今井 悠 弁護士 プロフィール

未成年の御子息が詐欺の容疑で逮捕されてしまったという御相談をお父様より受けました。

これまで何の前科もなく、御両親としても前触れを察知できない中で突然詐欺罪で逮捕されたというのであれば、特殊詐欺の受け子等として利用された可能性が高いのではないかと考えながら、本人の接見に伺ったところ、やはりオレオレ詐欺の受け子として被害者の家に向かったところ、待機していた警察官に逮捕されてしまったという事案でした。

この事案では、町中でキャッチのような形で高額バイトに興味がないかどうかを確認され、そのキャッチの人間にメールを送ったところ、アルバイトの面接のような形で履歴書の送付を求められ、先方の求めに応じて手続をした後に、被害者宅に向かうように指示をされるようになったという事案でした。

この事案では、被疑者が逮捕される前に、被疑者は複数の被害者宅に赴いており、その総額は1000万円を超えてしまっていました。さらに、長期間同様の行為を繰り返していあっため、上位者とのやり取りや、複数の被害者宅に赴いたことを示唆する証拠も、被疑者自身が利用していた携帯電話の中から発見されてしまっており、容疑を否認することは困難な状況でした。

特に、被疑者自身も、何度も受取りを繰り返す中で、高額な報酬を受け取ることへの違和感を抱いていたことや、受領した金品の受け渡し方が特殊(駅のコインロッカーなどを用いる方法)であったことに不自然さを感じており、そのことについての証拠も捜査機関に確保されていました。

被疑者の方が未成年であったため、刑事裁判ではなく少年審判によって被疑者の処分が決められる事案ではありましたが、非行事実を争うのではなく、少年院送致を何とか免れることができないかという方針で弁護活動を行うことになりました。

当初は被害金額が大きいことから、少年院送致は不可避な事案のように感じていました。特に、オレオレ詐欺のような特殊詐欺の事案との関係では、少年審判との関係でも成年の刑事裁判との関係でも、前科がなくとも被害金を賠償できていない以上は、少年院送致や実刑等の身体拘束を含む処分(又は刑罰)が言い渡されており、保護観察処分に止めることのハードルは極めて高いように感じました。

しかし、少年事件の場合には、少年審判が行われる前に、少年の要保護性を判断するために、調査官による調査が行われます。
その調査の中で、調査官が少年院送致までは不要だと判断した場合には、調査官からその旨の意見書が裁判所に対して提出され、裁判官も少年事件のプロである調査官の意見は尊重した上で審判を行います。

そこで、調査官に対して、少年院送致までは不要であることを理解していただくために、付添人として様々な活動を行いました。少年の保護者と共に、これまでの被疑者の問題点等を洗い直した上で、今後の指導計画等を具体的に準備することは当然のこととして、少年が在籍していた学校にも協力を求めて、学校の職員からも嘆願書を提出してもらい、学校からどのような指導が可能かということについても具体的に主張しました。

もう少し軽微な事案の場合には、学校に露見しないようにと依頼されることもありますが、本件においては捜査段階で学校側には事件が露見してしまっていたので、学校側にも最大限協力をしていただけた結果として、調査官から少年院送致までは不要であるとの意見をいただけ、最終的に少年審判においても保護観察処分の言い渡しを受けることができました。

電車内で自慰行為に及んだことで、自慰行為を目撃していた乗客に通報され、警察官による取調べを受けたという相談を受けました。話を聞くと、御相談者様はまだ未成年で、今後、家庭裁判所の手続が予想されたこともあり、御両親と共にご来所いただくことになりました。

既に当日の経緯については警察官の取調べに際して詳細に説明してしまっておりましたし、本人から話を聞いたところ、公然わいせつに及んだ事実は間違いなさそうでしたので、できる限り軽い処分を得られるような弁護活動を行うことにしました。

もっとも、他の方の身体に触れることがなかった場合であっても、無理矢理自慰行為や性器を見せつけるという行為は、公然わいせつ罪ではなく強制わいせつ罪として扱われる可能性がありますので、そのような疑いをかけられることがないように、今後の取調べに際してはアドバイスを行いました。

また、公然わいせつ罪については、強制わいせつ罪などと違い、他の方にわいせつな被害を与えることを内容とする犯罪ではなく、社会に対する害悪的な行為として取り扱われていますので、本来的には示談交渉に馴染まない事案です。しかしながら、実際に自慰行為を見せられた方が実質的には被害者にあたりますし、一定の精神的苦痛は被っているはずですので、目撃者である女性との間で示談を成立させるように動くことも決めました。

更に、公然わいせつ罪が問題となる場合、被疑者の性嗜好にも問題がある場合が多く認められます。通常であれば、性的な行為を公の場所で行おうとは考えませんし、性的欲求の発散のさせ方としても異常だからです。

特に、少年事件においては、再非行の可能性が大きく評価されますから、何故このような行為に及んだのか、二度と同じ過ちを犯さないためにどうすればいいのかについて、御相談いただいた当初の段階から、御両親と本人と弁護人との間で、しっかりと協議をしました。

被害者の方との示談交渉は円滑に行うことができました。一方で、少年事件であることから、示談によって不起訴処分で終了するということはあり得ず、家庭裁判所に送致されることになりました。

この段階では逮捕・勾留されておりませんでしたが、少年の要保護性を調査するために必要であると裁判所に判断された場合には、逮捕・勾留されていない事件であっても、観護措置がとられる(鑑別所に送られる)可能性がありますので、少年鑑別所において身体を拘束した上で少年の資質鑑別を行わずとも、付添人と少年の両親によって少年の問題点を解明し、再非行防止のための方策を検討することができることについて家庭裁判所に意見書を提出しました。

その結果として、鑑別所に送られることはありませんでしたし、最終的には少年審判も開かれずに、不開始決定を得ることができました。

成年の事件であれば、過去に前科前歴がなく、被害者から許して頂けた旨の文言の入った示談書を作成できていれば、不起訴処分を得られる可能性が高いということができますが、少年事件の場合、犯してしまった罪の重大さよりも、その少年が再非行に及ぶ可能性がどれだけあるのか、家庭裁判所が介入する必要が大きいのかという観点から判断されますので、示談が成立していることは成年の事件のようの大きく評価される訳ではありません。

それでも、少年や少年の両親が本件を真摯に受け止めていることの証拠として、被害者対応も誠実に行っていることや、今後の性教育等も含めて、御両親から詳細な供述を得られたことが、本件の結果に結びつきました。

