尾原 秀紀 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
東京大学法学部3年生の頃でしょうか。公務員試験は勉強の範囲が広いと感じたため、これに比べて、専門性は高いですがやるべきことが限られている司法試験を目指そうと思いました。受かる保証はありませんが、一留くらいまでは頑張ってみよう、という気持ちでしたね。
留学したいという気持ちがあったので、裁判官や検察官よりも弁護士になる方が留学しやすいのではないかと漠然と思っていました。
受験時代に苦労した話や、勉強をする中で工夫したこと
初めて短答試験を受けたのが大学3年のとき。しかし、まだ法学部の授業が始まったばかりだったので、「不法行為」という概念も知らないままの受験でした。次の年は、満を持して臨んだのですが、短答試験で落ちてしまいました。
展望がないままでしたが、留年は1年までと決めていた大学5年生のとき、予備校にも通って一生懸命勉強して、合格することができました。
最初に入所した事務所を選ばれたきっかけ
先輩の弁護士から誘っていただき入りました。4~5人の規模の事務所でした。いくつか事務所を回ったのですが、先輩の人柄によるところが大きかったです。私が弁護士登録をした1989年(昭和64年/平成1年)は、ちょうどバブルの最盛期に近かったことと、まだ合格人数も少なかったことから、売り手市場だったので、希望すれば何にでもなれる良い時代でした。
英知法律事務所を開設されるまでの歩み
最初に入所した事務所のクライアントには、金融機関が多かったので、業法の案件に多く取り組みました。弁護士登録して5年目、31歳のときにボストン・ユニバーシティへ留学。バンキングやファイナンスを中心に学びました。
帰国して7~8年間働いて経験を重ね、40歳前くらいにそろそろ独立してやってみたいという気持ちで、「英知法律事務所」を開設しました。
現在取り組んでいる案件
英知法律事務所は、大阪の事務所と提携して、企業法務を専門に取り組んでいます。私は、主にファイナンス案件が多く、法分野でいうと、会社法、金融商品取引法、商法、信託法等になります。
印象に残っている案件(事件)
ある金融機関の保有資産を証券化した案件です。既にアメリカでは進んでいたのですが、当時の日本ではあまりメジャーな取引ではなかったので、印象に残っています。
伝統的な金融の仕組みは、銀行から資金を借り入れて担保権を設定するというものでしたが、債務会社で会社更生手続が開始されると、担保権実行に制限が加えられ、また、優先権が認められる範囲も満足に回収することができない等のリスクがあり、金融が滞りがちでした。
これに対し、証券化は、不動産や債権をいったんSPVや信託に移して倒産隔離の仕組みをつくることで、伝統的なコーポレートファイナンス型と比較して回収のリスクを低下させ、安心してファイナンスすることができ、調達側としてもそのことにより、より低利の調達ができるようになるというメリットがあります。
関心のある分野
やはり専門とするファイナンスや会社法の関係に関心があります。また、例えばCO2の削減を目的として、60年くらいのサイクルでの企業による森林再開発など、環境問題は伸びる分野ではないかと考えています。
今後の弁護士業界の動向
弁護士同士の競争が激しくなりますし、司法書士や行政書士の取扱業務とのせめぎあいもますます顕在化するでしょう。業界エゴからいえば競争しないで済めばそれに越したことはありませんが、弁護士だけあまり競争したくないと言ったところで、認められるはずもありません。
弁護士に対する市場のニーズは積極的に作っていく側面もあります。置かれた状況を受け容れて、いかに勝ち抜いていくかを考えていかなければなりません。
もう一度法曹人生を歩むなら、法曹三者のどれを選ぶか
当時と今とでは社会状況が異なりますから一概には言えませんが、おそらく弁護士を選ぶと思います。良い選択をしたと思っています。
弁護士に最も求められると思う力
法律相談では、「100%こうなります」という提案ができればよいのですが、必ずしも間違いないというアドバイスができるとは限りません。そのような中で、リスクの部分まで説明して納得してもらえる力が大切だと思います。