鮫島 正洋 弁護士 インタビュ
弁護士を目指したきっかけ
もともと私は、弁理士でした。弁理士の仕事というのは、企業の現場において発明を発掘して特許権を取得するという仕事がメインになります。
しかし、そうして取得した特許権を企業経営に生かし、ひいては企業の競争力を上げる仕事というのは、弁理士の業務だけではカバーしきれません。このようなことを行うためには、先ず契約関係、つまり民法の知識が必要になりますし、当然特許や技術、そして、経営の知識も必要となり、オールラウンドな力が必要になるからです。
このような力を身につけたいと強く思い、弁護士を志しました。
仕事の中で嬉しかったこと
お客様から喜んでいただける仕事なので、常に嬉しいですね。
特許を持っている企業でも、実際のところそれをどうやって経営に生かしていくのかという問題は、そのためのノウハウやセオリが不十分な状況もあり、企業経営者の方々はご苦労なさっています。
そういった経営者の方々にアドバイスをすることで、喜んで頂けますし、それが最終的には企業の競争力の向上に繋がるわけですから、私自身も嬉しく思います。
私共の仕事は、技術法務、コンサルティング法務と呼ばれていますが、この仕事の醍醐味は「経営者の方に気づきを与える」ことができることだと思います。多くの特許弁護士と呼ばれる方々は訴訟弁護士ですが、訴訟というのは「勝つ」か「負ける」かの二つに一つであり、オールオアナッシングが基本です。もし負けてしまえば、お客様に満足してもらうことはできないのです。
そういった意味でも、お客様の力に確実になれるこの仕事はやりがいがありますし、嬉しさも感じられます。
弁護士として大切だと感じること
弁護士業の本質というのは「ヒアリング能力」だと思います。お客様が何を求めていらっしゃるのか?何の目的でいらっしゃったのか?ということを把握する能力です。
1時間という短い枠の中で、お客様との信頼関係を築き、問題の状況を把握して、論点を抽出するということが求められるわけですから、そのためには、お客様のお話をきちんと「聞く」だけに留まらず、お客様のお気持ちを引き出す人間力が必須となります。
弁護士業界は、法律能力が一定以上ある人間のみが入れる業界です。そこで、差別化を図るためには法律能力だけでは不十分であり、コミュニケーション能力、コンサルティング能力、それらをこなすスキルが大切になるかと思います。社会のニーズを的確に把握し、溢れかえる情報を統合する力も弁護士にとって大切なことでしょう。
弁護士としての信条・ポリシー
私共の仕事というのはコンサルティングに近いものですが、それでも社会正義を実現したいとも考えております。
社会正義と言いますと、一見、人権派の弁護士だけがクローズアップされがちですが、私のような企業派の弁護士であっても、自分が蓄積した知識やノウハウを社会に還元することで、社会のお役に立てると思っております。そのため、数多くの政府関連委員会にも参画させていただいておりますが、こういうことが、ひいては事務所の発展に繋がるとも思っています。
また、ポリシーとしましては「牛後(ぎゅうご)となるなかれ」ということですかね。 当事務所では、弁理士出身の弁護士、技術職経験を有する弁護士を採用し、技術法務、コンサルティング法務を行っておりますが、このような採用方針を貫いている法律事務所は弊所だけです。現代の社会のニーズにもマッチしておりますし、年功序列色が強い特許訴訟専門家になるよりも、私自身の性に合っています。
今後の弁護士業界の動向
一言で言ってしまえば、政策ミスと言って過言ではないでしょう。
アメリカと比較して日本は人口当たりの弁護士数が少ないと言われますが、本当にそうなのでしょうか?
確かに、数字だけ見ればその通りでしょう。しかし、アメリカは社会全体として多くの弁護士が生きていける風土・システムが定着しています。アメリカという国は、事件が起きたら何でも訴訟で解決しようという土壌のもと、膨大な費用が弁護士に流れる仕組みとなっています。
それでも訴訟費用を払って、訴訟で解決しようとするシステムが構築されているのがアメリカなのです。多くの弁護士を養っていける環境があるのだから、人口あたりの弁護士数が多いのは当たり前です。
沿革的に観て、日本人は訴訟意識が低く、問題が発生しても、裁判によって勝ち負けをつけるのではなく、多少曖昧な解決になったとしても、お互いに譲り合って一緒にやっていくという気質が見受けられます。それが、日本の競争力にも繋がっていると思いますし、そもそも文化が違うのですから、アメリカと人口あたりの弁護士数を揃える必要があるのかどうかは甚だ疑問であります。
このような誤った前提で始められた新司法試験制度は成功していないというレベルではなく、崩壊に近い状態なのではないでしょうか。ロースクール卒業生の4割もが就職できないというのは、危機的な状況です。一般の新卒大学生の4割が就職できないとなったら社会問題でしょう。早急に改善する必要があると思います。
ロースクール制度の当初のコンセプトが悪いとは思いませんが、社会のニーズが追いつかないのに無闇に弁護士を増員しても無益ですし、社会が混乱するだけです。その被害者は政策を盲進してこの業界に入ってきてしまった多くの有為な若者たちというのであっては、決してならないと思います。
社会人経験者というキャリアを持つ人もずいぶんと職にあぶれています。そういった現状を捉え、当事務所では、なるべく多くの社会人経験者弁護士を採用していこうとしております。それが私共にできるせめてもの心尽くしだと思っております。
今後のビジョン
技術系の企業様のお力になり、ひいては日本社会全体の競争力向上を目指しています。
ページを見ている方へのメッセージ
私の好きな言葉で「マーケットは常に歪んでいる」という言葉があります。
これは、世の中のニーズは日々変化しているため、そのニーズを既存のサービスがカバーしきれている瞬間は存在しないということです。それを「歪み」と表現するかどうかはともかくとして、世の中は常にサービス供給に対してマーケットニーズが上回っているのです。
この言葉はリーガルマーケットにも当てはまるはずです。したがって、社会のマーケットニーズを見ていける資質を持ち、パイオニア精神を持った人が成功すると思うので、これから法曹を目指される方はその心を忘れないように。
(2010年9月インタビュー実施)