御子息が突然逮捕されてしまったというお母様からの依頼を受けて、御子息の弁護人として選任されました。

当初は、何の容疑かも理解できていなかったため、まずは状況を確認するために迅速に御子息の面会に向かいました。初回接見時に確認したところ、容疑はオレオレ詐欺の受け子を担ったという内容でした。

詳細を確認したところ、被疑者はオレオレ詐欺であるという事実を十分に認識しておらず、地元の先輩の依頼を受けて、とある家に荷物を受取りにいったところ、その家を出る際に警察官に囲まれ、そのまま逮捕されてしまったとのことでした。当時は、オレオレ詐欺が最も流行しており、警視庁においてもオレオレ詐欺に気を付けるような啓発活動が盛んに行われている時期でした。

また、オレオレ詐欺の事案の場合、上位者が逮捕を免れるため、受け子のように被害者と直接接触を図る必要があり、逮捕される危険性の高い役割については、SNS等を利用して、情を知らない学生をアルバイト感覚で利用することが多くありましたから、オレオレ詐欺だとは認識していなかったという被疑者の弁解も、本当の事を言っているように感じました。

この場合、詐欺の故意がないことや、上位者との共謀がないことを理由に、嫌疑不十分として不起訴処分を狙うことが考えられます。しかし、そのために取調べに対して黙秘をするのか、先輩から何も知らされずに利用された経緯を供述させるのかについて、弁護人は弁護方針を十分に吟味した上で判断する必要があります。

弁護士として選任された後、ひとまずは黙秘することをアドバイスしました。最初に黙秘を選択したとしても、その後の取調べ状況等から、容疑を認めて供述を始めることはいつでも可能である一方で、一度供述を始めてしまうと、途中から黙秘権を行使しても、黙秘することの意味がなくなってしまうケースが多いからです。

そして、接見を重ねて、被害者宅に荷物を受取りに行くように指示をした先輩とのやり取りを聞く中で、今後も黙秘を維持することを決めました。それは、被疑者がまだ若年であり、十分に捜査機関に対して供述を行うことが困難であったという事情もありましたし、被疑者の供述を信用してもらえたとしても、起訴されてしまう可能性が残ると判断したためです。

本件においては、被疑者が弁護人を信用してくれており、黙秘を維持する方針について疑問を抱かなかったため、最後まで黙秘が崩されることはなく、最終的に不起訴処分を獲得することができました。

黙秘すると聞くと、単に取調べに対して黙っていればよく、黙秘を維持することは困難ではないかのように聞こえるかもしれません。しかし、通常の人生の中で、色々と質問されているにもかかわらず、それをすべて無視するという経験をしたことがある方はほとんどないように思います。

加えて、捜査機関としても、冤罪を作りたいという訳ではなく、単に真実解明のために被疑者には黙秘を止めるように説得してきますし、被疑者の利益を考えても黙秘することは得策ではない旨を説明してきますので、その中で黙秘を維持することは簡単な事ではありません。

弁護人が、黙秘を維持することの意味を丁寧に説明した上で、被疑者自身も黙秘を維持することが自身のためになるのだということをしっかり理解できてはじめて黙秘を維持することが可能になるのです。

本件においては、弁護人と被疑者との間で十分な意思疎通ができ、弁護人の考えを被疑者が理解できたことから、最終的に不起訴処分という結論を得ることができました。

電車内で痴漢行為をしたとして,逮捕・勾留されていました。

弁護士の先生が依頼者の親族等関係者の連絡先を速やかに聴取し,示談金の支払方法(幾ら支払うことが可能か,その金額をすぐに用意出来るか)を確認した上で,誠実に示談交渉に臨みました。
結果として,早期に示談が成立し,不起訴処分となり釈放されました。

通勤中の電車内において、女性の臀部をスカートの上から数秒間触ったという痴漢の事案について御相談いただきました。

駅員室に同行された後、警察署に任意同行され、東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反の罪で取調べを受けた後に釈放されていましたが、今後も捜査は続くことになり、何度か警察署にもきてもらう必要があると警察官から伝えられたため、今後の弁護活動をお願いしたいと依頼を受け、弁護人として選任されました。

これまで何度か同様の行為に及んでしまっており、その旨を警察官に伝えてしまっていましたが、それまでは被害者の方に声をあげられることはなく、刑事事件として立件はされてきませんでしたが、余罪として警察官に追及されることを懸念されていました。

また、奥様には正直にこれまで何度か痴漢をしてきてしまったことを打ち明けておりましたが、会社や他の人達に事件がバレてしまわないかという点を強く懸念しておりました。

弁護士として選任された後、直ちに検察官に連絡し、被害者の方の連絡先を弁護人限りで教えて欲しい旨を依頼しました。その結果として、被害者の方が未成年であることが発覚しましたので、直ちに被害者の親御さんに連絡をして、示談交渉に着手しました。

同時に、警察官や検察官への取調べに対してアドバイスを行い、必要以上に余罪に捜査の目が向かないように努めました。余罪については、弁護人が選任されて以降の取調べにおいてほとんど触れられることなく、立件されることはありませんでした。また、親御さんとの示談交渉を成立させ、最終的に起訴猶予処分を得ることができました。

その結果として、今回の事件について会社や他の人間に知られることなく、事件を解決することができました。

まずは、被害者と示談交渉をするべく検察官に問合せを行いました。すると、トイレの個室を利用していた女性からは被害届が提出されておらず、学校のみが被害者として扱われているということが分かりました。

すなわち、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被疑事件(盗撮の罪)として扱われているのではなく、違法な目的で立ち入りが禁止されている箇所に立ち入ったことを理由に、建造物侵入被疑事件として取り扱われていることが分かりました。

御子息が通学中の学校の女子トイレの個室のドアの上部から、スマートフォンを差し入れて、個室の中にいた女性を撮影してしまったという事案について、御父様より御相談いただきました。スマートフォンに気付いた女性から被害を申告され、警察署での取調べを1度受けた後、弁護人として選任されました。

逮捕されるかもしれないという恐怖感と、警察署からは学校からも被害届が出されている旨を説明され、今後どうしたらいいのか全く分からなくなってしまったため、御相談いただきました。学校内での事件でしたから、学校にバレたくないという意向はありませんでしたが、何とか前科を付けずに解決したいという御意向をお持ちでした。

