命や健康というかけがえのないもの、取り戻せないものをどう償うか?高い専門性を武器に医療問題に取り組む
興味を持っていた医師の世界と法律を通じてつながる
ーー弁護士になろうと思ったきっかけは何ですか。
高校時代は医師になりたいと思っていたのですが、残念ながら文系科目のほうが得意だったのでその道はあきらめて、日本語教師になろうと日本語に関する学部へ進学しました。
ただ、勉強するうちに「専門家になって、1つの道を極めたい」と思うようになったんです。周囲に司法試験の勉強をする友人がいたため、その影響で私も司法試験を目指すようになりました。
現在、医療問題に強い事務所に所属したのは、特に高校時代の夢を意識したわけではないのですが、もともと興味があった分野と巡り巡ってこういう形でつながるとは思ってもみませんでした。
ーー医療問題は、さまざまな弁護士業務の中でも専門性が高いイメージがあります。
家事事件や刑事事件を主に手掛けている弁護士が医療事件を扱えないということはありません。ただ、同じ分野の事件を多く手掛けて経験を積んでいる弁護士のほうが、その分野に強くなるのは当然のことです。
医療事件は、医療の専門用語が多く並ぶ資料を読んだり、協力医を探したりする必要があり、ある程度の知識や経験がないとそうした作業に多くの時間が必要になります。他の分野の案件も手掛けながらとなると、相当苦しいのではないでしょうか。
前述のとおり、医療事件専門の弁護士でなければ案件を扱えないわけではありませんが、医療の分野を専門的に手掛けている、知識と経験を積んだ弁護士のほうが、事情に明るい分、クオリティーの高い仕事がしやすいと言えるでしょう。
依頼者本人だけでなく家族の今後も考えてベストな解決を目指す
ーー医療問題を手がける上で心がけていることを教えてください。
例えば、検査でがんの見落としがあったケースで、「ちゃんと発見していれば運命が変わっていたかもしれない…」という事案があるとします。
若い働き盛りの方であれば、早く発見して治療していれば、結果はかなり変わっていたでしょう。一方、年配の方で他に病気もお持ちであれば、早く発見したとしても、少なくとも若い方ほどは違う結果にならなかったかもしれません。
でも、どちらの方も「ちゃんと見つけてもらっていれば」という悔しさを感じていることに違いはありません。
医療事件では、一人一人の事情や気持ちに寄り添いながら、どのような観点から病院側の責任追及をしていくかを考えていきます。場合によっては、依頼者の余命も考慮して対応を進める必要があります。依頼者が望むのがスピードか、賠償額か、という本人の希望も大事です。加えて、依頼者の世話をする家族、残される家族のことも考える必要があります。
その案件がどの程度の賠償請求ができるか、どのくらい時間がかかるかの見通しを立て、依頼者や家族にとってベストな解決を探っていきます。
依頼者にとって何が「解決」になるのかを考える
ーー依頼者は「訴えたい」と希望していても、責任追及が難しい案件もありますか。
それはしばしばあります。因果関係があり病院側の過失が明らかではあるけれど、本人が思うほどの賠償額が請求できないケースもあれば、因果関係がはっきりしない、過失とまで言い切れないために、訴えることが難しいケースもあります。
そのような場合は、依頼者の悔しさや腹立たしさをまず受け止めて、落ち着いていただいてから、責任追及がなぜ難しいかを説明します。
しかし「それでも病院を訴えたい」という方もいます。法律の専門家として、「これは責任追及が難しい」と見通しをつけた案件でも、争う方向で進めることはできます。しかし、それによって依頼者は大切な時間とお金を費やし、大きなストレスを抱えることになります。結果的に依頼者のためにならないと思えば、難しいとはっきりお伝えし、納得してもらえるよう理由を説明するのも大事なことです。
ただ、私の意見がすべてではありません。
一人の弁護士に相談して、その答えに納得がいかなければ、他の弁護士にセカンドオピニオン、サードオピニオンを求めてもいいと思います。弁護士によって積んできた知識も経験も違いますので、遠慮なく、納得がいくまで相談してください。