食品コンプライアンスに注力〜商品企画や広告宣伝から携わり、安心・安全な新商品を世に送り出す
世界的メーカーから中小企業まで、様々な企業から寄せられる食品の相談に対応
ーー食品コンプライアンスの分野に取り組むようになったきっかけをお聞かせください。
顧問先の企業からの相談がきっかけです。ある食品メーカーが消費者庁からの措置命令を受けることになり、私の顧問先が、消費者からのクレームや問い合わせへの対応を担当することになりました。法律的な問題も含んでいたため、顧問先から相談を受けて一緒に対応しました。
それまで、食品関係の案件は全く手がけたことがなかったのですが、この件をきっかけに食品関係の案件に関与するようになりました。食品表示問題への法的なアドバイスや、食品に関する不祥事・トラブルが生じたときの対応など、様々な依頼にお応えしています。新商品の発売にあたっては、商品企画の段階から携わり、パッケージデザインや広告の打ち出し方に関する法的なアドバイスをおこなっています。
世界的に名が通った企業から、従業員数人・数十人規模の中小企業まで、幅広く依頼を受けています。顧問先からの案件だけではなく単発の相談も承っています。事務所のホームページを見た方から問い合わせをいただくことも多いです。
ーー食品コンプライアンスの分野を手がける上でのやりがいは何でしょうか。
やはり口に入れるものなので、皆さんの健康に直結する分野に携わっていることについて、責任とともにやりがいを感じます。
また、この分野は非常に動きが激しいです。今、特にホットなのは機能性表示食品ですね。機能性表示食品として発売すると、一般食品と比べて売り上げがぐっと伸びます。様々なメーカーから新商品が相次いで発売され、マーケットがどんどん拡大しています。
パートナー企業と協力して機能性表示食品の企画・申請の段階からアドバイスを担当することもあります。また、機能性表示食品の表示や広告については、まさに法的なアドバイスが不可欠な分野です。時代とともに移り変わる食のトレンドに関与し、新商品を世に送り出すためのお手伝いができるのはこの分野ならではのおもしろさです。
「売れる商品」として送り出すためには、リスクを取ることも必要
ーー食品関連の案件を手がけるにあたって、情報収集はどのようにされているのですか。
まず、食品の事件は複数の法律がまたがって問題になることが多いです。法律を調べるだけではなく、解釈の指針を理解するために、行政機関が出している政令や省令、通達などもチェックします。
調べてもわからない場合は、消費者庁や厚生労働省などに直接電話をして聞きます。食品衛生について問題となる案件であれば、クライアントがある地域を管轄している保健所に行き、担当職員の方に説明してもらうこともあります。
ーー日本の食品に関するルールは、外国と比べて厳しいのでしょうか。
非常に厳しい部分と、あまり明確に決まってない部分が混在しています。
外国の方からはよく「日本の規制はきっちりとした正解がない」と言われます。例えば広告を打ち出す場合に、「どこまで言って大丈夫なのか」という線引きは、ちょっとしたさじ加減で変わってきます。日本語の微妙な表現の違いでセーフになったりアウトになったりするところが、外国の方にはなかなか理解しにくいようです。
ルールが明確でないことをうまく利用して、アウトかセーフか微妙なところを攻めている商品は非常によく売れます。健康意識の高まりもあって、「身体にいい」と思える食品には消費者の手が伸びやすいです。虚偽や誇大な表示が許されないということは前提ですが、ある程度リスクを取って微妙なところを攻めた表示については、多くのメーカーが取り入れており、ヒット商品も多いと感じます。
ビジネスなので、ある程度リスクを取らないとリターンを得られません。広告にしてもパッケージデザインにしても、全くリスクがないものは、法規制上は安全かもしれませんが、他方で訴求力が低く売れないことが多いのではないかと思います。
広告やパッケージなどの表示について法的アドバイスをする際、「少しでもリスクがあればやめた方がいい」と慎重になりすぎるとビジネスの芽を摘んでしまうことがあります。他社の先行商品の表示などを参考にしながら、うまくリスクを取りつつ、アウトにはならない絶妙なラインを攻める。バランスは難しいですが、やりがいを感じる部分です。
ーーこれまで手がけた案件の中で、印象に残っているものはありますか。
ある外資のクライアントから、「アメリカで販売している食品をそのまま日本でも一般食品として売りたい」という相談を受けました。
しかしながら、その食品は、日本の法規制上、アメリカで売っているものと全く同じ表示やパッケージデザインのまま一般食品として発売すればアウトになるようなものでした。この食品について、企画段階から携わり、パッケージの形状やデザイン、食品そのものの形などについて企業の担当者と打ち合わせし、日本で一般食品として売るための調整をおこないました。
アメリカで普通に売られているものが、なぜ日本で売れないのかというところから説明して、そのクライアントの社内弁護士たちともディスカッションを重ねました。広告やパッケージデザインについても、コマーシャルやマーケティングの部門の担当者は訴求力の高い表示をしたいという意向を持っています。クライアントの様々な部署の担当者とアイディアを出し合いながら進めました。
依頼を受けてから商品として発売されるまで、半年ほどかかったでしょうか。店頭に並んでいるのを見たときは嬉しかったですね。企画から発売に至るまで、ビジネスの中枢に入って関与した経験として、印象に残っています。
「トレンドを追いかけることが面白い」機能性表示食品に注目
ーー今後、食品コンプライアンスの分野で取り組んでいきたいことはありますか?
先ほども触れた機能性表示食品は個人的にも注目しています。トレンドの移り変わりが激しく、今何がホットなのか追いかけるのがおもしろいんです。
数年前は免疫が非常に注目されていて、シールド乳酸菌が配合されたヨーグルトなど、免疫を高める成分が入っている商品がよく売れていました。今注目されているのは睡眠です。中でも「Yakult1000」は睡眠の質を高める乳酸菌が入っているということで、大ヒットしています。
機能性表示食品の範囲は徐々に広がってきていて、卵や温州みかんのような生鮮品の中にも、機能性表示食品として売り出されているものがあります。非常に将来性が大きい分野なので、表示や広告への法的アドバイスなどを通して、できる限り関わっていきたいですね。