盗撮の事件については、直接被害者の方の体に触れる訳でもありませんから、盗撮行為自体によって性的な欲求が満たされる訳ではありません。今回の御依頼者様も、盗撮に及ぶことによって達成感を得られていたようではあるのですが、何故そのような感覚を得られていたのかについて説明することはできず、撮影した動画や画像を後で見返すこともほとんどしていなかったため、動機の点について警察官に対して上手く説明ができず、今後の取調べに置いて追及されてしまうかもしれないという点についても、大きな不安を感じていたようでした。

さらに、取調べとの関係では、スマートフォンの中に、他の場所で盗撮した記録も残されており、御相談いただいた段階では、まだ捜査機関から他の盗撮行為について追及されてはいませんでしたが、既にスマートフォンについては捜査機関に押収されてしまっていたため、どのように捜査機関に説明したらいいのかという点についても大きな不安を感じていらっしゃいました。

まずは、被害者との示談交渉を行うため、検察官に問い合わせました。そうしたところ、本件については、個室を利用していた女性から被害届は提出されておらず、学校のみが被害者として扱われていることが分かりました。

つまり、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被疑事件(盗撮の罪)としては取り扱われておらず、学校を被害者とする建造物侵入被疑事件として取り扱われていたのです。

このような事案において法人相手に交渉を行う場合、具体的な経済的損害が生じていないことから、示談金銭を受け取ることに被害者のモチベーションが認められないことが多くあります。本件においても同様に、示談金を受領してしまうと、法人としてどのような会計処理を行うべきか判断しにくいとの理由で、示談自体は拒絶されてしまいました。

そこで、示談契約という形に囚われずに、被害者からお許しいただけていることを検察官に主張しやすいように、学校法人に御依頼者様を許す旨の上申書を記載していただく代わりに、学校法人に対して寄付を行うこととしました。その結果として、建造物侵入事件について起訴猶予処分(不起訴処分)を得ることができました。

また、建造物侵入被疑事件とはいえ、その実体は盗撮行為が問題視されており、盗撮犯は極めて再犯率の高い犯罪とされていますので、二度と同じ過ちを犯さないことを、検察官に対して説明できるようにしなくてはなりません。

この点を説得的に説明するためには、犯行動機について具体的に説明できるようにしておく必要があります。もし、背景に盗撮行為に対する依存等が認められる場合には、再発防止策として専門家によるカウンセリング等を受ける必要があるからです。この点についても、弁護人と御依頼者様との綿密な話し合いにより、自身の劣等感等が盗撮行為の背景にあったことが明らかとなり、具体的な再発防止策等についても準備することができました。

更に、スマートフォンに残されていた他の盗撮の記録等についても、適切なアドバイスを行い、既に立件されている事件以上に、
余罪について別件として事件化されることも避けることができました。

兄が何らかの性犯罪で逮捕されてしまったとの相談を御兄弟からいただきました。この段階では、具体的な内容は一切把握できておらず、ただただ逮捕されてしまった御兄弟を助けたいものの、何をしたらいいのかサッパリ分からないという状況でしたので、まずは弁護士が本人と接見して状況を把握し、必要なアドバイスを行ってくる旨をお伝えしました。

早速、本人とお会いしたところ、女性と性行為に及んだものの、一切怪我をさせた認識はなく、性行為自体も同意の上で及んだので間違いない旨をお話しされていました。そこで、基本的には被害者の方の承諾を受けた上で性行為に及んだもので、強姦致傷の罪は成立しないことを主張し、容疑を否認する方向で弁護することとしました。

一方で、検察官とも接触したところ、傷害内容については、被害者の方に性行為の経験がなかったことから、膣内部の裂傷が生じており、この点を捉えて強姦致傷と扱っている旨を確認できました。さらに、性行為に至るまでに交際関係があったという訳ではなく、出会った日の内に性行為に及んでいるという側面もありましたので、示談をまとめることによって、不起訴処分を得ることも視野に入れて弁護活動を行うことになりました。

御依頼者様も被疑者本人も、容疑を否認しつつも、安易にかなり年下の女性と性行為に及んでしまったこと自体については落ち度があったと感じており、示談交渉に着手して欲しいという依頼がありましたので、検察官に連絡した上で、被害者の方の連絡先を確認することにしました。

検察官からは、示談交渉の窓口として被害者の方の保護者の連絡先を開示していただきましたので、早速示談交渉に着手しました。しかし、被害者の方の保護者は、被疑者が否認しており、性行為は承諾の下に行ったと主張していることに強い憤りを感じており、直ちに示談をまとめることはできませんでした。

もっとも、示談がまとまらずに、被疑者が起訴された場合、被害者の方も公判廷において証言をする必要があり、そのことによって被害者の方に大きな精神的負担が生じることについても懸念を感じていらっしゃいました。この点については、被害者の方のお気持ちの点が大きく、示談に応じるかどうかについていずれが正解という訳でもありませんので、被害者の方に大きな決断を強いることになります。

そこで、被疑者の弁護人という立場でありながらも、被害者の方の心情にも配慮しながら、慎重に示談交渉を進める必要があります。

勾留期間が間近になった段階で、示談についても検討したいという意向を被害者の方が有するようになったのですが、勾留期間中に示談を成立させることが困難になっていましたので、検察官に働き掛けて、示談が成立する可能性が高い事や、被害者の方が慎重な判断を望んでいることを説得し、勾留満期で判断するのではなく、一度被疑者を釈放した上で、更に示談のための時間的猶予を与えて欲しいとお願いしました。

結果的に、勾留満期に被疑者は処分保留で釈放され、その後に示談を成立させたことによって、不起訴処分を獲得することができました。

同性愛者が利用するアプリを用いて性行為の相手を探し、性行為の相手を探している旨が記載されているアカウントが見つかったので、そのアカウントにダイレクトメッセージを送ったところ、実際に会うことができたので性行為に及んでしまったという御相談を受けました。

当然、無理矢理行為に及んだ訳ではなく、性行為に及ぶことについて承諾を得ていたため、犯罪とは考えていなかったようなのですが、後日、相手方が児童(18歳未満)であったことが発覚し、〇〇県青少年健全育成条例違反の被疑者として取調べを受けることになってしまいました。警察署に呼び出され、今後も何回か取調べを行う予定がある旨を伝えられたため、大変なことになったと感じ、弊所に御相談いただきました。

もともとは、同性愛者間での性行為を望んでおり、児童との性行為を望んでいた訳ではないため、相手方が児童であるとの認識を争うことも考えました。しかし、既に警察官に対しては、児童であるかもしれないことは薄々気づいていたことを話してしまっており、実際に相手方の容姿も相当に若かったというお話しでしたので、ひとまずは被害児童やその保護者との示談交渉を行うことになりました。

