
内田 哲也
八丁堀法律事務所
東京都 中央区日本橋茅場町1-2-14 日本ビルディング3号館4階インタビュー
内田 哲也 弁護士 インタビュー

弁護士を目指したきっかけ
私は山梨県甲府市の出身で、父親が地元ではそこそこの建築会社を経営していました。私は長男でしたので、幼いころから将来は家業を継げと言われており、建築士の資格を取るため、大学の建築学科等に行くものだと思っていました。
しかし、東京オリンピックによる好景気が去った影響で父の会社が倒産してしまい、家業を継ぐという選択肢はなくなりました。もともと建築学科には行きたくないと思っていたので、ある意味よかったのですが。
それで、将来何になろうかとあらためて考えましたが、倒産などしたところの息子は会社にも入れてもらえないだろうし、まともな就職ができないなら、何か資格を取って自分で仕事をするのが良いかなと考えました。
また、母親の兄が優秀な人で弁護士になりたいと言っていたのですが、家が貧しく、その夢を叶える事ができないまま戦争中にウクライナで亡くなりました。母親がその話をよくしていたのが頭に浮かびました。
そういった事情があったことと、普通に食べていける資格というと弁護士か公認会計士だと思いました。私は数字が苦手だったので弁護士であれば数字は必要ないだろうと思い、弁護 士を目指すことにしました。しかし実際弁護士になると結構数字を扱うんですが・・・。
実務修習地は甲府を第一志望にしました。家業の倒産後ひっそりと暮らしていた親に少しでも親孝行ができたらという思いがありました。当時は司法試験に合格すると新聞に名前が載りました。そうすれば近所でも「あそこの家の息子が弁護士になる」と評判になります。特に私が合格した年は山梨県に関係した合格者は3人しかいなかったので、息子が弁護士になってよかったと思わせてあげたい、親孝行をしたいとの思いが強かったのです。
印象に残っている案件(事件)
私の事務所は労働事件、それも使用者側に立つことが多いのですが、平成2年に弁護士になった当時はバブルが崩壊する前でしたから景気がよく、労働事件の人気がなかったので仕事はほとんどありませんでした。そこで最初にやらされたのが一般の民事事件で、中年女性の事件を扱うことになりました。
初めて会ったときにいきなり「弁護士になって何年だい?」と聞かれ、「まだ1年目です」と私が答えると、「あぁ、まだ尻が青いね」と言われました。これには本当にびっくりしました。しかし、色々言われながらもめげずに一生懸命仕事をしていると、その方からも感謝され仲良くなりました。
その後、その女性に海外旅行のお土産にブランド物のポシェットを差し上げたところ、大変喜んでいただきました。しばらくして、事務所に来た女性が持ってきたポシェットの表面に「これは内田先生から貰った」と黒のマジックで書いてあって度肝を抜かれました。
いろいろあって苦労はしましたが、お互いに信頼関係が築けたというか、何か心が通じ合えた感じがしました。弁護士になりたてで、またある程度満足がいく結果が得られたということもあり、強く印象に残っています。
もう1つは、初めて扱った労働事件です。新幹線で通えるところに顧問会社の事業所があり、ほぼ毎日新幹線で現地に行き、その日の終電で帰ってくるという生活を1ヶ月ほどしていたので、会社の担当者の方ともすごく仲良くなりました。
結局、私にとって印象に残っている案件というのは、事件の内容というよりは、依頼者と事件を通して接していく中で、弁護士と依頼者という壁が取っ払われ、信頼関係ができてうまくいったというものです。そういう意味でも弁護士という仕事はやりがいがあると思います。
仕事の中で嬉しかったこと
一生懸命に仕事をして、依頼者の方々と信頼関係を築いていくと、その方々が知り合いの方を紹介して下さったり、口コミで評判が広がって仕事がくることが多くなります。それは自分の仕事ぶりが評価されたということですし、そうやって仕事がたくさんくるというのは嬉しいことです。
弁護士としての信条・ポリシー
特に3つを心がけています。1つは依頼者の話をよく聞いてあげること。2つ目は、アドバイスするときはできるだけ複数の答えを用意するということ。1つの答えしか用意していないと、一般の方は弁護士にそう言われたからと疑うことなしに従ってしまいかねません。複数の答えを提示して、依頼者によく考えて戴くことが大事だと思います。
