鈴木 勝利 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
中学1年のとき(1966年)、正木ひろし弁護士の「裁判官~人の命は権力で奪えるものか~」を読み、「こんな弁護士になりたいな」と思ったのがきっかけです。
この本は、「八海事件」という死刑の冤罪裁判を厳しく弾劾するもので、 同弁護士は、戦時中、取調べ中の被疑者を撲殺した警察官を告発するに際し、埋葬された被害者の遺体から首を切り取り東京帝大法医学教室の古畑種基教授のもとに持ち込むという熱血漢でした。
学生時代
1・2年のころは普通の学生と一緒で、真面目に授業に出ていました。明治大学には、1年次から司法試験の基礎的な勉強をするクラスがあったので、そこに行ってみたところ、司法試験を目指す学生が教室に溢れ、講義も何のことやらさっぱり分からなかったので、すぐ行かなくなりました。司法試験の勉強を始めたのは3年も終わり頃からで、4年になると、授業にほとんど出なくなりました。
受験時代に苦労した話や、勉強するなかで工夫したこと
苦労はしませんでした。といっても、簡単に合格したわけではありません。受験勉強中、午後3時になると友だちと学校近くの銭湯に行き、その帰りに美人姉妹のいる酒屋で立飲みをするなど、受験生活を楽しんでいました。
その結果、短答式には4年から受かっていたのですが、論文式は卒業後3回連続で落ちてしまいました。そして4回目は、ついに短答式にも落ちてしまい、その時には、本当に反省しました。
恥を忍んで、早く合格した後輩のところに勉強法を聞きに行きました。そしたら、後輩が、基本書だけでなく参考書も使うべきだと教えてくれました。そのアドバイスに従い、ようやく合格することができました。
論文試験は、今話題となっている問題あるいは基本的かつ重要問題について出題される傾向にあり、そこに的を絞って勉強するのが受験勉強で、そのための受験技術も予備校を中心に確立されているようです。しかし、勘違いしてはいけないのは、司法試験に合格することと、法律を理解することは別だということです。
法曹を志す皆さんは、法学部在学中、未修者についてはロースクール1年次に、基本書と引用法令を繰り返し読むことを勧めます。原則の部分を軽んじ重要問題だけを掻い摘んで勉強しても、それは役に立ちませんから、注意してください。
最初に入所した事務所を選んだ理由と、弁護士になりたての頃に工夫したこと
当事務所の所長が明治大学の先輩で、その誘いで入所しました。なりたての頃から、依頼者の要望にすぐ答えること、ダメと思われる事件でも何とか解決策を見出す工夫をすることの2点を意識していました。よく考えて工夫すると、何か解決策が見えてくるから不思議ですね。
印象に残っている案件(事件)
単純に面白い事件といえば、某メガバンクの本店に現金の差押に行ったことがあります。銀行が慌てふためき、ドラマのようで、面白かったですよ。
緊張した事件として、暴力団組長を殺人で告訴し、懲役17年の判決を得た事件、某大学から過激派集団を追放し、以後数年にわたり警視庁の警護を受けた事件があります。
また最近では、御殿場の少年10人による強姦未遂事件があります。公判中、被害者が犯行日時に他の男と性交渉を持っていたことがバレ、常識では無罪のはずなのに、自白が重視されて有罪となった事件で、「八海事件」や「足利事件」などと似たところがあります。
関心のある分野
事務所としては、刑事、家事、一般民事、企業法務、労務、特許商標あるいは海外案件など、偏りなく何でもやるようにしています。特に、所長の私は、特定の分野に偏らないよう幅広く勉強しています。広く深くですね。それが不正でない限り、貴賤や訴額の多寡にかかわらず、どのような依頼でも受け容れるのが、当事務所100年の伝統です。
今後のビジョン
今までと変わらず、法廷活動中心の事務所としてやっていこうと思います。法廷活動は弁護士業務の中核であると信じています。弁護士の使命は人権と社会秩序を守ることですが、人権の最後の砦は裁判所です。だから、裁判に参加しないと、弁護士の使命を十分に果たすことができないと思います。
今後の弁護士業界の動向
今の法曹養成制度は破綻していると思います。ロースクールができた動機が、まず不純です。ロースクールと新司法修習制度は、先見性と理念に欠けた弁護士会、法曹養成に何の貢献も果たし得なかった大学の両者が、経済界の要求を丸呑みしたことから生まれました。
法曹は、三権分立という統治制度のひとつを担っています。その法曹の数と質を、規制緩和とか自由競争という経済界の価値基準で決めることは間違っていると思います。
「人権と社会の秩序を制度として守るためには、どの程度の質と量の法曹が必要か」という観点から法曹養成制度が論じられなければならなかったのに、この検証をしないまま、合格者増だけに目を奪われ、法曹養成の責任の多くをロースクールに押し付け、質の低下を招いたことは、わが国の司法において不幸なことと思います。
私は、弁護士が増えること自体は良いことだと思っています。増えた司法試験合格者の数を、今度は減らそうという動きがあるが、それもどうなのかと思います。今、必要なのは、質の高い法曹養成制度を再確立することだと思います。
弁護士界も、ただ「喰べていけない」という貧しい考えから脱し、司法制度の本質を踏まえた議論と提案をしていくべきと思います。また、個々の弁護士は、世界のあらゆる分野に進出していくべきで、そうなると思います。
弁護士にもっとも求められると思う力
弁護士には、高い倫理性、深い教養それに豊かな常識が求められます。また、これからは、国際的な人間力が必要になってくるでしょう。文化の違いを理解し、自己主張ができる人間力と、それを支える語学力、コミュニケーション能力が必要だと思います。その為には、弛まぬ努力が必要です。