一方で、青少年育成条例違反との関係においては、「みだらな性交」が禁止されているにとどまり、真摯な交際を前提とする性行為は処罰対象となっていませんから、そのような主張を検討するケースも多くあります。しかしながら、本件においては、性行為目的で会うことを決めており、その旨のやり取りが残されていることもあって、真摯な交際を前提とするもので「みだらな性交」にはあたらないとする主張は行わない事にしました。

本件においては、検察官に送致される前の段階で御依頼いただけましたので、警察官に対して被害者の連絡先を教えるように依頼しました。結局、検察官に送致されるまでは、被害者の方の連絡先は教えていただけませんでしたが、検察官に送致された後、検察官から保護者の方の連絡先を教えていただけました。

最初にお話しした段階でも被害感情は峻烈ではなく、被疑者を処罰してほしいという感情も乏しい方でしたので、示談交渉は簡単かと思えたのですが、示談金を受け取ることによって児童買春のような形になることを嫌って、示談には応じたくないという意向を有していました。

そこで、示談という形に拘るのではなく、被疑者に対してどのような感情を抱いているのかを文書にしていただき、その内容を検察官に提出することにしました。また、示談という形にならなかった分、被疑者には何らの経済的制裁も与えられていない状況になっていましたから、被害者対応とは別に弁護士会に対して贖罪寄付も行いました。

その結果として、示談が成立していないにもかかわらず、不起訴処分を獲得することができました。不当に、真摯な交際の上での性交であるかのような主張をしなかったことも、被害者と円滑にお話しすることができた一因だと感じています。

コロナウイルスの蔓延によって、ここ数年は少なくなってきましたが、年末年始はお酒絡みでの御相談を多くお受けします。知人間での事件も当然あるのですが、多いのは路上で見知らぬ人と諍いになってしまい、ヒートアップしてしまった結果、アルコールの勢いもあり、必要以上に強い暴力を相手方に加えてしまうようなケースです。

本件もそのような事案で、居酒屋でお酒を召し上がった後に、路上で見知らぬ人と小競り合いになり、相手方からも軽度の暴行を受けていたのですが、依頼者様の方が体格がよく力も強かったので、顔面を殴打した力が強すぎ、被害者の方をノックアウトさせてしまったという事案でした。

泥酔中の事案で、そもそも何で諍いが生じたのかも正確に記憶しておらず、暴行に至った経緯についても正確には記憶できていませんでした。

自分が殴ったことについても正確には認識できていなかったのですが、諍いがあった直後に警察官が臨場しており、自身の容疑については全面的に認めている状況でした。もっとも、そのまま警察署に任意同行されているため、取調べを受けた際もアルコールの影響が残っており、取調べに際して何をどこまで供述したのかについても記憶できていませんでした。

そこで、今後の警察官への対応と、被害者対応をどうするのかについて協議を行い、被害者との関係については示談交渉を行いつつ、警察官の取調べとの関係では、記憶にないことまで必要以上に詳細な供述とならないようにアドバイスを行いました。

被疑者には前科前歴もありませんでしたし、計画的な犯罪でないことは明らかでしたから、相手方の傷害の程度が軽ければ、示談が成立しなかったとしても、不起訴処分に期待することができたかもしれません。しかしながら、本件における被害者の方は、鼻骨を骨折するなどの大きな怪我を負っており、少なくとも3カ月程度は通院する必要がある状況でした。

被害者の方としても、処罰感情は大きかったものの、自身が治療費等を立て替えていたこともあり、示談交渉を行うことについては前向きに検討していただけました。

もっとも、このような傷害事件の場合には、被害者の方の傷害の完治を待っていると、被疑者に対する終局処分が決められてしまうことになり、被害者の方の傷害が完治する前に示談を成立させる必要があります。

被害者の方も、傷害が完治する前に、被疑者を許す内容を含む示談をまとめることについて躊躇は感じていたようですが、その分についても金銭的に評価した上で示談金を提案していることや、刑事事件の処理速度については、被疑者や弁護人ではどうにもコントロールすることができないことを丁寧に説明して、被害者の方にはご理解いただけました。

その結果として、被害者の方の傷害が完治する前に示談を成立させることができ、不起訴処分を獲得することができました。

特に、本件については、被害者の方の傷害が重篤であったため、もし被疑者が逮捕・勾留されてしまい、20日間で示談をまとめなければならないことになっていれば、流石に早期に示談をまとめることは非常に困難だったように思います。

その意味で、逮捕を避けるために、当時のことについて正確に記憶できておらず、詳細に供述を行えなかったとしても、捜査機関からの求めには誠実に対応し、在宅での捜査として進めることができたことも、最終的に示談を成立させて不起訴処分を得られたことに繋がったように感じています。

御子息が万引きで逮捕されてしまったため、弁護をお願いしたいという依頼を御父様より受けました。通常の場合、万引きを理由に直ちに逮捕されるケースは多くないため、背景を確認させていただいたところ、今回の事件を起こす1年程前に、万引き等を理由に裁判を受けており、その結果として保護観察付きの執行猶予判決を言い渡され、今回の事件はその執行猶予期間中に行ってしまったものだということでした。

執行猶予付きの再犯の場合、極めて困難ではありますが、再度の執行猶予付きの判決を得ることは法律上可能です。しかしながら、保護観察付きの執行猶予期間中に再犯に及んでしまった場合、法律上は再度の執行猶予を付すことはできません。

保護観察付きの執行猶予判決を宣告された際には、裁判所や保護観察官から、執行猶予期間中に再度犯行に及んだ場合、まず間違いなく刑務所に服役しなければならない旨を説明されますので、御両親や御本人としても服役をある程度は覚悟されていました。

また、犯行直後に犯行現場で保安員に犯行が露見してしまったため、容疑を否認するということが困難な状況でしたし、被害店舗が大規模なチェーン店であったことから、示談交渉も難航することが予測された事案でした。

弁護士として選任された後、直ちに被害店舗に赴き示談交渉に着手しましたが、被害店舗としては、万引き犯との関係では一律に示談に応じない方針を採っているようで、示談を成立させることはできませんでした。一方で、被疑者も執行猶予期間中であることや、再度万引きに及んだ場合には厳罰が科されることを十分に認識しておりました。

また、被疑者が窃取した商品は転売を予定していたものではなく、自身で消費する予定のものでしたし、購入しようとすれば比較的安価に購入できるものでしたから、そのような状況下において敢えて窃取を試みるべき商品ではありませんでした。

