土日も出勤します。そのため曜日感覚ではなく仕事次第で休みを取るようにしていますから、仕事の合間に時間が作れた時にリラックスができるようにしています。
時間ができた時は近所に買い物に行ったり、決まった喫茶店に行ったりと、行き慣れた場所でリラックスをしていますが、時には切り替えの意味で近隣の外国に出かけ、非日常を味わうこともあります。
弁護士としての信条・ポリシー
‘仕事に誠実に、労を惜しまない’ということです。依頼者の気持ちに寄り添い、法律的な紛争解決だけではなく、それに纏わる思いやストレスにも踏み込んで一緒に解決できたらと思います。
また、弁護士としての経験も専門性もまだまだですので、調べる労力と手間を惜しまず、常に学ぶことを忘れずに仕事をしたいです。実務に追われると、学びを実践することは難しいのですが、その点は法科大学院の仕事で学生と接することでモチベーションを保っています。
依頼者に対して気を付けていること
法律的な問題だけでなく、依頼者の心情やストレスにまで踏み込み、時間を十分に割くことです。依頼者の素朴な疑問にも丁寧に答え納得してもらえるように、また、折り返しなど対応もできる限り早く取るようにしています。
依頼者と一体化してはいけませんが、法的に関係なさそうなお話にも耳を傾けることで、お話の中からよりよい解決が見つかれば示すことができますし、依頼者の願いや思いを受けとめられるようにと思っています。
関心のある分野
現在の事務所では、離婚や相続の案件を多く手がけているので、より多くの提案や解決手段を示せるよう、この分野の専門性をより一層深め、より迅速かつ適切な解決が図れるよう技術を深めていきたいです。
また、大学院では民法、民訴法、経済法(独占禁止法)の分野を教えているので、そちらの専門性も高めていきたいと思っています。
今後の弁護士業界の動向
弁護士の就職難時代と言われていますが、比較的短い年数で独立する弁護士も多いですし、自分の居場所を見つけこの先も続けていける仕事だと思っていますが、同時により満足度の高い弁護士が選ばれることになるので専門性と顧客満足度がより一層重視されると思います。
一方で法科大学院や企業の法務部など、高い職能を必要としているところは多いので、法曹界以外でも活躍する弁護士が増えています。私を含め、法科大学院の仕事をしている同期弁護士は多いのですが、受験対策など、実践的なアドバイスができているのではと思います。
今後のビジョン
昨年の4月に事務所を開設したばかりで、今はまだ限られた分野しか扱うことができていませんが、今後様々な分野に関わりたいですし、実務のみではなく学ぶことにも重点を置いていきたいと考えています。
仕事をしているとどうしても理論面を学ぶ機会が少なくなりますが、だからといって実務屋になってはいけないと思っています。学ぶことで守備範囲は増えますし学生にもより深く伝えることができますから教えることは業務にも役立っています。また、外国法ではどうか、最新の判例はどうかということを学び続けることで実務にも新たな視点が生まれます。
私が法科大学院や司法修習生時代にお世話になった指導者や先輩方の多くが実務と学びを両立しており、私も深く影響を受けました。
ページを見ている方へのメッセージ
以前「弁護士の先生ってこんなに話やすかったんですね」と言われたことがあります。これは裏を返せばその方にとって、弁護士は相当敷居が高いというイメージがあるのだなと感じました。
依頼者の中には「こんなことならもっと早く相談すればよかった」「悩んでないで相談していればもっと早く、的確に解決してもらえたのに」とおっしゃる方が多くいます。
今は、資力に応じて弁護士費用を国が立て替えるという法テラスの制度もありますし、金銭面はあまり気にせずに、まずは相談して下さい。
これまでの経験を通して一言
独立開業してから約1年を迎えようとしています。これまで色々な経験をしてきましたが、法科大学院、修習時代の諸先輩方や、事務所独立まで勤務していた事務所の諸先輩方、同期の仲間達など様々な人に支えられて実務家としてなんとか仕事ができています。
先輩方には本当に感謝していますし、これからも先輩方のようになれるよう努めていきたいです。また、自分もいずれ後輩に何かを与えられるような弁護士になれればと思っています。