小川 敦也 弁護士 インタビュー
弁護士を目指した理由
大学生の頃、商工ローン問題に興味をもったことが弁護士という仕事を意識し始めたきっかけです。
当時、債務の取り立ての厳しさから、多重債務に陥ってしまった人の自殺が問題視されており、商工ローンは社会問題として取り上げられていました。私自身も商工ローン問題に興味を持つようになり、お金の為に命を捨てるのはおかしい、「働くために生きる」のではなく「生きるために働く」べきだ、と考えるようになりました。
そんな中、ある本を読んだことで、債務の問題を法律の面から解決できることを知り、弁護士を目指すようになりました。
今でこそ債務整理が弁護士業務のひとつの分野として確立し、大量かつ定型的に案件を解決できるようになりましたが、当時は「債務問題を弁護士に相談する」という認識が一般的に広まっていませんでした。積極的に債務の分野を扱っている弁護士もまだ少なく、当時救われなかった人たちの多くも、今であれば救うことができたのにと思います。
仕事内容
民事事件、刑事事件ともに幅広い分野を扱ってきました。民事事件では債務整理や交通事故、離婚、相続、不動産関係の問題などを行い、刑事事件は主に国選弁護士として担当しています。
印象に残っている事例
まだ弁護士になったばかりのころに担当した、損害賠償の案件が印象に残っています。依頼者は賠償を請求されている側の方でした。
金額としては莫大な額というわけでもなかったのですが、依頼者が「これで負けて賠償金を払うことになったら、もう経営が成り立たない。会社は潰すしかない」とおっしゃったときには、改めて自分の抱えている案件の重みを感じました。
弁護士業務として扱っているのは事件ですが、弁護士が相手にするのは目の前のひとりの人間なのだ、ということを意識するきっかけになった案件だったと思います。
弁護士としての信条
これだけ言うと誤解されてしまいそうですが、「いかに綺麗に負けるか」ということを意識しています。もちろん裁判に負けるのはいいことではありません。「綺麗に」というのは「依頼者に納得してもらう」という意味です。
案件の中には、勝算が充分に見込めるものもあれば、法的な常識から言って確実に負けてしまうであろうものもあります。もちろん、そのような案件に対して、誰も思いついたことのないような法的観点を見つけ出し、判例や常識を覆して勝つことができればいいのですが、それは毎回目指せるような容易なことではありません。勝てる案件を勝つのは弁護士として当然ですが、どうしても負けてしまう案件をどう扱うかということも大切だと思うのです。
私は、負けてしまう案件の際、依頼者に「法律的に考えてこれは勝てません。無理ですね」と一言で終わりにしてしまうのではなく「貴方の気持ちは分かりますが、残念ながら法律的には認められません」「今回はこういう結果になってしまいましたが、もしあのときにああしておけば回避できたんです」ときちんと説明した上で、「同じことを繰り返さないように、今後はこういう点に気をつけてください」「これを良い教訓にして生かしていきましょう」とお話しすることを意識しています。
結果が負けであっても、いかに納得して負け、その失敗を将来につなげてもらうことによって依頼者のためになりますし、「この弁護士に頼んでよかった、また何かあったら相談しよう」と思ってもらえるとも思います。それでも、一度お伝えした注意点を守らず、同じような相談をしてこられる方も少なくないのですけどね。
関心のある分野
弁護士を目指すきっかけでもある、債務の問題には関心があります。債務問題が大量かつ定型的に処理できるようになったから今だからこそ「債務はわざわざ弁護士が扱う分野じゃない」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、私は借金問題に弁護士が取り組むことの社会的意義は、今も変わらず大きいと思っています。
また、ひとりひとりの債務問題を解決するためには、その根本である中小企業にも目を向けなければなりません。中小企業の経営が安定すれば、債務で苦しむ人も減ります。今後は事業再生を始めとする中小企業への支援も積極的に扱いたいと思っています。
中小企業の方へのメッセージ
中小企業で何か困ったことがあった場合、どちらかと言うとまずは税理士に相談する場合が多く見受けられます。法的に解決するべき問題であっても、それが法律の問題であるという認識が薄かったり、「わざわざ弁護士に相談するほどのことでもない」と思ってしまったりと、なかなか弁護士に相談するに至らないのです。
せっかくインターネットや広告の普及によって弁護士にアクセスしやすくなったにも拘わらず、未だに弁護士に相談されないままに終わってしまう小さな案件が無数にあるのが現状です。中小企業の方には是非、顧問契約などによって、困ったことがあったら気軽に相談できる弁護士との関係を築いていただきたいと思います。