被疑者の方は過去に刑事裁判を受けた際に、クレプトマニア(病的窃盗癖)にり患している可能性があることを自覚し、一時的には通院していたようなのですが、自分自身の力で万引きを辞めることができると軽信しており、通院を止めてしまっていました。そこで、弁護人として選任された後、被疑者が通院していた医院の主治医の先生に連絡をして、被疑者の現在の病状や、今後も治療を担当してもらうことについての意見書を作成していただきました。

更に、保護観察中でしたので、被疑者を担当していた保護司の方にも連絡をして、被疑者が真面目に生活をしていたことや、自分なりに更生に向けて努力していたことについて記載した嘆願書を作成していただきました。このような資料と共に、被疑者の両親も被疑者を監督する強い意欲を有していることを検察官に伝えたところ、罰金刑すら科されることなく、起訴猶予処分(不起訴処分)を得ることができました。

御依頼者様は車上荒らしの犯人として逮捕されてしまいました。犯人として特定された理由は直ちには灯ませんでしたが、本人と接見の際に事情を確認したところ、車上荒らしを行っていたこと自体は間違いないということでした。

しかしながら、そもそも車上荒らしについては、悪友の一人に誘われて協力していたに過ぎず、車上荒らしによって得られた犯罪収益のほとんどは、その友人が持ち去ってしまっており、その友人は単独でも車上荒らしに何度も及んでいるということでした。

逮捕された当初から、警察官からは余罪を疑われていましたし、共犯者である悪友の方が逮捕されているかどうかも初動では分かりませんでした。

そこで、余罪に対する捜査の端緒を与えることがないように、取調べに対しては完全に黙秘することとしました。もっとも、最初の内は、取調べに対して黙秘することが自分のためになるのか御依頼者様自身も不安に感じているようでした。

特に、捜査機関からは黙秘することによって罪が重くなるかのような説明をなされ、連日正直に話すように求められたことから、被疑者の方としても弁護人の事は信用しつつも、知っていることを全て正直に話した方がいいのではないかと感じていたようです。

結果的に、御依頼者様は別の場所での車上荒らしを理由に、複数回再逮捕されてしまいました。被害品が御依頼者様の車の中で発見されたことや、御依頼者様が被害品を転売した履歴等が見つかったことによって、再逮捕にまで至ってしまったようです。

一方で、最後に逮捕された事実に関する勾留期間が過ぎた後、私達としては起訴されることを覚悟していたのですが、処分保留の上で釈放されることになりました。その後、起訴されましたので、当初から起訴する方針だったのだとは思います。もしかすると、共犯者との関係で、共謀を明らかにする証拠が不足していたのかもしれません。

起訴される際に、検察官からは御依頼者様を再度勾留するように裁判所に求め、弁護人からの保釈請求に対しても強く反対していました。しかし、一時的ではあれ、起訴までの間に釈放することができたこととの関係で、御両親等による監督環境が整備されていることを強く主張することができました。

共犯者が存在する連続した事件であるにもかかわらず、起訴された直後に保釈を得ることができたのです。その後、検察官から裁判で提出することを予定している証拠の開示を受け、証拠を御依頼者様と共に検討した結果、全ての事実について認めることに決め、各被害者の方と示談を成立させた結果、執行猶予付きの判決を得ることができました。

年配の方を狙った引ったくりを繰り返していた結果、被害品を転売したことで足がつき通常逮捕された被疑者の弁護人として選任されました。もともとは、鞄等を被害品とするひったくりについての捜査を受けていたのですが、ひったくりの際に運転していたバイクについても、女性から強取したものであることが明らかとなり、バイクを被害品とする強盗罪として再逮捕されてしまいました。

ひったくりについて国選弁護人として選任されていましたので、バイクに対する強盗事件についても引き続き弁護人として選任されることになりました。

バイクについては、自身が運転していたことは証拠上明らかですし、そのバイクが被害者のものであったことも明らかであったことに加え、被害者もバイクを奪われてしまった後、直ちに被害申告をしていたことから、その犯人が被疑者であることも証拠上明らかであることが窺われました。

他にも様々な事情から黙秘するのではなく、当時の状況について捜査機関に対して供述する方針で弁護活動を行うこととしました。被疑者としても自身の犯行について認めており、前科前歴等の事情から服役は避けられない状況にありましたので、できる限り減刑されることを望んでいました。

もし可能であれば、被害者と示談を成立させることによって、本件についてのみ起訴猶予処分(不起訴処分)を獲得する弁護方針もあり得たかもしれません。しかし、経済的事情から示談交渉を進めるという選択肢はあり得ませんでした。

そこで、当時の状況について詳細に確認したところ、被害者の方からバイクを奪う際に、ほとんど暴力的な行為に及んでいないことが明らかになりました。

運転中のバイクを信号待ちの間に奪われ得るという事案を想像すると、万引きのような窃盗罪というよりも、無理矢理に財産を奪う強盗罪を適用することのほうがしっくりくるように思います。

しかし、被疑者の供述から、大きな暴行に及んでおらず、その供述内容もある程度信用することができるように思われましたので、
激しい暴行に及ぶことなく、バイクを入手することができた経緯について、捜査機関にしっかりと説明する方針に切り替えました。

その結果として、起訴を免れることはできませんでしたが、強盗罪でなく窃盗罪と言う罪名に落としたうえで、起訴させることができました。

息子が強盗致傷で逮捕されたという相談を御父様からいただきました。強盗致傷事件は、裁判員裁判対象事件であり、極めて重い刑罰が科される重大な事件です。警察官によって不当な供述調書が作成されることがないように、相談を受けて直ぐに接見に向かいました。

内容を確認したところ、被疑者は書店で書籍を万引きして店を出た後、バイクに乗って立ち去ろうとしていたのですが、万引きを現認していた警備員に声をかけられてしまったとのことです。驚いた被疑者は、逃げようと考え、肩を掴まれているにもかかわらず、バイクを発進させたのですが、警備員が離してくれなかったため、数メートル警備員を引きずったままでバイクを走行させてしまったとのことでした。

盗んだ書籍については高価なものではなく、警備員の被った傷害についても大怪我ではなかったものの、強盗致傷という重い犯罪が成立してしまっていたのです。

被疑者は容疑を全面的に認めており、使用していたバイク等から被疑者が犯人であることも明らかとなっていたため、容疑を否認するのではなく、何とか執行猶予付きの判決を得られるように、情状弁護を行うことになりました。

