倉科 直文 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
小さい頃から取柄といえば勉強で、東京大学の法学部に進学したのですが、時代の学生運動の風潮に流されたといいますか、当時はまさに学校のあり方、学問のあり方を問いただすといった時代で、伝統的な価値観が崩れた時期でした。
そしてその当時一番かっこいいいとされる仕事が労働組合側に立ち、資本家と戦う労働弁護士であり、法学部生の多くが「労働弁護士を目指す」といっていた時代だったのです。私は特に労働弁護士を目指していたわけではありませんが、このような雰囲気の中で、行政官僚ではなく、司法をやるにしても検事や裁判官ではなく弁護士の道を選択しました。
学生時代
学生時代は3分の1が学生運動の波にのまれ右往左往し、残りの3分の2は勉強といった生活だったと思います。
法学部で法律の講義を聞くようになってからは、朝の8時半から夜中に図書館が閉まるまで法律の勉強に集中する毎日を過ごしていました。
司法試験での苦労・勉強で工夫したこと
受験時代の勉強を苦労だと思ったことはありません。人生の中で勉強すべき時期は必ずあるだろうし、そのための勉強を苦労だと思うべきではないと思っています。
工夫していたことと言えば、まずは教授の講義を聞いて教科書と判例を読むことに集中するということです。
そして法律を自分なりに体系的に認識できるようにすることです。個別法も一つ一つ別々ではなく枝分かれしているだけで元は一緒なわけですから、体系的に、総合的に見ることが結局のところ役に立ちました。
司法試験の知識で実務に役立つこと
すべてが役に立つものだと考えます。
司法修習時代の経験や思い出
今とは異なり2年修習時代でしたから今の若い人にとっては参考にならないかもしれませんが、当時の司法研修所での修習は8か月あり、実務修習は1年4か月ありました。司法研修所は10時から15時までだったので時間的には余裕があり、とっぷりやれる時代でした。
修習生同士も同じ釜の飯を食う仲間といった感じで色々話し合い、例えば司法修習生が取調べをしていいのかという「取調べ修習問題」や、裁判官を志願しても思想信条的な理由で任命を拒否されることがあるのではないかという「任官拒否問題」について議論を尽くしました。
その議論を通じて自分の法曹としての生き方を真剣に考えられた時期でもありました。
弁護士になりたての頃に苦労したこと
本当にやらなければならない時は徹夜で仕事をしましたし、夜中に電車とバスを使って遠隔地の交渉相手を訪ねたこともあります。
刑事事件の弁護でも足を使って色々なことを調べる必要がありますが、それを苦労だとは思いません。それを苦労だと思うか、当たり前のこととしてとらえるかは受け取る側のとらえ方だと思います。
依頼者に対して気を付けていること
人によって違うとは思いますが、若い人の中に「先生」とか呼ばれて特に弁護士であるから「偉い」ように感じている人もいるのではないかと思います。
ですが、弁護士は法的な問題についてアドバイスしたり、紛争処理に助力できるというだけで、弁護士が特に偉いということではないのですから、依頼者のお話を謙虚に聞くことを心がけています。
休日の過ごし方
若い頃は元気もあるし色々と遊びましたが、今は基本的に休日の半分くらいは仕事に関することをしています。依頼事件に関することもあれば、原稿を書いたり大学院の講義の準備をしたりと、やることはいくらでもあります。
介護施設にいる親の様子を定期的に見に行って一緒に時間を過ごしてきます。あとは本を読んだり、報道特集などを通してテレビから色々な情報を得るようにしています。
関心のある分野
一貫して関心のある分野は刑事の分野です。事務所も伝統的に刑事事件を重視していますし、この分野の論文も書いています。また大学院でも教えています。刑事事件は弁護士業務の基本だと考えています。経済社会のニュースは、会社法などで仕事にかかわることが多く、日頃から経済新聞を読み調べることを続けています。
また、最近関心のある分野として老人介護や死ぬまでのケア、死後のケアについても関心があります。この分野において弁護士としてもっと法的な部分で関わりを持てないかと思っています。 そして今後のアジア地域の法の発展や整備などにも弁護士が貢献できることがあればと思います。
弁護士に最も求められると思う力
基本的には「法的考え方」の前提となる法律知識です。なくてはどうにもなりません。かつては人口が一番多い団塊世代が受験しても年に500名ほどしか司法試験を通りませんでしたので、受かった人間は皆明日にでも裁判官になれるといったレベルとは言いすぎですが、少なくとも法律上の知識については特に問題はなかったと思います。
しかし、今は若年人口が減っている中で合格者は逆に大幅に増えていますし、法科大学院修了者であっても「本当に知識が備わっているのだろうか」と感じることも少なくありません。若い人にはまずは法律的な知識を詰め込んでほしいと思います。
経済学や心理学、物理や数学などの一定水準の教養も求められます。人の行動や人間関係に対する想像力も必要であり、人としての謙虚さも必要です。そして何より自律の精神。「他人が見ているから、ばれては困るから(やらない)」といった行動基準ではなく、他人に見られていなくとも、知られていなくとも、やるべきことはやり、やってはいけないことはやらないという精神を持っているから法曹であり、弁護士なのです。
そしてどの職業にも言えることですが、一所懸命に取り組んでほしいということです。
ページを見ている方へのメッセージ
法律の世界にも様々な分野があり、弁護士によって扱う分野が違うように思われるかもしれませんが、例えば「この弁護士は企業側の人だ」「この弁護士は左翼の人だ」などと頭から決めつけないでほしいです。
弁護士は受けた依頼に対しベストを尽くしているにすぎません。本当に優れた弁護士ならどのような立場にたってもベストを尽くせるはずです。弁護士と実際に会い話をしてみれば、その弁護士が真面目に仕事をしているかどうかがわかるはずです。実際に会って見極めてみてください。
弁護士の報酬や経費の問題については曖昧にせず、率直に話し合えば弁護士と不安なく接することができると思いますし、弁護士との関係は委任関係ですので依頼した後に仕事ぶりに納得がいかない場合には、委任を打ち切ることもできます。