笹瀬 健児 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
高校2年の2月に失明しかけ、自分の人生が一瞬のうちに壊れる体験をし、大学進学も断念しました。高校3年の秋に少し目が良くなり、大学へは行きましたが、たとえ就職して一生懸命に働いて出世したところで失明すれば失業の憂き目にあってしまうと思うと、将来にも希望が持てず、就職する気が起きませんでした。
大学には司法試験を目指している人が多く、弁護士であれば失明したとしても何とか食べていけるような気がして、弁護士になることに決めました。
仕事の中で嬉しかったこと
クライアントの要望を実現できたことです。少年事件では非行なしの不処分決定を獲得しました。刑事事件では、地裁で実刑になった摂食障害者の万引事件の控訴審を引き受け、万引きは摂食障害の病状である旨を主張して再度の執行猶予を獲得したり、前科12犯で仮出獄中に再び犯行に至ったスリの累犯者を深い反省悔悟に至らせ、前刑の半分である懲役3年を獲得しました。
家事事件では、破綻した婚姻関係の間に入って復旧し立て直したり、何年も裁判で争い一生別れないと宣告された有責配偶者について交渉による早期の離婚を成立させたり、発達障害児について45歳までの養育費支払を調停で成立させたり、将来の相続放棄を絡ませ婚外子に対する一括1億円の養育費の支払を交渉で獲得したりしました。
そのほかにも、事案が難しく5年以上も争った医療過誤訴訟で勝訴的な和解金を獲得したり、いじめによるPTSDで詳細かつ緻密な医学的立証により、クライアントの希望通りの賠償金を獲得したりしました。
交通事故でも、精神腫瘍学について学び大学教授の意見書を提出して交通事故で癌になったとのクライアントの主張を前提とする和解金を勝ち取ったり、既往症を理由に低額な金額を提示された障害児の事案で健常児相当の賠償金を勝ち取ることもできました。
警察にも弁護士にも助けてもらえず20年間も被害を受け続けた近隣による嫌がらせ事件を刑事告訴により終結させたり、借用書のない貸金について尋問によって貸金であるとの裁判所の事実認定を勝ち取るなど、数々の成果をあげることができました。
このような成果をあげることができたのも、クライアントの要望を拒絶せず、実現してあげようとしたからだと思います。努力と工夫で何とか実現出来たその成功体験の積み重ねが、大きな自信となり、その後の難事件に挑戦するエネルギーとなりました。
弁護士になって大変だと感じること
成果を出すための戦略を立てることが一番大変です。でもそこが醍醐味であり、やりがいでもあります。
クライアントがある金額が妥当だと主張するには、それなりの背景事実があるはずです。クライアントの要望を軽々しく無理だと退けず、クライアントからその背景事実を詳細に聴き取り、クライアントの辿った道を追体験した結果、私の良心が揺さぶられ、クライアントの価値判断こそが正義に適い公平であると思えれば、その価値判断を原理原則に落とし込む作業をします。
裁判所では裸の価値判断はなされず、社会的に承認された一定の原理原則に則って事件が処理されることになるので、法解釈の形に落とし込む必要があるのです。クライアントの正義が、弁護士の正義になり、それが最終的には裁判所の正義になるというイメージです。
仕事をする上で意識していること
クライアントが「自分の人権が護られた、正義が実現された」と実感できるようにすることです。
関心のある分野
どの分野にも関心がありますが、すべての分野に共通の基礎となるリーガルカウンセリ ングには特に関心があり、法科大学院で教え、「リーガルカウンセリングの手法(第一 法規)」も出版しました。
今後の弁護士業界の動向
現在の大競争は当面続き、営業活動に熱心な弁護士が暫くは流行るでしょうが、いずれ は真の実力を備えた弁護士だけが生き残る時代が来ると思います。
真の実力を備えた弁護士とは、リーガルカウンセリング、リーガルネゴシエーション、 起案、尋問の四つの能力に秀で、弁護士マインド(基本的人権の擁護と社会正義の実現 についての使命観)をしっかりと持っている弁護士のことを指します。
この4つの能力については、弁護士ドットコムのオンラインセミナーで実践的なお話し をさせていただきました。