まずは被害店舗や警備員との示談交渉に着手しました。被害店舗や被害者の方は、そこまで大きな処罰感情を抱いていませんでしたので、示談自体は円滑にまとめることができました。

しかし、強盗致傷罪は窃盗罪や横領罪のように財産にだけ損害を与える犯罪ではありませんから、被害者の損害を経済的に回復しただけで、間違いなく執行猶予付きの判決が得られる訳ではありません。

そこで、このような犯行に及んだ経緯を踏まえて、今後の生活環境等について具体的に立証し、如何に被告人や被告人の両親が、本件を真摯に受け止めているのかについてアピールすることにしました。

幸い、被告人にはこれまで前科前歴もなく、真っ当に働いてきた社会人であり、少年ではなかったものの若年であったことから、その未熟さを改善するために、御両親としてどのように指導する予定があるのかについて具体的に考えることができましたし、この点について裁判官にも理解していただくことができました。

その結果として、強盗致傷という重大事件において、執行猶予付きの判決を得ることができました。

弊所では無料法律相談を行っており、まだ警察の接触がない状況下においてもお話しさせていただいておりますので、自首に関する事案については、自首に同行するところから弁護活動をはじめることが多いです。本件は珍しく、自首をした後に御相談をいただいた事件でした。

被疑者は宅配業者の従業員として勤務する中で、荷物の中に貴重品が含まれていることを知り、その中身を着服してしまいました。当然ですが、荷物が届かないことになりますので、顧客からクレームがあり、犯行が発覚してしまうことになります。雇用主に促されて弁護士に相談する前に警察署に自首したのですが、その後の手続が心配になり、ご両親と共に相談にいらっしゃいました。

御相談いただいた後に、御両親にも身柄引受書を作成していただき、罪証隠滅や逃亡を企図することがない旨を警察官に対して主張しましたが、御相談いただいてすぐに被疑者は逮捕されてしまいました。

被疑者は窃盗罪で逮捕されたのですが、自らが業務のために一時的に所持していた荷物の中身を持ち去るという態様であったため、窃盗罪というよりは業務上横領罪が成立するのではないかと考え、捜査段階から検察官に対してはそのような主張を行って参りました。

一方で、窃盗罪と横領罪の区別は、法律的な解釈の問題ですから、一般の方には理解がし難いところですし、どのような事情があれば窃盗罪が横領罪になるのかという点を、正確に理解し、横領罪に近付くように意図的に供述するという事は困難です。

したがって、捜査機関の取調べに対しては、法解釈的に正しい主張をさせるようなアドバイスではなく、横領罪が成立するような事実関係であることを適切に説明ができるように、事実関係を整理した上で、当該事実関係と矛盾を生じないような供述となるようにアドバイスをしました。

捜査段階における取調べに対して被疑者が適切に対応できたことに加え、弁護人からも被疑者の主張を法的に整理すると窃盗罪は成立しないことを説明することができましたので、結果的には窃盗罪ではなく業務上横領の罪で起訴されることになりました。

そして、法人間の取引に関する犯罪であることから、共犯者として扱われた人物はいなかったものの関係者は多数存在しており、保釈請求についても却下される可能性はありましたが、容疑を全て否認するのではなく、法解釈の部分で争うことに止めていたこともあり、早期に保釈を許可していただくこともできました。

とはいえ、弁護人が法解釈についての理論を振りかざすだけでは、検察官や裁判官の理解は得られず、弁護人が主張する内容に即した供述を被疑者がしていなければ意味がありません。被疑者と弁護人がしっかりと主張する内容を共有し、弁護方針について被疑者が理解できていたために得られた結果だと感じています。

また、裁判においては、荷物の所有者と配送業者との間で和解契約が既に締結されており、所有者の損害は回復されていました。そこで、賠償金を支払っていた配送業者との間で示談を成立させ、最終的には執行猶予付きの判決を得ることができました。

被告人の犯行によって損害を被った犯罪の被害者は荷物の所有者でしたが、事件の実態に即して、必要な対応をできたことによって、執行猶予付きの判決を得ることができました。

さらに、業務上横領の場合、自身が管理している物を着服することになりますので、窃盗等の他の財産犯と比較して、発覚することが遅くなることが多いのですが、本件においては、露見することが間違いなく予測できるような態様でしたので、そのような犯行態様の稚拙さから、犯情が極めて悪質ではない旨を主張できたことも、寛大な判決を得ることができた一因であるように思います。

いわゆるコンビニ強盗の事案で逮捕・勾留・起訴されました。

依頼者の生い立ちや,現実に発生した犯罪の軽微性について緻密に主張し,本来は法定刑は懲役5年以上と定められているため,そのままでは執行猶予をつけられない強盗罪について,酌量減軽(裁判官が犯罪の情状を勘案して刑を減軽すること)して,執行猶予付の判決となり,即日釈放されました。

御兄弟からの相談で、弟が大麻を所持していたことを理由に逮捕されてしまったとのことでした。厄介なのは、数年前にも大麻を所持していたことで逮捕され、執行猶予付きの懲役刑を科されており、現在はまだその執行猶予期間中とのことでした。

執行猶予期間中に同種の罪を犯してしまった場合、再度の執行猶予をいただくことは極めて困難で、特に薬物事件については、一部執行猶予はともかく全部執行猶予付きの判決を得ることはほとんど不可能といえます。

最初は、実刑を前提に減刑を目標とする弁護活動か、何らかの理由で犯罪の成立を否認する方針をとるしかないと感じていました。接見に行って話を聞いたところ、現時点においては取調べに対して黙秘をしており、携帯電話の解析についても同意をしなかったということでしたので、黙秘を継続させることにしました。

黙秘させる場合、捜査機関の取調べには何も答えさせない事になるのですが、だからと言って当然のことながら、弁護士も本人に話を聞かなくていい訳ではありません。被疑者本人に聞いたところ、今回発見された大麻は、自室から発見されたものであるものの、被疑者自身はその大麻の存在を認識しておらず、前回の裁判以降、大麻を購入したり使用したりしたことはないとのことでした。

一方で、大麻が発見された場所は、被疑者の自室であり、被疑者以外の人間が大麻をその場所に保管していたということは考え難い状況でした。仮に、前回の裁判の際に問題となった大麻の一部が、そのまま自室に置き忘れられていたに過ぎない場合、執行猶予付きの判決を宣告された後に、改めて犯罪を意図的に犯したわけではありませんので、実刑判決を免れ得る可能性が出てきます。