3つ目は、明朗会計です。弁護士報酬は、企業ならばそれなりの金額でも普通に払っていただけますが、一般の方ですと、10万円、20万円を簡単に払える方は多くないと思います。日本人は商品を買うときは値段を気にしてチェックするのに、弁護士費用のことは聞かない方が多いのです。そして最後になって報酬額を聞いてびっくりする方もいる。
皆さんには、弁護士に頼むとしたらまず費用のことを尋ねるようにと言いたいですね。金額を聞いてみて、もし高いと思うなら他の弁護士に相談に行けばいいと思います。
他には、会社から顧問弁護士になってほしいと頼まれる際は、いきなり顧問になるのではなく、その会社の案件を処理してみて、会社からの評価と私の会社に対する印象をもとに顧問弁護士になるようにしています。
あとは依頼者にキチンと報告をするということも心がけています。電話や口頭ではなく、すべて書面にして報告するようにしています。
弁護士になって大変だと感じること
サラリーマンの方も同じだと思いますが、自らの健康管理は大変です。
講演などを頼まれた場合、自分が全てやらなくてはいけないので、もし自分が体調を崩してしまったときに代わりにやってもらう人がいない。会社だと部下に代わりに頼むこともできますが、弁護士の場合はそういうわけにはいかないので、健康管理をしっかりすることが大切です。
あとは、自分の感情を抑えないといけない場面も出てくるので、気が短い自分としては大変です。
休日の過ごし方
子供が小さい頃は子供が遊んでくれましたが、最近は子供も大きくなって、なかなか遊んでもらえません。ですので、だいたい家で本を読んだり、割と家事が好きなので家事もやります。家事の中でも特に食器洗いと洗濯とアイロンがけが好きで、それらをやると気分がすっきりします。
あと、ゴミ捨ても好きです。これも気分がすっとするので。事務所のゴミ捨ても私がやることが多いと思います。
関心のある分野
労働法の分野です。
今後の弁護士業界の動向
当たり前のことですが、自然淘汰により、良い弁護士が残っていくと思います。良い弁護士とは、必ずしも大手の事務所に属する弁護士というわけではないと思います。
大手の事務所を志望している人が多いという実感はありますが、大手の事務所では、1人1人の弁護士は歯車の1つで大きな事件の一部しか扱わせてもらえないことが多い。個人事務所でもキチンとしたところに入れば、事件の全体像が見えるような仕事を任せてもらえるし、力もついてやっていて面白いと思います。
真面目に仕事をやっていればある程度生活はしていけると思いますが、やはり生き残りが大変になっていくのではないでしょうか。
これから弁護士もますます人間力が大事になっていくと思います。弁護士の仕事は、法律に関する話が1、2割で、あとは人間力だと思います。司法試験に受かったあとは人間力の勝負だと思います。
今後のビジョン
事務所の弁護士があまり多すぎると、お互いのコミュニケーションもとれません。かといって、あまり少ないと顧客を満足させられるサービスができないと思います。個人的には、弁護士が5人くらいの事務所にしたいなと考えています。それを実現させたいと思います。
また、自分の考え方等を受け継いでくれる後継者を作り、そして良い事務所になって残っていくことができれば嬉しいと思います。
ページを見ている方へのメッセージ
弁護士の仕事も医者と一緒で早期発見が大事です。何かあった時にはすぐに弁護士に相談に行った方がうまく解決するし、費用も安く済みます。そこで躊躇していると、問題がこじれて解決までの時間もかかり、また費用も高くなってしまいます。
費用の交渉も、これだけしか払えるお金がありませんと率直に伝えたほうが良いと思います。もし、そういった相談をいい加減に扱うような弁護士であれば相談しないほうが良いと思います。そのような場合にはその日の料金だけ払って終わりにして、他の弁護士のところへ相談に行くことも考えるべきです。
自己紹介
- 所属弁護士会
- 第一東京弁護士会
- 弁護士登録年
- 1990年
所属事務所情報
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- 所属事務所
- 八丁堀法律事務所
- 所在地
- 〒103-0025
東京都 中央区日本橋茅場町1-2-14 日本ビルディング3号館4階 - 最寄り駅
- 茅場町駅
電話で問い合わせ
03-5695-8488
※お問い合わせの際は「弁護士ドットコムを見た」とお伝えいただければ幸いです。