そこで、単に黙秘して、自室から大麻が発見されることになった経緯について、一切の説明を拒むのではなく、前刑の際に使用していた大麻の一部が残されていたに過ぎないことについても主張する弁護方針をとることになりました。

前刑の際から自室にあった可能性を主張することに決めたものの、執行猶予付きの判決を宣告されてから、そこまで長い時間が経過していた訳ではなく、過去の人間関係について精算し切れていなかったこともあり、携帯電話の解析について同意し、内部のメッセージについて捜査機関に全て確認させることについては躊躇される事案でした。

そこで、携帯電話の解析については最後まで同意せず、パスコードは捜査機関に伝えないことにしました。捜査機関としては、大麻が発見された経緯について、被疑者本人から聞き出すしかありませんでしたし、過去に利用していた大麻が残されていただけだという弁解を被疑者が始めたことから、他の質問に対しても応え始めるのではないかと期待し、連日のように取調べが行われることになりました。

しかし、被疑者としても、何故自室に残っていたのかについて、詳細な説明をすることはできませんでした。もし、大麻がそこに残されていることを分かっていれば、このような状況になる前に廃棄するなどするのが当然ですから、説明できないのは当然なのですが、そのような被疑者の供述内容が、身勝手で不自然だと評価される可能性がありましたし、必要以上の内容は供述しないようにとのアドバイスは継続して行いました。

その結果として、大麻の所持に関する執行猶予期間中に、再び大麻の所持を理由に逮捕されたにもかかわらず、起訴されることなく不起訴処分を得ることができました。

日本人の奥様から、外国籍の夫が薬物に関連する何らかの犯罪で逮捕されてしまったという御相談を受けました。薬物犯罪であること以外に、奥様は内容を承知していなかったので、早速被疑者と接見することになりました。

被疑者は、日本で就業・居住していたのですが、同郷の知人の依頼を受け、同人から紹介された外国籍の人間から預かったダンボールを、知人が指定する建物に運び入れたところ、張り込んでいた警察官に逮捕されてしまったとのことでした。

被疑者本人もなぜ自分が逮捕されたのかについて理解しておらず、確認したところ、麻薬特例法(国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律)違反の罪で逮捕されていました。

捜査機関に確認し、勾留状等を確認したところ、今回問題となった荷物の中には3000gを超える大麻が梱包されており、捜査機関は日本にその荷物が持ち込まれた際に中身を確認していたようでした。捜査機関はその上で、中の大麻を取り除き、外国籍の人間に送り届けられたのを確認し、同人を尾行していたところ、被疑者がその荷物を受け取ったことから、被疑者を逮捕したようでした。所謂、クリーンコントロールドデリバリーの事案といえます。

当然、被疑者は中に違法なものが含まれているとは知らなかったと言っていましたので、容疑を否認し早期に釈放を求める方針を定めて弁護活動を行いました。

故意及び共謀がなかったことを検察官に対して主張し、結果的に、不起訴処分を得る事が出来ました。

違法な薬物を海外から輸入する事案においては、大量の違法薬物が一度に運び込まれるケースが多く、そのような場合は営利目的による犯行であることは明らかですから、起訴されて有罪判決が宣告されてしまうと、長期の懲役刑が宣告されてしまう可能性があります。

ですから、被疑者の人生が正にかかっているといえます。仮に、日本人であれば執行猶予付きの判決を期待することができる内容であったとしても、被疑者が外国籍の場合には、どのような在留資格を有していたとしても強制退去事由に該当してしまいます。外国籍の被疑者の場合、薬物事件を理由に前科がついてしまうこと自体、これまでの人生を大きく変えてしまうことになりかねないのです。本件についても、どうしても被疑者に前科を付することは許されない事案でした。

一方で、薬物事犯の内、営利目的が問題となるような多量の薬物が問題となるケースについては、多量の薬物が送られているという事実だけで、犯罪組織との繋がりが推認されることになります。そして、犯罪組織としても、きわめて高価な薬物を輸入するなどしている以上、その薬物が紛失したり、着服されたりすることがないように、事後的に回収できるような計画を立てていることが窺われますから、そのような事実だけで受領者と犯罪組織との間の共謀が推認されるようなことがあります。したがって、被疑者とは無関係な事実から故意や共謀が推認されてしまう事もあり得るのです。

本件において、被疑者は別の仕事でしっかりと生計を立てていましたから、そのような薬物犯罪に関与する動機がない事や、通帳の写し等を準備した上で、何のお金か分からないような多額の振込がないことなどをしっかりと主張し、犯罪組織とは無関係であることを検察官に具体的に説得しました。

その結果として、不起訴処分を獲得することができました。

日本国籍を有さない外国の方からの御相談でした。泥酔してあまり正確に記憶はしていないものの、激しく飲酒した帰り道で警察官から職務質問を受け、近くにあったマンションの備品を蹴って破損したのではないかという疑いをかけられたとのことでした。

酔っぱらっていたことに加えて、警察官の話す日本を十分に理解できなかったことから、被疑者として取り扱われているのか分からないとの事でしたが、前科がついてしまうと在留資格に悪影響があるかもしれないということに加え、勤務先に知られることなく穏当に解決したいという御意向から御依頼を受けました。

早速、担当警察署に連絡して状況を確認したところ、器物損壊の罪の被疑者として取り扱っているということでしたので、迅速に弁護人選任届を提出しました。
また、警察官の話す日本語が分かりにくいということでしたので、日本語が全く理解できないという方ではありませんでしたが、今後の連絡については弁護人を経由するようにお願いしました。

御依頼者様としては、泥酔しておりあまり覚えていないものの、意図的に他人の物を破壊することはあり得ないという気持ちが強く、容疑を否認しておりました。しかし、記憶がないことから、確実に何もしていないとは言い切れないことや、酔った勢いで何かにぶつかってしまったということはあり得そうだということでしたので、もし破壊された備品が高価なものでなければ、示談交渉についても進めていくということになりました。

検察官を通じて被害者を確認したところ、被害者とされているのはマンションの管理会社でした。マンションの備品のライトのようなものが損壊されたという事のようでしたが、それだけでは賠償金がハッキリしませんでしたので、示談交渉を途中で決裂させる可能性を踏まえた上で、被害会社に連絡したところ、そこまで高価なものではなく、実費を負担する程度であれば、御依頼者様としても示談の方向で弁護してほしいという事でしたので示談交渉を継続することになりました。

こちらから、賠償の意思を早い段階で示したこともあり、実費分の負担だけで、被疑者を許す旨の文言を入れた示談を成立させることができ、最終的に不起訴処分を獲得することができました。

また、本件については、被疑者の方が日本国籍を有していない事との関係で、初動の段階では、逮捕する可能性についても警察官から示唆されておりました。当日の内に逮捕されていないこともあり、逮捕の可能性が高い事案とは考えておりませんでしたが、一度逮捕されてしまうと、外国籍の被疑者との関係では勾留を回避することが極めて難しいことは承知しておりましたので、捜査に協力する意向があることを警察官には説明しましたし、日本語での意思疎通が困難な局面については、弁護人が積極的に介在しました。

特に、呼び出しには素直に応じるなどしていたものの、記憶がないこともあり、容疑を完全に求めていませんでしたから、在宅捜査の形を維持することができるようにも努めました。

夫を殺害したとして娘が逮捕されてしまったという御両親からの相談を受け、御嬢様の弁護を担当することになりました。

もともと、被害者となった方は精神的に不安定な状態にあることが多く、夫婦仲は悪くなかったものの、これまでにも何度か警察を呼ぶようなことがあったということでした。それでも、御両親としては、娘が夫に対して殺意を抱くことはあり得ないと仰っていましたので、まずは接見して状況を確認することになりました。

接見して話を聞いたところ、被疑者としても被害者の異常な言動に疲れ果てており、精神的に追い詰められていたところはあったものの、殺してしまいたいとは過去に思ったことはなかったということが分かりました。

その上で、何故殺害してしまったのかという点については、被害者側も自身の不安定な言動が被疑者を追い詰めていることを自覚しており、諍いが生じた直後に、自分のせいで被疑者に大きな負担がかかっていることを受け止めきれないから、自分を殺害してほしいと頼んだため、その依頼に応じて、殺害してしまったとのことでした。

殺人罪という罪名のまま起訴されてしまうと裁判員裁判対象事件となってしまい、勾留期間が長期化することになりますし、量刑としても執行猶予付きの判決を得ることが困難となってしまいますので、まずは嘱託殺人の罪に罪名を変更させることを目標に、弁護活動を行うことになりました。

嘱託殺人罪に罪名を変更させるためには、被害者が自身を殺害してほしいと被疑者に頼んだ事実があったことを明らかにする必要があります。しかしながら、被害者の方はすでに亡くなってしまっていますから、直接証言を引き出すことはできません。

また、突発的な事件でしたから、事前にそのような意思を書面で準備していたという事実もありませんでした。したがって、被害者が自身を殺害することについて依頼するかもしれない状況だったことを示す間接事実を調査することから始めました。

具体的には、被害者の方は従前、精神科医に通院しておりましたので、主治医から話を聞いたり、被疑者の両親や被疑者本人から、被害者の方の通院状況や、これまでに警察を読んだ時の状況等を聴取しました。また、被疑者と被害者との間には子供がおり、子供の先生等にも話を聞きに行ったところ、被害者の方が度々自殺を仄めかしていた事実等も明らかになりました。

このような事実を調査した上で、被害者からの嘱託があった可能性が否定できないことを検察官に説明しました。

また、本件については、被疑者が被害者を殺害した事実は争っておらず、被害者が亡くなっている以上、被害者が自身を殺害することを嘱託していた事実を直接話すことができるのは被疑者だけでしたので、黙秘させるのではなく、当日の状況をできる限り具体的に、説明するような弁護方針をとりました。

結果として、逮捕時には殺人罪だった罪名が、起訴される際には嘱託殺人の罪に変更され、保釈も起訴直後に認めていただけましたし、最終的な判決としても、執行猶予付きの判決を得られることができました。

娘が逮捕されてしまったというお母様からの依頼で、警察署に接見に行くことになりました。お母様は内容を把握することができておりませんでしたが、被疑者に接見した結果、過去に在籍していた職場の同僚に対して、脅迫文を自宅のポストに投函するなどしており、投函した文書以外にも、何度も匿名でメールを送信するなどしていたことから、脅迫罪及びストーカー規制法違反の罪で逮捕されてしまったとのことでした。

被疑者は、自身が文書を投函した事実やメールを送信していた事実について認めており、文書についてはその内容から犯人性が認められてしまいそうであったことに加えて、メールの送信履歴についてもすでに取調べで確認されていたため、事実自体を争うことは困難な事案でした。

被疑者には前科前歴は認められませんでしたが、スト-カー行為に対しては厳しい判断が下されることがあり、また社会情勢的にもストーカー行為がエスカレートした結果、被害者が殺害されるような事案も発生していたので、そのような事案と同種であるかのように扱われることがないように、その経緯についてしっかりと主張する必要があるように感じました。

そして、その経緯について被疑者から話を聞く中で、「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」という、ストーカー規制法が定める目的要件を満たさないのではないかという疑念が生じました。

そこで、客観的な行為は争わずに、目的要件を充足しない事を理由に、ストーカー規制法違反の罪についてのみ無罪を主張することとしました。

ストーカー規制法違反について無罪を主張し、その主張が認められた場合であっても、脅迫罪の成立は認められてしまいますので、ストーカー規制法違反の部分についてのみ無罪を主張すべきかどうかについても、被疑者や被疑者の両親としっかり話し合いを行いました。

その結果として、捜査機関の見立て通りにストーカーとして扱われることとなった場合、厳罰を科されることも予測されることから、裁判が長期化することになったとしても、無罪を主張するという方針が定まりました。しかし、裁判が長期化することになると、その分、勾留の期間が長引くことに繋がりかねません。

そこで、無罪は主張しつつも、証拠上明らかに認められるような客観的行為については争わず、客観的行為の存在を証明するための書証については積極的に証拠として用いることに同意し、検察官立証を迅速に進める手段をとりつつ、早期の保釈を許可してもらえるように努めました。

結果として、裁判の途中で被疑者の保釈を許可していただくことができました。

基本的には、無罪を主張する場合、被疑者にとって有利な事実を認定できる証拠でなければ、検察官請求証拠に対しては証拠として用いることについて安易に同意するべきではありません。

しかしながら、争いがない事実を証明するための証拠についてまで不必要に不同意意見を述べることは、裁判の長期化に繋がりますし、その結果として保釈が却下される要因にもなります。保釈の許可を得るために不利な証拠についてまで同意するべきではありませんが、慎重な判断が求められます。

本件においては保釈の許可をいただきつつ、被害者に対して恋愛感情を抱いていなかったことについて、被疑者の日記等、詳細な証拠から裏付けを行い、一審の段階では無罪判決を得ることができました。